H = HACCP

2013/05/24 1:50 に 松本リサ が投稿
HACCPは、2つのもので構成されている。HAは、ハザード・アナリシスで、「危害分析」。CCPは、クリティカル・コントロール・ポイントで、「重要管理点」。まず、どのような食品の危害があるかを分析する。そして、その危害を防止するために、重要なチェックポイントを決めて、徹底的にそのポイントを管理し、食品の危害が出ないようするシステムである。

最初にどのような危害があるかを分析


HACCPが従来の食品の製造と根本的に違うのは、最初にどのような危害があるかを分析することである。食品には、食中毒や異物混入を始めとする危害があるが、従来の方法だと、食品を製造し終わってから、その食品に食中毒菌が入っていないかどうか、最終的に出来た製品を検査していた。検査する製品は製品のなかからほんの少しのサンプルを取りだして行われるので、サンプル以外はどうなっているか、本当のところはわからない。ただ、統計的にいって、一つのロットはほとんど同じのはずだから、各ロットから一つのサンプルを検査すればいいとされていた。

これに対してHACCPは、最初から「今作っている食品には、どのような危害の可能性があるか」をまず分析するところから始まる。製造する食品によって危害の可能性は違ってくる。漬物とレトルト食品では、全く性格が違う。生のソーセージと、加熱ソーセージでは、生ではバクテリアが死滅していないが、加熱では一応死滅するまで温度を上げることになっている点が全く違う。更に、同じソーセージでも、添加物が入っている場合と無添加では違ってくる。したがって予測される危害は製造するアイテムごとに違ってくるので、食品製造におけるHACCPではアイテムごとに管理が違うことになる。


次に、重要なチェックポイントを決める


さて、危害を分析した後、「重要管理点」を決めることになる。重要管理点というのは、製造する食品の危害を、どうしたら防ぐことが出来るか、その最も重要なポイントを決めることである。

食品を安全に製造するためには、作業者の衛生の問題、工場に入る前の手洗いなどのポイント、作業場のあらゆる機器の衛生、消毒、空調の管理、備品やパッケージ資材の衛生管理、調理の温度管理、保管の温度管理・衛生管理、などなど、気の遠くなる項目がある。

これらを躍起になって全てを徹底的にマニュアルを作り、誰が責任者かを決めて、記録まで取っていくとなると、実際に作業が進まないし、とんでもないコストアップになってしまう。

そこでHACCPでは、最も重要な点をいくつか決めて、そこを重点的に管理をするのである。HACCPの重要管理点は一般的に5つ程度までとされている。


では、重要管理点以外のものはどうするかであるが、これは「一般的衛生管理」で管理をする。この中に、従業員の手の洗い方から始まり、作業場や機器の清掃など、あらゆる基本的な衛生の基本があり、これをマニュアルで管理をしたり、教育で徹底するなどしている。したがって、基本的なものは「一般的衛生管理」になっていて、これがしっかりとしていれば、ある程度安全に危害がかなり少ない食品を製造出来るようにはなっている。HACCPは、この衛生規範を土台として、更に食品の安全性を高めるために、重要管理点を定めるのである。

HACCPを導入していくと、重要管理点が増えていく傾向がある、より安全に、確実に製造をしようとすると、どうしてもそうなってしまうのである。しかし重要管理点が多すぎると「重要」ではなくなってしまう、煩雑になってしまうからである。しかし、この対策は、進め方によって、よい方向になっていく。例えばそれまで5つあった重要管理点がどうしても7つになってしまう、となったら、そのうちの2つを「一般的衛生管理」にしてしまうのである。こうすると、工場全体に新しく衛生規範が出て来て、全体が良くなっていく。実際にHACCPを導入して何年かしていくとこうなっていき、そして「最も重要なのは、一般的衛生管理だ」とわかるのである。


一つの管理点をクリアしないとその次に行けない


重要管理点は、製品の製造過程ごとに決めてあり、一つの管理点をクリアしないとその次に行けないようになっている。例えばソーセージを作る管理点で、最初の管理点が原料肉をグラインド(ミンチ)にした後の温度が、0〜3℃になっていたとすると、もし温度が4℃になっていたら、そこで作業がストップをする。もちろんこの温度を誰が測定するかは、マニュアルで決められている。そしてそれを発見した作業員は、4℃になっていることを誰に報告するのかも決められている、工場長に報告するなり、社長に報告する場合もあるだろう。その報告で、ではどうするかが決定されることになる。

この例の場合では、温度が高くなってしまったミンチはもう冷却しても品質は元には戻らないので、廃棄するか、別の製品に転化するしかない。そして、温度が1度高くなってしまった原因が原料肉の保管にあるのか、グラインダーの刃が切れなくなっているなど、機器の不備にあるのかなどの原因が特定されるまで、作業は先に進まない。関所のようなものである。


記録


日報などへの記録は、決められたポイントで、決められた作業員が、1時間毎とか、1ロットごとなどと決められた頻度で必ず記入される。間違いが無ければそれが温度や重量など具体的な数字で記入されるし、間違いが出た場合には作業がストップされて、原因追及まで記録され、原因がわかってから作業が進められることになったら、それも記録される。したがってこの例の場合は、最初のポイントで安全な状態になっていないと、先に進まないので、安全率が100%に近いことになる。

ソーセージの例で、ミンチ後の温度が大丈夫で、つぎの作業に進み、2番目の重要管理点が、カッティングの温度だとする。ソーセージのカッティングというのは、高速のカッターで、赤身肉、脂肪、水(氷)の3つのものを、エマルジョンといって、立体的にくっつけることである。このときに野菜などの副材料や、調味料、香辛料が加えられる。このときの温度は普通10℃程度がいいとされているが、もし決められた温度範囲になっていない場合は、同じように作業がストップされることになる。このようにして、最終的にパッケージングまで5つ程度の重要管理点という関所を通過して初めて製品が出来ることになる。したがって、完成した製品は全く完全とはいえないが、かなり安全な製品になっていることになる。

HACCPを車の運転にたとえると、決められた道を走るときに、それまではただ惰性で経験的にいつもの道を走っていたのが、導入されると、危険な交差点を通過するときに、助手が信号や、曲がる方向にバイクや人がいないかどうか、指さし確認をすることになる。最終目的地に着くまで、人が良く飛び出すところとか、合流点など、特に危ないと運行管理者が定めた約5つの場所を指さし確認と、運転手の目の、ダブル確認で通過していくことになる。その他の場所は、常識的な「運転規範」で安全に走ることになる。そして、各ポイントを通過するごとに、助手が記録するのである。


鶏肉の生産ではどうなるのか


HACCPは食品加工工場での衛生管理からスタートをしてきたのだが、生産工場でいくら衛生管理をしても、その原材料が汚染されていたり安全性に問題があると、いくら加工工場でHACCPを行なっても限界がある。そこで生産段階でのHACCPが必要になってきた。養鶏においては、健康で汚染されていない鶏の確保、細菌汚染されない生産場所の確保と維持、鶏舎のサニテーション、作業者の個人衛生といった対策を行なうことになる。鶏肉の場合、と鳥加工工場におけるHACCPは進んできているが、生産現場でのHACCPはまだこれからのところが多い。HACCPを行なうことでどんなメリットがあるかというと、安全な鶏を生産できるという「信用」になり、これがセールスポイントになる。加工工場にとっては出来るだけ安全な鶏を確保したいわけであるから、HACCPを行なっている生産基地から買えるに越したことはない。さらに先に進んで行くとこれが取引基準になっていくのである。

「鶏卵肉情報」2000/10より
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