HMRというのは、家庭料理をそのまま販売する新しい業態になる。それならば惣菜ではないか、と言うかも知れないが、違う

2013/05/25 16:13 に 松本リサ が投稿
この2〜3年の間に、HMR、あるいは「ミールソリューション」と言うのが米国で急速に発達してきており、それが日本に雪崩のように入り込んできている。HMRというのは、家庭料理をそのまま販売する新しい業態になる。それならば惣菜ではないか、と言うかも知れないが、違う。

HMRはスーパーマーケットの惣菜の高品質化や、拡大とは違う。外食レストランレベルの調理技術を使ったメニューを、小売りする店である。その店では、調理に使っている食材も売る。であるから、スーパーマーケットで生鮮3品を販売していて、その食材を使って惣菜を作るのではなく、考え方はその反対である。レストランで使っている食材を、そのレストランで売る、と言うことになる。もっとはっきり言うと、料理が、レストランレベル、高品質なのである。多くのスーパーマーケットが業務用の食材を仕入れて、それを加熱しただけのものを売っているが、そういったレベルではない。そういったことで、HMRは、惣菜の高品質化、拡大化、ではない。レストランレベルの調理技術を持っているところが、その「料理」を小売りするのである。そして、これを担当するシェフ達が使っている食材、肉、魚、青果、そして調味料も一緒に販売をするのである。

ホテルの立食パーティーを想像してもらいたい。美味しいメニューがたくさんあり、シェフがローストビーフなどのサービスをしている。そして、料理が並んでいるテーブルのすぐ後ろで、シェフが忙しく調理をしている。そして、シェフが作っているのを良く見てみると、お客様がとっていった料理を補充している。少し時間が経ったら、口直しにソバを食べたい人のために、わんこ蕎麦を作り、出し始める。更に、もう少し時間が経つと、女性のお客様に担当のシェフが、どんどんデザートを出し始める。

これがHMRのイメージである。これを店にすると、朝、昼、夕方、夜と、販売している料理が次々と違っていく。売れ行きが早い料理は、シェフがそのすぐ後ろで作って補充していく。ランチメニュー向けのピークが終わりかけると、大体の料理がなくなり、夕方に向かっての準備をし始める。この間、お客様から要望があれば、どんな料理でも作る。店の一画には、料理に使っている食材が販売されている。シェフは時々そこに行き、足りない食材を持ってきている。ワインなどのアルコール類も販売している。これがHMRの形である。

ということで、HMRは、レストランのメニューを、小売りするわけだ。ついでに、使っている食材も売る。使っている食材は、シェフが使いたいものを揃えているので、すべて高品質で、価格も手ごろのものがそろっていることになる。

HMRに進出するには、ホテル、レストランレベルの料理技術と人、そして、小売りの技術が必要である。

HMRは


1.レストランレベルの調理技術

買ってきた食材を加熱する程度ではダメ。実際米国で惣菜に対する不満は、「そんなに美味しくないけど、忙しいから、仕方無く買う」と言うものである。自分でつくるのは面倒臭い、ということももちろんある。こんな潜在的意識のある状態のままの惣菜に一石投じて、本当に美味しいものを得るというレベルにするためにはどうしたらいいか、の発想からスタートをした。そして、おいしい料理は、美味しいシェフ、という原点に達したのである。

2.使っている食材も販売する

シェフが使っている食材をそのまま売れば、顧客も喜ぶ、シェフが認めたものならばいいに決まっているから。これはロスが出ないことにもつながる。生鮮食材を、販売しながら、料理に使っていれば、ロスは生鮮材料では出なくなる。

3.朝、昼、夜、の、3毛作

米国のストアでは、24時間営業が多い。ブルーカラーの勤務時間を考えると、24時間は当たり前になっている。コンビニエンスストアと同じ営業時間になる。朝食メニューも実際に人気がある。

4.立食パーティーでの補充のように、売れたものを調理補充する

これが出来るから、調理した商品(料理)にもロスが無くなる。売れているメニューはどんどん補充すれば、いつでも作り立てを販売できるから、更に売れることになる。売れない料理が出て来たとしたら、その料理はもう出さないから、ほんの一時的なロスだけで済んでしまう。更に、料理の2次加工も出来る。ローストビーフで販売しながら、ローストビーフサンドイッチでも売れるのだから。それも、最初からサンドイッチを作っておかないで、サブウエイのように注文をもらってから組み立てれば、全くロス無く、作り立てが売れる。

5.ホームユース、ビジネスマン向け、パーティー向け、全てに対応する

ストア立地にもよるが、ビジネスマン、ブルーカラー、家庭、どの顧客層にも対応できる。パーティー向けデリバリーも大きな売り上げを上げられる。

6.オープンキッチン

顧客の目の前で料理しているから、美味しいし、出来立てだし、美味しく見える。補充も適格に、機会ロス無く出来る。

7.アルコールも売る

日本でもアルコール類は自由に売れるようになってきた。アルコール類が売れると、おつまみ、アペタイトが売れる。全体の売り上げを大きく上げることが出来る。

8.イートインもある

それほど大きなスペースではないが、置くべきだろう。日本のコンビニエンスストアの店の外で学生がしゃがみながらラーメンなどを食べているのは寂しいものだし、ゴミの問題もある。

9.ベーカリーも活発に売る

米国のあるストアでは、ベーカリーの売り上げ比率は20%程度だという。日本ではご飯を売るべきである。日本のコンビニエンスストアの弁当惣菜で最も売れるのは「白飯」である。

10.80〜90%の顧客は、テイクアウト

これだけテイクアウトしてもらえれば、日本の場合店舗コストはかなり楽になる。


一言で表現すると、立食パーティー式で、しかもオープンキッチンでシェフが調理している料理を売り、その素材も売り、ベーカリーとアルコールも売っている店、になる。

惣菜の競争は、量販店、食品スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ファーストフード間で激しくなっている。そこで今度は反対から考えて行かなければならない。小売りからスタートした惣菜の強化ではなく、シェフの作った[料理](惣菜、商品、と言う呼び方ではなく)を、小売りすることである。そして、料理に使っている素材も売る。


総合食品「フードライフ」97/9月号より
Comments