和牛の脂肪とモミジのスープタイトル

2013/05/23 18:26 に 松本リサ が投稿
クジラの肉が安く、いくらでも食べていたころ、食肉のセミナーの最中に、ある実験というかいたずらというか、試食会を開いた。

鯨カツなどに使う安い赤身肉を1センチ程度の厚さにカットし、和牛の脂肪をたっぷり使ってステーキにした料理を、数十人の研修者に食べさせて、質問した。

「この料理は何か?」

多くの答えは「牛の肩肉」「牛肉のモモ」だった。

クジラとわかったのは一人も居なかった。

脂が如何に、味、おいしさに重要なのか、決定させるものなのかが良くわかる。

 

ある、非常に良質の和牛を飼育し、いったん屠畜場に出してから全て買い戻し、切り身やスライスまで自社のセンターで加工、パッケージまでして出荷している、畜産会社で、この牛肉の脂肪を出荷しようという構想が出てきた。

屠畜された牛は、枝肉の形で戻ってくる。これを部位別にカット分割するときに、かなりの脂肪が出る。

ケンネンという脂肪は腎臓をカバーしているので臭いがあるという人がいるが、表面の皮を取ったら、中の大きな脂肪は素晴らしいもので、色は真っ白。ステーキハウスでステーキを焼くときにサイコロ状にカットした脂肪を最初に鉄板に乗せるが、これに良く使われる。

アダー、コッドと呼ばれる腰の裏側にある脂肪は、昔はアンパンなどの照りを出すために使われていた高級なものだ。押すとポロポロと崩れ、加熱するとすぐに溶ける。

部位別にされた肉は、部位ごとに商品化される。

サーロインはステーキやすき焼きなどに、バラや肩は焼き肉用の切り身、といった製品になるが、この時に、背脂肪などがトリミングされる。この脂肪がまたおいしいのだ。

普通この脂肪は、単なる脂肪として、脂屋さんに引き取ってもらっているのだが、ハンバーグに入れる、揚物の油に料理によって入れる、焼き物や炒め物の脂に使う、ラーメン、煮物・・・と、味がいいだけに、多くの料理に使えるし、味のグレードが上がる。

ハンバーグの脂肪率は、ある調査で、脂肪が19から22%あるとおいしい、という結果。

トリミングされた脂肪そのままの場合、表面を除去して中の本当に白い部分だけにした場合、部位別に分けた場合、パッケージの単位と方法などによって、価格はいろいろになるだろうが、和牛の脂肪をそのまま捨てる同然の処理をしているところも結構あるのではないだろうか。

 

鶏肉の場合、皮は焼き鳥などの加工やフードサービスに出すが、ほとんど活用されていないのがモミジ(足先)ではないだろうか。

ある高品質の鶏肉を生産からパッケージまでしているところでは、モミジだけは国内に出荷できないので、香港に輸出しているという。では香港ではどうしているかというと、これは中華料理では御馳走で、スープや煮込み料理に多いに珍重されているのだ。米国では高級なスーパーにこのモミジが置いてある。

 

著者はこのモミジを送ってもらって調理をしてみた。

ある日、宅配便が来て、家人が受け取ったあと「きゃーーー」という叫び声がしたので、モミジが着いたことがわかった。

少しでいいって言ったのに2キロぐらいのでかい箱が着いてしまった。

早速、鍋に水を入れ、モミジをガサガサと投入し、塩を加え、冷蔵庫の野菜室に首を突っ込み、玉葱のはじっこ、セロリの葉っぱ、ニンジンのヘタ、生姜のかけらなどのクズ野菜を、冷蔵庫の掃除がわりに取り出して鍋に放り込み、ゆっくりと煮始めた。

アクを取り出しながら、2時間ほど煮たら、濃厚なスープが出てきた。

 

スープをそろっと味わってみると、クズ野菜を入れて、アクを取っているので、実にさわやかな風味のスープに仕上がっているではないか。

冷たいビールをぐーーーとやりながら、今度はトロトロになって関節が外れそうになったモミジ本体を取り出して、口の中に放り込んでぬるりと崩したら、肉ではなくとろりとしたゼラチンが骨から外れた。実においしい。

さらに舐めていると、小さなモミジの間接が外れて、そのジョイント部分のほんの小さな軟骨をかじると、ポリポリと適度な歯ごたえがあって、これも珍味珍味。

2個目のモミジになったら、ビールをワインに変える。

数個のモミジを、無言でモゴモゴと、目だけはおいしいので嬉しそうに、ワインを飲みながら食べている姿は、はた目には異様だったろう。

 

スープは全部飲まないで半分ほど残す。これを丼に入れてあら熱を取ってから冷蔵庫に入れた。

昼寝してから、数時間経った夕方、取り出してみると、表面が白くなっている。脂肪が表面に浮き出ているのだ。

これをスプーンではがしてみると、きれいな半透明の「モミジのゼラチン」がつややかに光っている。皿を取り出し、丼をひっくり返して、すき間にちょっとスプーンを挿し込んだら、ドタッとゼラチンが皿に落ちた。何だかプリンのテレビコマーシャルのようだ。

モミジのプリン型ゼラチンを食卓に持っていって、またビールから始め出した。

モミジの商品開発、考えられませんか?
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