黒豚のマーケティング-2

2013/05/25 16:04 に 松本リサ が投稿
黒豚の開発

東京では、東京ポーク「TOKYO X」が開発された。脂肪の質がいい北京黒豚、肉質のバークシャー、霜降りが特徴のデュロックの交配を重ね、五代目で遺伝が確定した。通常の豚に比べて霜降り度が二倍以上あり、コクのあるのが特徴だという。愛媛では、愛媛、徳島両県とともに飼料麦を開発。その後も独自に改良を重ねた結果、成長促進因子と高タンパク質を持つ高栄養麦『サンシュウ』を生み出した。飼料にこの麦を約15%交ぜれば、『安全でおいしい肉』をつくれるという。鹿児島では、JA鹿児島県経済連が、豚にお茶を食べさせ、肉質や味を向上させる試験に成功、試験販売に乗り出している。名付けて「茶美豚」(チャーミートン)。普通に飼った豚に比べて、ビタミンEやうま味成分のイノシン酸が飛躍的に多く、経済連は「うまさとヘルシー」を売り物に、黒豚と並ぶ県産豚の銘柄として育てていくという。宮城では、大崎平野の養豚農家七人が「仙台黒豚会」を結成。国産飼料100%の飼育に挑んでいる。輸入飼料に頼らず、個性化商品で再生産価格を確保しようとメンバーは転作田に麦や大豆を作付けしたほか、地域の農家約三十戸から規格外を譲り受けるなどの応援を頼んでいる。品種はバークシャー系を導入した。肉は、JA経済連を通して、有機農産物を扱う宅配グループ「大地の会」へ契約販売している。


ブランドキャンペーン


各地で新しい開発が進んでいるのと同時に、売り込みのためのキャンペーンも活発である。特に老舗の鹿児島は力が入っている。かごしま黒豚のかごしまブランド化について、県は「県を代表する農畜産物の一つ。早期に指定できるように取り組みたい。県黒豚生産者協議会を指定基準の作成や審査を行う団体と位置づけ、ブランド化に向けた具体的な取り組みを進めることとした」といったコンセプトである。

曽於郡末吉町では、第三セクターで運営する農畜産物加工施設「メセナ食彩センター」がある。ここでは同町の特産品であるユズ、ゴボウ、和牛、黒豚を中心にした加工・販売を行い、町内農家の経営安定と所得向上を図るのを目的にしている。鹿児島県霧島町内のホテルや旅館では、霧島郷土料理メニュー「湯の花蒸し」を提供している。これは、「湯の花」といわれる白い温泉副産物が入った温泉のお湯で、霧島特産の黒豚と野菜を蒸し、それをポン酢につけて食べるメニューで、温泉の香りが食をそそるという。姶良郡霧島町永水でへ、生産者、販売店、消費者が地域の特産品について認識を深めようと、黒豚の丸焼きの試食会を行った。炭火で焼いた生後4カ月の黒豚を使った。


アンテナショップ


キャンペーンのなかでも、最も直接的なのは店を消費地や産地の中心に直接持つことである。費用はかかるが、顧客の反応がじかにわかるので、マーケティングとして予算が取れれば効果がある。この形のアンテナショップの一番のしにせは1970年に開店した北海道池田町のワイン・レストラン「十勝」である。新宿の伊勢丹に、小さいながら1階にショップを持ち、結構長い間アンテナショップを続けた。このおかげで十勝ワインが全国に知れ渡った。これの黒豚版が色々と出て来ている。帝国ホテルすぐ近くの「かごしま遊楽館」は、鹿児島県総合基本計画の中で「かごしまハウス」として明記され計画通りオープンした店舗である。1階が物販店、2階がレストランになっており、黒牛など約40メニューがある。黒豚のしゃぶしゃぶ、サツマ芋のシャーベット、アイスクリームが人気メニュー。鹿児島(「遊食菜彩いちにいさん」80席)は、黒豚、黒牛、さつまあげなど、薩摩の時代からある「食」文化を知ってもらうためにオープンした。一日250〜300人が訪れる中、売り上げの6〜7割を占めるのが「かごしま黒豚しゃぶしゃぶ」ということ。鹿児島では香港にもアンテナショップを持っているが、この二号店がオープンした。本店の3倍の客席を持つこと。このアンテナショップは、香港の繁華街・銅鑼湾にあるステーキハウス・千登世。新しい店も本店近くに完成したばかりのオフィスビルのショッピングモール部分につくった。

宮城の本格的なグルメのテーマパーク「仙南シンケンファクトリー」は、仙南地区の7農協で組織する仙南農産加工農業協同組合連合会が1992年ごろ、「生産者と消費者の交流の拠点に」と事業計画の検討を開始。誘客の目玉として、地ビール製造が決まり、地元で栽培された大麦を使うことにした。名称は「仙南クラフトビール」で、その場で飲めるレストランを併設。仙南地方独自の黒豚の肉を利用したソーセージやハム、ベーコンを使った料理も用意している。地ビールと黒豚がジョイントしたわけである。


直販


直販の動きも盛んになっている。熊本県のJA阿蘇小国郷では、黒豚で作った手作りのハムやソーセージを独自に開発、年間5千万円を売り上げる。黒豚本来のうまみをうまく引き出し、ギフト需要を中心に本物の味を求める顧客の支持を得ている。商品は豚、羊の腸に詰めたソーセージ類やロースハム、ボンレスハムなどがあり、ベーコンとウインナソーセージ、ロースハムが売れ筋。

群馬県富岡市では黒豚の手作りハム・ソーセージを直売店で販売し、消費者ニーズをつかむ手づくりハムかぶら加工組合(群馬県富岡市)を運営している。直売店で少量パックの販売に切り替え、評判を集めている。郵便局の「ふるさと小包」でも、全国に販路を広げたり、宅配事業にも参入することで、北海道、沖縄、東京にも固定客がついてきた。県内の2か所の直売店は、消費者ニーズをつかむ情報収集の場になっている。直売を始めたのは、スーパーへの卸価格が厳しかったためだ。黒豚は、抗生物質などは投与しないで、自然に近い状態で飼育している。また、加工品も、保存料や着色料などの添加物は使っていない。

愛知県下山村では、黒豚もつ味噌煮込み「どて」の直販を行っている。これは同県下山村独自の味にこだわった黒豚のもつを使ったみそ煮込み。日本酒でじっくりと煮込んで、岡崎名産の八丁みそでマイルドに仕上げたもの。いつでも温めるだけでこだわりのみそ味の煮込みが食べられる。原材料は豚の内臓にこんにゃく、みそ、砂糖、本みりん、清酒にショウガ、ニンニクを加えたもので、気密性容器に密封し加圧・加熱・殺菌した製品。

宮城 角田市農協では、96年度の朝日農業賞を受賞した。独自に流通ルートを確立し、黒豚やイチゴ、有機低農薬栽培米など、より安全でおいしい産直品を消費者とともに開発してきた「産消提携」の活動理念と実践が高く評価されたもの。産直は70年に豚肉と卵で始まった。現在は、放し飼いで育てた鶏の卵や、省農薬有機栽培で完熟させたイチゴ、転作作物の大豆を利用した納豆など、百品目近い産直品を生協に出荷している。95年度の販売額は約十四億円。産直品の代表選手の一つが「黒豚」で、肉質の良い黒豚と優れた繁殖能力を持つ白豚を交配させ、本来の黒豚と同様の味を持つ産直黒豚を作った。飼料は、薬を使わずに十数種類の原料を自分たちで配合する自家配合飼料を使い、安全性の課題も解決した。

鶏卵肉情報センター「養豚情報」97/12月号より
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