ハイグレードポークの商品化、その2

2013/05/24 18:21 に 松本リサ が投稿
豚肉というのは、レギュラーのいわゆる普通のもの、あるいは消費者から「おいしくなくなった」「水っぽい」「味がない」というものは、これからは売れなくなり、ハイグレードのもの、鮮度がいい、味がいい、安全性に問題がない、という豚肉がこれから売れる。

豚肉全体の消費からいうと、おいしくない豚肉、あるいは特長のない豚肉の数字は下がっていくが、ハイグレードのものは逆に伸びていき、総合的には、量では横這い、売上ではグレードの上がった分だけ伸びる。という状況になっていく。これにさらに拍車をかけるには、売れる商品作りを進めなければならない。豚肉でよく売れる商品は、小間切れ、しゃぶしゃぶ用の薄切り、豚カツ用、ロースのスライス、といったところがあげられるが、これらに加えて、新しい用途、それも簡単に食べられて、豪華で、誰でも知っているメニューでないとなかなか普及しない。フランス料理だ、イタリアンだといっても、家庭の中では定着はしない。ヒントは、牛肉メニューを豚肉にする、たとえばポークステーキ、であるとか、スライスアイテムの使い方の新しい提案などである。以下にそのアイデアを述べる。


1.コーナー作り

ブランドポークというのは、ただ名前がついていればそれでいいというものではない。本当においしく、あるいは安全性が高いということがきちんと証明されていなければならない。

そのうえで、販売するためには、ただ陳列ケースに並べておくのではなく、それのコーナー作りをしなければアピールしない。価格が一般の豚肉とは違うのだから。

アピールしなければ、せっかくの豚肉も鮮度が落ち、味が落ちてしまう、ロスにもなる。まずくなってしまって、高いものなど売れるわけがない、そうすれば失敗することになる。

コーナー取りは、小さくても2尺の3段、出来れば3尺の4段か、4尺の3段程度が取れればいい。この中で、新しく導入したポークを売り込むのである。

来月のチキンでも述べるが、ハイグレードのものを、最初コーナーどりをして導入したが、結果が非常にいいので、すべてをハイグレードに変えることもある。

変えた途端、ある程度はクレームが来ることがあるが、最初のコーナーを作ったときの状況、宣伝がよければ、必ず良い結果がでる。


2.アイテムとメニュー提案

1)スライス
豚のシャブシャブ用のパックを買っている人に、「何に使うのですか?」と聞いてみると、面白い声が聞こえる。

シャブシャブ用なのだから、シャブシャブに決まっている。と思ったら大きな間違いである。燒肉に使っていたり、モモのスライスを何と豚汁に使っている人もいる。「いい肉を使って豚汁を作る」という答えだが、脂がなくておいしくないとはあまりいえない。こういった声の中から、「なるほど」というものがある。例えば「野菜炒めに乗せる」というのがあった。

シャブシャブのスライスは薄いわけだから、すぐに肉が加熱できる。そこで、まず野菜炒めをやり、それをさらに乗せた後にすぐシャブシャブ用のスライスをフワッと乗せるのである。そうするとじつにうまく煮えるそうである。いってみれば「野菜炒めシャブ」となる。

2)ステーキ
ポークステーキをもっと売り込みたい。今の商品は、ロースといえばほとんどが「スライス」と「切り身」「カツ用」である。しかし、ロースのスライスを焼き、醤油や醤油とダイコンおろしなどで食べると、じつにさっぱりとしてうまい。

下味は塩と胡椒でいいが、これからはミックススパイス、シーズニングを使った食べ方、エスニックメニューを勧めたい。

ポークステーキにおいては、ガスレンジのグリルで焼く方法を提案しよう。普通は魚を焼いているところだろうが、あそこは小さなオーブンと同じである。オーブンならば、肉の脂を適当に落し、蒸し焼きにするわけであるから、ふっくらと焼き上げることが出来る。「グリル焼きキャンペーン」をやろう。

3)燒肉
ある食堂で、「豚バラ肉の韓国風燒肉」というのがあった。食べてみると、グリルでバラの切り身を脂を落しながらカリっと焼き、それはダイコンおろしとポンズとトウガラシで食べるもので、じつにうまい。店の人気メニューであった。

ステーキと同じように、スパイス、シーズニングで食べる燒肉もこれからのものだ。タレ付けの燒肉とは違った味があり、子供達にも人気がある。

焼きシャブというのがあるが、あれは燒肉を一番おいしく食べる方法である。

燒肉はホットプレートでやるものだが、大体は肉をたくさん乗せてしまう。そのために、ホットプレートの温度が下がってしまい、肉から肉汁がでて、肉のおいしさがなくなってしまう。

その点、焼きシャブの方法は、肉を一枚ずつ、サっと焼く方法だから、肉のおいしさを逃がさずに、おいしく食べることが出来る。

燒肉という昔からやられているメニューも、ちょっと工夫すれば新しい感覚で楽しむことが出来る。

4)野菜炒め
野菜炒めのおいしさは脂肪のおいしさである。良質の豚の脂肪で炒めたのは、おかしな牛よりもよっぽどうまい。ベーコンならば独得の風味があって、これまたいいものである。

野菜炒めを売り込むためには、ぜひセットを作りたい。スライス肉と野菜のセットである。特に野菜は、多くの種類を入れたい。単にモヤシとキャベツ程度ならば誰でも出来るが、中国野菜、レッドピーマン、イエローピーマン、その他多くの野菜が入った野菜炒めは御馳走である。

たくさんの野菜を買い集めるのは大変だし、費用もかかる、しかし、一つ一つの野菜は少しの量でいいのだから、かえって無駄になってしまう。それならば、店側で一緒にセットにすれば、それこそ便利で豪華なセットとなる。

5)骨付きアイテム
骨付きカルビでわかるように、骨の付いた肉というのは大変に味がある、お客様もそれを知っている。しかし、商品がないのと、牛肉のショートリブのように、高く売っていたりする。

牛のクラブステーキ、ポーターハウスステーキといったものは、1頭のセットをうまく使えば、それほど高く売らなくてもいいはずである。今はリブ、ロインの部分だけを骨付きで売ろうとしているので、高い原価にしてしまうのである。

この骨付きのおいしさを、豚肉で十分普及させたらどうか。その後に牛肉に行くという作戦は如何がだろうか。

豚の骨付きアイテムといえば、まずスペアリブである。米国やヨーロッパの食肉の専門家に「動物の肉ではどの部分が一番おいしい?」という質問をすると、大抵は「肋骨と肋骨の間の肉」と答える。牛ならばショートリブ、豚ならばスペアリブである。

スペアリブは、前の方と中央では長さが違う、パックする場合などは長さを合わせるのにやりにくい面があるが、これからはバックリブが面白い。

バックリブというのは、スペアリブの上、バックボーン(背骨)側からでているところで、ここのロースの肉を骨を1本1本外すやり方ではなく、骨のならびに添って一気にまっすぐにロース肉を外す、つまりスペアリブと同じ方法である。

リブの外し方が乱暴に聞こえると思うが、バックリブの商品価値がでてくればバランスは取れる。

ポークチャプもいい。ロースのところを、バンドソーでステーキカットをしたもので、骨が付いているので焼き縮みがなく、軟らかく焼ける。

煮込みアイテムとしてはアイスバインがある。これはスネを骨付きのまま煮込むドイツ料理で、ボリュームがある。

実際には、数日間ハムのようにピクリングしてから煮込むので、商品にするには、ピクリング済みのものにして、「下味付きなので後は煮込むだけ」という商品にすればいい。


3.ポークのミートデリ

豚肉も精肉素材だけではやって行けない時代である。半加工、加工、調理済み、といったものを積極的にやっていかないと、利益がでない。


1)ローストポーク


調理済みの商品として、ローストビーフは次第に市場に定着してきた。ここでローストポークも売り込んでいきたい。

あるスーパーで、ローストビーフは大分時間をかけて売り込みに成功したが、これからローストポークを売り込もう、という時に、「せっかくビーフが定着したところで、ポークを出したら、ポークがビーフの売上をとってしまうのではないか」という意見がでた。

さて、実際にローストポークの販売を初めたら、心配したローストビーフの売上減とはならなかった。ローストポークが新しい売上としてでてきたのである。

ミートデリを行なう場合に、アイテムが増えるごとに、それは他の売上を食うものにはならない。アイテムが増えるということは、それが新しい売上として、新しい利益として出現する、という現象になる。


2)煮込み


豚汁、ブレージング(蒸し煮)、角煮、カレー、シチューといった煮込みアイテムは、豚肉なら安く販売できるし、売り場で残りそうなものを加えればロスにはならない。同時に精肉素材の鮮度はいつもいい状態に出来る。

煮込みに威力を発揮するのは低温調理オーブンである。フロリダの優良スーパーマーケットで有名なパブリックスでは、このオーブンが全店でフルに使われているし、全米各地の優良スーパーも同じである。日本においてはまだ一部の企業でしか使われていないが、これをうまく活用すれば、新しい食肉売り場として転身することは間違いない。ぜひ研究してもらいたい。


3)半加工品


スライスと野菜の組み合わせ。タレやシーズニング、味噌などでの味付け。チーズとの組み合わせ。スタッフィング(詰めもの)をしたもの。ヤキトリ。バーベキュー。その他半加工品は無限に作ることが出来る。半加工品は、一つ一つのアイテムはそれほどたくさんの量売れるものではないが、多くのアイテムを出し、全体での売上と、特に利益を稼ぐものである。また、POPやラベルでの販促、メニュー提案と同時に、半加工品でメニュー提案をすると、実際の商品であるから、じつに強力なものになる。


豚肉を伸ばすためには、素材のいいものを売ることと、メニュー提案を含めた加工、半加工を強化することである。このことによって、豚肉の売上と利益を確保するのである。


鶏卵肉情報センター「養豚情報」1998年12月号より
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