ローストポークの作り方と販売方法

2013/05/25 16:19 に 松本リサ が投稿   [ 2013/05/25 16:20 に更新しました ]
ローストビーフは豪華メニューとして有名だが、ローストポークはあまり一般的でないように見える。しかし、ローストポークは単に「ローストポーク」としてのメニューだけでなく、弁当、惣菜などにも広く使えるものだし、応用アイテムも多岐にわたる。

ローストポークにする豚肉は、臭みのない、高品質なものでないといけない。ローストという調理方法は、肉のおいしさが素直に出るものである。ということは逆に肉が悪かったら、その悪さが素直に出てしまうことにもなる。事実、品質の悪い豚肉を使ってローストをすると、臭くて不味くて、肉の悪さがもろに出てしまって、食べられない。銘柄豚、高品質の豚肉を利用してこそ、ローストポークが活きる。


ローストポークは、外食メニューならば、店のオーブンで焼いた、例えば「黒豚のロースト、和風ソース」といったメニューになるが、この場合はロース系の部位を使う。ロース、肩ロースである。しかし、外食でも、ローストポークサンドイッチとか、サラダなどに使うのならば、もも系や肩系をロースとしたものをスライスして使えばいい。そして、この部分で、ファーストフード、弁当、惣菜、ベーカリーのサンドイッチ食材などへの利用が出て来る。


ローストビーフの話を参考までに少しするが、ローストビーフでは低価格のものが、サンドイッチ、サラダなどに多く使われている。量販店でも、牛肉を使った加工製品の中ではローストビーフの低価格のものがかなり売れている。

低価格タイプというのは、ブリスケットという前の方のバラ肉や、肩系、モモ系の低価格の部位を使ったものである。これらの部位は低価格だが、そのままだと硬い。しかし、上手にローストをすることによって、軟らかくすることが出来る。堅い牛肉の部位を、軟らかくロースとする技術は、豚肉にもそのまま応用できる。


軟らかくするポイントは、低温で調理、ローストをすることである。普通、ローストをするには150〜180℃程度で調理するのだが、低温調理は120℃程度で行う。コンベクションオーブンというのは、歴史のある一般的なオーブンなのだが、これで低温でローストしてもあまり効果は無い、しかし、スチームコンベクションオーブンとか、輻射熱を使った低温調理オーブンが最近急速に普及してきていて、これを使うと、低温調理が上手く行く。低温調理のいい点は、歩留まりがいいことと、軟らかく仕上げることが出来る点である。

コンベクションオーブンは、熱風を庫内で回して調理するものである。スチームコンベクションオーブンは、熱風の調理と蒸気で蒸す調理の両方が出来るようになっている。蒸気だけでシュウマイなどを蒸すことが出来るし、熱風でカラリと肉を焼くことも出来る。そして、ローストをする場合などは、両方の機能を並行して行うのである。熱風で焼きながら、蒸気も使う。こうすると、肉が乾かないので、歩留まりが良く仕上るのである。しかも低温で調理を行うと、この効果が増加する。

輻射熱を使った低温調理オーブンは、「ハローヒートオーブン」というのが代表的なものだが、調理庫内の内壁に、熱源のコイルが巻いてあり、このコイルを電気で加熱することによって庫内の温度を上げて、調理をする。完全に密封した中で調理することも出来るし、ベンチレーターを少し開けて、空気を少しだしながら調理することも出来る。完全に密封しておくのが最も歩留り良く出来るが、チキンのバーベキューなどの場合は、ベンチレーターを開けて、少しパリッと仕上げることも出来る。


低温調理の欠点は時間がかかることである。時間をかけるから、軟らかく、歩留り良く出来るのでもある。時間の点はしかし逆に利用することが出来る。というのは、タイマーや肉中温度計、それにコンピュータまでセットをされているのもあり、これらの機能を使って、簡単に自動調理が出来る。無人で調理ができるのである。

これを使えば、夜の時間を有効に使うことが出来る。作業終了時にセットをして帰ってしまい、後は機械が自動的に調理をし、翌朝出て来たら、出来上がっている、ということが出来る。調理の人件費コストは安くなるのである。


歩留まりの点だが、180℃のコンベクションオーブンでローストをすると、70〜80%の歩留まりになってしまうが、低温調理をすると、90%以上の歩留りにすることが出来る。この10〜20%の差というのは、肉汁が逃げていないのだから、ジューシーになっていることであり、この数字はそのまま利益の向上につながる。

軟らかくなる点であるが、調理手順で、最初はある程度強火で焼き、肉の表面を固めて、肉汁を逃がさないようにする。その後、120℃程度の低温で、時間をかけてゆっくりとローストをし、牛肉の場合なら、ミディアムレアーなら、48〜50℃、ウエルダンならば、72℃まで、豚肉の場合だと、肉中温度が72℃になったら、その温度をある程度保持することである。

牛肉の堅い部位の場合には、数時間保持したらいい。1時間保持するということは、枝肉やブロック肉を冷蔵庫で2日間熟成することに近いことになる。最近の低温調理オーブンならば、一晩無人で機械に保温させておくことが出来るが、これをすると、例えば8時間保温したら、枝肉を冷蔵庫で16時間熟成したように軟らかくなるのである。この場合、自動調理で、一晩無人で調理する方法が上手く使える。豚肉の場合はそれほど長時間は必要ないが、1〜2時間ほど保持すると、やはり軟らかくなる。


さて、このように軟らかくローストが出来るということは、豚肉の場合でも、肩系、モモ系の低価格の部位を使ってローストポークが出来ることになる。例えばウデを使ってローストを作ることが出来る。

ウデだと、軟らかくローストで来ても、その後の処理が、筋が入り組んでいて、やりにくい、となるかもしれないが、そんなことは気にしなくてもいい。全体が軟らかくロースト出来れば、後は細切れのように薄くスライスをして、サンドイッチ、サラダ、アペタイトなどの使うことが出来る。ローストビーフのサンドイッチは人気だが、価格の点で高く付いたものだ、しかし、低温で調理することによって、低価格のローストビーフサンドイッチが出来るようになり、ローストビーフアイテムの普及に役立った。

ローストポークでも、低価格の部位を使って、同じことが出来る。黒豚、SPFポーク、各種の高品質のポークでは、どうしてもロース系にユーザーのニーズが集中してしまい、他の部位ともバランスが取れなくて苦労をしているが、このローストシステムを使えば、この部位のバランスの弊害を無くすことが出来るのである。売りにくい部位をローストに加工して、付加価値を付けて売ることが出来るのだから。何しろ「黒豚のローストポークサンドイッチ」になるのだから。最近黒豚を使ったソーセージや焼き豚などの加工品が急速に出て来ているが、これのロースト版である。

鶏卵肉情報センター「養豚情報」97/8月号より
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