黒豚のマーケティング-1

2013/05/25 16:05 に 松本リサ が投稿
最近の豚肉の流れで目立つのは、黒豚が伸びていることである。ここ十年ほどの豚肉の大きな流れは、先ず、輸入ポークが出てきて、市場に急速に出てきたこと。と同時に、セーフガードによって、相場が大きく混乱をした。ナチュラル、安全性の流れも大きく、SPFポークが驚くほどの勢いで、マーケットに浸透をした。国内の生産の面では、じわじわと生産者が減ってきており、輸入ポークの浸透と、国内産豚肉の品薄感と高品質感が同時に出てきている。大きな事件としては、台湾の口蹄疫だった。輸入ポークにおいては、冷凍、チルドポークだけではなく、加工品、調製品のニーズと開発が高まった。セーフガードの混乱を回避し、価格を有利にするためであるが、ソーセージ、豚カツ、シーズンドポークなど、開発チームも組んで、商品開発が行われている。
このような大きな流れの中で、最近は黒豚が大きくクローズアップされている。黒豚が伸びてきている背景には、高品質があるが、反面、どこまでが黒豚になるのか、問題点が消費者側から出ている。


表示適正化


全国食肉公正取引協議会は十月から食肉小売店を対象に、黒豚の取り扱い状況や産地表示などを調べる。黒豚はバークシャーだが、日本では明確な規定がないために、表示があいまいになっているからだ。反面、100%黒豚だと、規格、品質などの安定性にかける面もあるということと、価格が高くなり過ぎる点もマーケティングでは問題である。血統の点では「ヨークシャー産などの白色豚と交雑させた豚も黒豚として売られている」(同協議会)となるし、量販店での取り扱いが多くなるにしたがって、消費者の疑問も多くなっていくわけだ。


量販店での取組


スーパーマーケットでは、食肉の販売で今までの大きな流れは、牛肉でも豚肉でも輸入品が急速に入ってきたための大きなマーケティングの変化がある。輸入肉が入ってきた当初は、大手スーパーでは価格の訴求で輸入品を強化した。輸入牛肉を強化したり、台湾ポークや米国産のチルドポークが代表である。

輸入品の魅力は低価格と、規格の便利性である。規格は、輸入品は部位別にきれいにまとまっており、トリミングも最終にほとんど近いレベルまでしてあったので、技術力の低下してきていたスーパーにとっては、低価格で売れるという魅力と相まって、輸入品に走ったのである。しかしその弊害はしばらくしたらやって来た。価格競争に陥ったために、収益力が低下してしまったのである。もともと輸入肉は集客の目的が大きかった面があるのだが、それに走っていったら、気が付いたときには、売り上げを上げられ、利益をとれる精肉が無くなっていたのである。


そこでスーパーが取った道は、集客力として輸入肉を使うが、同時に、収益のために、安心感があり、高級感がある国産肉に力を入れるということになった。牛肉では和牛と国産牛肉。国産牛肉も単なるホルス、ボトクよりも、資料や産地、肥育になんらかのこだわりを持ったものの方が、一般的な国産牛肉よりも高く売れるし、訴えに持ちからがこもるので、そちらに走った。そして豚肉は二つのものを追い掛けたのである。SPFポークと、銘柄豚である。SPFは、国産の安心感のあるものと、米国産の価格的に魅力を出せるものに分けられる。価格訴求と安全性で走ったところと、高級かつ安心、しかし多少高い、という方向になったところと別れた。

そして銘柄豚では昔から定評のある黒豚がもっとも扱いやすかった。扱いやすいというのは、品質や仕入れということではなく、顧客に訴求するのに、誰でも知っている名前の黒豚がもっとも進めやすかったからである。新しい、まだ余り知られていない銘柄豚を一生懸命キャンペーンをするよりも、よく知られている黒豚をやったほうが効果的だからである。ところがここに盲点もあった。すなわち、「黒豚とは?」という疑問で、これが消費者の間から、疑問と疑いをもって出てきたわけである。


スーパーマーケットの動き


最近のスーパーの食肉売り場の動きは、「黒・赤・黒」と呼ばれている。黒毛和牛、赤鶏、そして黒豚である。

ダイエーは牛肉は、米国産「カンザスビーフ」に加え、国産銘柄牛の品ぞろえを広げているほか、黒豚は「さつまの黒豚」という独自ブランドをつけ主力商材として育成中である。純粋黒豚は「さつまの黒豚」。他は鹿児島黒豚と表示。

イトーヨーカ堂の首都圏の大型店大井町店では、中央奥の精肉売り場に、対面販売コーナーがり、三段の販売ケースをはさんで従業員が客の注文に応じ、松阪牛や那須産黒豚などの高級食肉を少量から販売する。高品質肉を対面で特別に販売をする一昔前の売り場コンセプトを再現したように見える。

ジャスコは和牛肉では「鈴鹿山麓和牛」、鶏肉では「純吟赤鶏」などの銘柄肉を扱っており、豚肉については昨夏から鹿児島産と東北産の黒豚の販売店舗数を拡大している。中部地区の一部店舗では米国産黒豚も試験販売している。現在、約150店舗で黒豚を扱い、「売り上げは前年比で二倍を超える伸び」ということである。

マルエツではインストア加工に高品質肉を入れている。スーパーではもともと店内のバックルームで精肉のカット処理をしていたのだが、技術部則と売り場効率の目的で、店外のセンターやパッケージ業者にカットとパッケージを任せるアウトパックになってきている。しかし、高品質肉についてはイトーヨーカ堂もそうだが、マルエツでも店内でカットなどの加工をし、顧客の要望にこたえると同時に、鮮度の点も重視している。

首都圏のオダキューOXの売場では産地の「鹿児島渡辺バークシャー牧場」をPOPに書き、サツマイモで245日飼育の純粋黒豚であることを明記している。地方のスーパーでも黒豚を訴求するところも多い。札幌圏でスーパーエースを展開する(株)松下では、低農薬野菜を拡販すると同時に、北海道産を取り入れ、帯広黒豚を扱っている。


フードサービス、メーカーの動き


フードサービス、メーカーの動きも活発である。ロッテリアハンバーガー・チェーンでは「黒豚かつバーガー」を新発売した。この記念に、ロッテリアの食事券を抽選でプレゼントするキャンペーンも行っている。

ビヤホールのサッポロライオンは、鹿児島純粋黒豚を売物とする、とんかつ・串揚げ専門店「かつ花」を横浜駅構内の相鉄ジョイナスにオープンした。同社系列店では、すでに鹿児島純粋豚肉のアイテム化に注力しているが、これをさらに訴求して全体のアップにつなげる意味で、今回、専門店の形でオープンしたもの。とんかつは、鹿児島県黒豚生産者協議会会員が生産した証明書付きの鹿児島黒豚を、オリーブオイル混合の油で揚げたもの。黒豚以外にも、SPF豚を用いたとんかつ、旬の素材を使った串揚げを出す。

相模ハムは黒豚関連で利益が回復してきた。ソーセージ・ウインナ「黒豚シリーズ」のヒットで、本物志向を強めている消費者のニーズに応ている。96年9月に発売以来、毎月約2千万円の売り上げで推移、当初見通しの月間1,100万円を大きく上回っている。相模ハムでは黒豚の調達先を米国に求め、商社と協力して「アメリカンバークシャー種」を安定的に輸入することに成功した。バークシャー種の血統を50%以上の豚を使う。黒豚シリーズを足掛かりに、これまで手薄だったスーパーへの販路開拓にもつなげたい戦略だということだ。

鶏卵肉情報センター「養豚情報」97/12月号より
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