ハイグレードポークのマーチャンダイジング シンボルを作る

2013/05/25 6:45 に 松本リサ が投稿
SPF、あるいは黒豚に代表される高品質の豚肉(ハイグレードポーク)は、生産者側も、小売店側も、これからますます重要な商品になっていく。競争に勝つために、他店との違いを打ち出すために、そして利益をとれる体質にするためにである。そのためには、マーチャンダイジングが重要になる。

商品というのは、それがよければ売れるというものではない。適切な販売をしていかなければ、よいものも売れない。それを行うのがマーチャンダイジングである。マーチャンダイジングというのは「商品化計画。市場調査に基づく合理的な販売促進策」(朝日現代用語「知恵蔵」)ということである。

ハイグレードポークのマーチャンダイジングを進めるポイントの一つは、シンボルを作る、ということである。シンボルとは「象徴」である。事業を進める際に、明確な目標、事業を進めている全員がよりどころとする「象徴」である。これがあることによって、マーチャンダイジングを進める関係者全員の意志の疎通、統一が図れる、というものである。

暗黒の中で「仕事をしろ」と尻をたたかれるのではなく、道を示すライトを照らし、その道を目安にマーチャンダイジングを進めていかなければならないのである。

CI(コーポレートアイデンティテイ」というものがある。「ああ、会社のマークを作ることだな」と捉えている人がいるが、全くの間違いである。マークのことを「シンボルマーク」というのだが、シンボルマークを作るのはCIの最終的な作業の一つであって、重要なのは、それまでの過程なのである。

どういうことかと言うと、CIを進めるためには、まず、自分の会社が、今、どういった仕事をしているのか、これから進めている会社の方向はどうしたらいいのか、会社を良くするには、どうしたらいいのか、会社の組織、人事、商品と商品開発、販売、それら一連のものを、どうしたらいいのか、ということを、社員全員が考えるところから始める。

要するに、社内の大点検、人間ドッグに入り、その結果、これからどうしたらいいのか、を考える、重要な機会なのである。CIの作業を進めることによって、事業を進めるのに、具体的に何をやったらいいのかがよく見えてくるのである。

では、ハイグレードポークのマーチャンダイジングを進めるために、分かりやすいシンボルは何なのか。そのシンボルは、人であり、店である。

まず、人である。マーチャンダイジングの象徴となる人とは、ハイグレードポークを、生産者、メーカーと、販売店、消費者を結ぶ、象徴的な人のことである。

たとえば、一流のレストランであるハイグレードポークがメニューに使われていたとする。たった一つのレストランで出ている料理は、原料としてはごくわずかのものしか使ってはいない、しかし、一流レストランで出ているということは、それだけプロに認められているということである。それを大きな実績として評価し、宣伝する。

自社の豚肉をを売り込みたい外食企業なり、スーパーマーケットがあったとしたら、先方の企業に行って、特長であるとか、価格の交渉をする前に、そのレストランに行き、豪華なレストランの中で、そのメニューを食べてみる。出来ればキッチンからどなたかが出て来て頂き、ちょっとでいいから話をしてもらう。そんなステップを経て営業を進めれば、いい結果が出てくるだろう。

こういったことを発展させると、色々なことが出来てくる。例えば消費者向けのセミナーである。今販売しているスーパーマーケットのお客様を何十人か呼び、調理、試食セミナーを行う。ホテルに呼んでもいいし、遠すぎるというのであれば、店の近くの会場を借りて行うのである。先日地方都市のホテルで、ある有名な料理長を囲むディナーの夕べ、という会をやっていた。こういった形でもいいのではないだろうか。

外食で進めたいならば、全国には司厨士協会というのがあり、ネットワーク化されている。スーパーマーケットでは、各企業別に進めてもいいし、いくつもの協会もある。いずれにしろ、人の象徴がいれば、進めやすい。

スーパーマーケットで進めるならば、人としては、有名な料理学校の先生と契約するのも手である。豚肉が良いものであれば、話には乗ってくれる。

あるハイグレードチキンのメーカーでは、東京の有名な料理学校の先生と契約をしていて、そのチキンを使った料理を紹介するし、料理カードを作る場合には、その先生の名前付きである。スーパーマーケットの現場の担当者を毎月ぐらいに集めて、その先生から、チキン料理のセミナーも受けてもらっている。

こうすると、消費者は、だれでも知っている、テレビにもしょっちゅう出ている先生が紹介するチキンということで、信用が出来る。スーパーマーケットの現場担当者は、調理方法の知識が出来るから、店でお客様に説明も出来る。豚肉でも同じことである。

新しくスーパーマーケットに売り込んだ際には、そのスーパーマーケットの近くの会場を借りて、消費者向けの料理教室をやってもらうことも出来る。有名な先生であるから、たくさん集まってくれるだろうし、信用が出来るので、直接売上に結び付く。

これら全ての元は、「人」というシンボルである。


次に、「店」というシンボルである。

ハイグレードポークを扱っている生産者の方で、今、自分達の作っている肉について「どこで販売していますか、どういった状態で販売しているのか、実物を見てみたい」という質問があったとしたら、すぐに案内できる店がどれほどあるだろうか。数多くある必要は無いが、ハイグレードポークの大きなマーケットである、首都圏と近畿圏ぐらいには、すぐに案内できる店を持ちたい。

新しい営業先が出て来たときに、自信を持って案内出来る店である。スーパーマーケットもそうだが、外食でもそうである。案内出来るレストランがあるかどうかである。

スーパーマーケットでのシンボル店では、単にその肉を販売しているというのではなく、作ってある販促物、シール、、POP、棚帯、ポスターや料理カードなどが、どのように効果的に使われているのか、がすぐに解る場所としても重要である。

販促物を提示しても、売り場でどうなっているのかが実際に見れなければ、イメージが沸かない。更に、試食販売をしているとか、加工品があり、それがよく売れているとか、目で見て、実態を肌で感じ、「これならば売れそうだ」という気になるような売り場のシンボルが必要なのである。

更に、その売り場に案内をしたとき、スーパーマーケットのバイヤーやマーチャンダイザーとしては、写真が欲しくなるはずである。しかし、ひょっとして競合店になる場合もあるシンボル店で、おおっぴらに写真は取れない場合が多い。そこで、その写真もあらかじめ用意しておくのである。

原料素材の規格などを取った写真は、営業説明用として持っている生産者、パッカーは多いが、トレイにいれた商品として、スーパーマーケットのオープンケースに陳列するパッケージングまでの参考となる商品写真まで用意しているところは少ない。更に、売り場の写真、それも、いくつもの売り場の写真を用意しているところはもっと少ない。

しかし、こういった写真は、撮る機会は、いくらでもあるはずである。トレーパックの写真などは、自分で作って撮ることも出来る。こういった材料を準備したうえで、シンボル店に案内をするのである。短時間に理解してもらうためには、強力な道具が必要であるが、いつも注意していれば、それらの道具を揃える場はいくらでもある。

「ビジュアル」という言葉がある。字を読んで理解してもらうのではなく、見て、すぐに、短時間に、しかも立体的に物事を理解してもらう、という説明方法である。「ビジュアル」のための良い方法は、字を少なく、写真とかイラストを多く、実物やサンプルも多く、ということである。

「人」と「店」というシンボルを、今、自分が扱っている食肉のマーチャンダイジングを進めるために、考えてみたらどうであろうか。


鶏卵肉情報センター「養豚情報」98/7月号より
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