ハイグレードポークの内臓肉

2013/05/24 2:15 に 松本リサ が投稿
内臓肉のポイントは鮮度と衛生管理である。鮮度は屠畜後いかに早く販売できるか、衛生管理は、バクテリアのできるだけ少ない状態で処理、管理、そして物流ができるかである。どちらにとっても必要なことは、スピード、温度、衛生管理である。
神奈川県の厚木に豚肉の内蔵が飛び抜けておいしい居酒屋がある。おいしい理由は、原材料の内蔵肉の鮮度である。この店の主人は、近くの厚木の屠畜場に毎朝通い、鮮度のいい材料を仕入れてくる。そのために重要なことは、鮮度、洗い、温度につきる。鮮度は屠畜直後のその日の材料を必ず買うことである。精肉、筋肉そのものでは熟成が必要になる。屠畜直後の肉は死後硬直をしていて、すぐに食べるとゴムのように硬くて、味がまだ出ていない。豚肉ならばクリーンな環境で4日ほどすると熟成をして、柔らかく、旨味が出てくる。しかし、内蔵肉はそうではなく、鮮度が命だ。

アラスカに居住するイヌイットは、昔から白熊など野生動物を捕獲すると、すぐに内蔵肉をまだ暖かい状態のまま食べるそうだ。これが一番おいしいということなのだが、栄養学的にいうと生野菜を食べるのと同じ状況になるということである。というのは、北極圏には野菜は元々無い、野菜が無いと人間は栄養のバランスがとれないので、健康上大問題になるのだが、イヌイットにはそんな問題はない。この理由が内蔵肉をすぐに生で食べることだという。といったこともあり、鮮度のいい内蔵肉は、おいしさとビタミンなどの栄養的良さがそろっているのである。

次は「洗い」である。冷水で良く洗うことによって、内蔵肉に付着をしている雑菌を洗い流すことが出来る。鮮度を落とす雑菌を少なくすると同時に、まだ温かい屠畜したばかりの内蔵肉の温度を急速に冷やす役割もする。

屠畜直後に冷水で良く洗うのは、内蔵肉ばかりではない、枝肉も同じである。ある高品質のハム、ソーセージを製造している手作りのメーカーでは、屠畜後の洗いを自分でやらせてもらっているところがある。洗いのポイントは、冷水で良く洗うのだが、特に、枝肉の裏側の背骨の裏側の髄のあたりを徹底的に洗うのである。その中でも腰の裏側が重要なポイントだそうだ。この方法は昔は常識的に行われていたそうなのだが、しだいに知っている人、実行する人が少なくなってきてしまったそうである。この方法で洗いをした後、クリーンな状態で管理をしておくと、豚肉にもかかわらず3週間の熟成が行えるのである。この原料を使って作った加工品は旨い。

次は温度である。雑菌を洗い流し、急速に温度を下げた内蔵肉でも、その後の温度管理が悪かったら元も子もない。温度を低温に保つということは、バクテリアの増殖を押さえることである。屠畜場から店舗まで運ぶ間、低温で保管することである。何度がいいかであるが、肉の凍結温度はマイナスの1.7〜1.8度程度なので、これより高く、しかし出来るだけこの温度に近いことが望ましい。海外からコンテナー船で日本に運んでくるチルド肉は、0〜マイナス1度で管理をしている。内蔵肉の場合、簡単にこの温度に保管する方法は、氷を使えばいい。量的に少なかったり、小規模のフードサービスが内蔵肉を管理するのに向く。

厚木の居酒屋のご主人も、枝肉の洗いを自分でやらせてもらっている手作りハムのメーカーも、なぜ屠畜場に行くかというと、一番いい原材料を手に入れたいからである。この点を裏を返していうと、やってくれていないから行く、ということになるのかもしれない。あるいは、自分の眼で見て選定したものを買いたい、という面もあるかもしれない。最近屠畜場法が改正になり、近代化に向けての作業が始まり出している。具体的にはHACCPに対応した施設設備になるのだが、このことは同時に鮮度のいい、品質のいい肉、内蔵肉が手に入りやすくなることにもなるだろう。

厚木の居酒屋の内蔵肉がおいしい理由をもう一つ忘れていた、炭火で焼いているのである。店で焼くのではなく、七輪を客席にもってきて、自分で焼く。炭火がいいのは、湿度の無い強力な火で、遠赤外線なのでからりと焼き上がるからである。このような店は各地方地方で名物店があるのではないだろうか。

では、ハイグレードポークと、一般のレギュラーの豚の内蔵肉の差はあるのだろうか。これは実際に扱っていたり、食べ比べたりしてテストをするしかないのだが、この差は十分にあるということは、扱っている人はわかっているとおりである。肉の張りが違う、肉色が明るい、弾力性がある、色つやが違う、日持ちする、味がなかなか落ちない、旨味がある、など、いろいろな表現があるが、十分に違うのである。この違いを、ハイグレードポークでは十分に活かす意味でも、鮮度、洗い、温度の3つを守り、高品質なものとして販売するようにしていったらいい。

写真1,小袋に入れたレバー


レバーというのは多くの女性にとって複雑な食べ物である。というのは、妊産婦や、貧血ぎみの女性にとって、医者などから「レバーを食べなさい」と勧められているからである。この対象になる成人女性は約半数いるそうである。しかし、内蔵肉は気持ちが悪い、臭い、といったものである。食べなければといわれているのに、気持ちが悪いので手が出ない、のである。その原因は、鮮度の悪い内蔵肉を一度食べてしまうと、その臭みは忘れられないものになってしまっているからである。もう一つは気持ちが悪いので触りたくない、というものである。

そこで、この気持ち悪ささえなくすことが出来れば、レバーだけでなく内蔵肉のマーケットを大きく作ることが出来る。何しろ医者などから「食べなさい」と勧められているのだから。そこでやらなければならないことは、高品質な内蔵肉を売ることである。高品質であれば臭いわけはない、その上にハイグレードポークならばなおいい。そのためには、仕入れから運送、保管、パッケージまでの品質管理である。

もう一つは、きれいに見せて販売する、ということである。レバーをカットしてそのままトレイに入れると、ドリップがどうしても出て来てしまう。そこでこのパッケージである。ビニール袋に入れる手間がかかるのだが、見た目にはきれいである。実際にこのパッケージにしてから売り上げが増えることが多い。

写真2、ハイグレードポークの白もつ


ハイグレードポークの内蔵肉は表示を必ずすることである。製品名に入れたり、ラベルを貼ったりする。顧客はいい肉の内蔵肉はおいしいというイメージをもっているし、実際にそのとおりである。だから自信をもって表示をしたらいい。価格が高くなっていても、ハイグレードのものならば売れる。これはミンチでも同じである。和牛のミンチは価格が高くても売れるし、ハイグレードポーク、チキンのミンチでも同じである。

写真3、豚足


これはメーカーから製品で仕入れている豚足。酢みそが付いているのでそのまま簡単に食べることが出来る。真空パックされているのでクリーンな商品である。内蔵肉製品はアイテムによっては製品でメーカーから仕入れてそのまま陳列したほうがいいものも多い。メーカーサイド、生産者サイドからこれを考えると、内蔵肉の加工品の開発がたくさん出来ることになる。

鶏卵肉情報センター「養豚情報」99/6月号より
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