ハイグレードポークの方向

2013/05/25 6:49 に 松本リサ が投稿
1.違い。

色々な場面でハイグレードポークの試食会を開いてきた。スーパーマーケットのバイヤーだったり、消費者だったり、レストランのシェフだったり、外食のトップだったりだが、その中でいつも感じることは、ハイグレードチキンでは明らかな違いが出るのに比べて、ハイグレードポークの場合には、あまり大きな違いが出ないことが多い。目隠しテストをすると、レギュラーポークの方がかなりいいものだと、分からない場合がけっこうある。

ハイグレードポークというのは、黒豚、SPF、ブランドポークなど、飼育や、素質から作ってきたもので、味がよく、消費者に対して、安全性や、味の点で、普通の豚肉とは違うものという認識が、スーパーマーケットのバイヤーにある。

「違う」という点に関しては、「差別化」という言葉を良く使う。他の企業、競合点と比べて、何らかの特徴があるとか、付加価値がついているとか、要するに、その「差別化」された商品があることによって、お客様が他店よりも優先的に店に来てくれるものでなければならない。そのためには、2つの条件が必要になる。一つは、味。もう一つは、信用であるとかブランド力である。

試食をして、レギュラーの品質がたまたま良くて、あまり差が出ない状態でも、ブランド力があれば、売れるようになってしまう。黒豚などはいい例で、多少品質がバラ付きがあり、あまり良い状態でない黒豚でも、消費者は、「黒豚だからおいしい」となってしまう面がある。ブランド志向である。

このブランド志向を悪用してしまうと、そのブランドはそのうちにすたれてしまうが、あくまでも品質第一にして、ブランドを大事にしていけば、長く有利なマーチャンダイジングを行なっていくことが出来る。ハイグレードポークの生産からマーチャンダイジングは、このような微妙な面がある。


2.加工品からハイグレードポークをスタート


東北のある農協の例だが、ここで作っているハイグレードポークは、首都圏に数十店舗あるスーパーマーケットに出ており、そこの豚肉の売上の20%を占めるまでになった。20%の構成比を占めれば、かなりの成功であるが、この例の場合には、単にハイグレードポークの精肉を販売してここまで来たのではない。キーポイントはソーセージである。

ここのハイグレードポークで作ったソーセージを精肉と同時に販売し、その味と安全性の信用があるのとが相乗効果で、ブランドとして確立してきたのである。

売り場に行くと、同じブランド名が、豚肉の精肉と、ソーセージとの両方についている。

最近の消費者のニーズとしては、味、安全性と、そのうえに簡便性が必要になってきているが、ソーセージを初めとする食肉加工品は、良いものであれば、このニーズにぴったりと合う。

そういったことから考えると、これからのハイグレードポークの生産者からの発想というのは、精肉から営業開発をかけるばかりではなく、高品質の加工品から営業開発をしたほうがいい面がある。むしろ逆に、加工品から話しを進めたほうが、進めやすいのである。

というのは、精肉、生肉でスタートする場合、最初の試食会で、前述したように、あまり違いが分からない状態がある。もちろん科学的データ、バクテリアであるとかの安全性から論理的に売り込むことはいいだろうが、試食した結果、劇的に違わなければ、そう簡単に販売に結びつかないかも知れない。

しかし、加工品から入ると、スーパーマーケットでは、良くて、特徴があって、自社のみのブランドとして販売できる加工品は、最近ではいつも探している状態であるから、入り込みやすいのである。

生産者が直接加工品を作り、それを直接スーパーマーケットまで持って行くことは、全く違う食肉加工という世界を研究しなければならないことだが、何も製造の設備からノウハウまで全てをこれから構築しなければならないということではない。モチはモチ屋だから、加工肉の専門メーカーと共同して作業を行なっていけばいいのである。

そこで生産者側に必要なことは、加工肉を作る技術ではなく、消費者が一体どういったものを求めているのか、スーパーマーケット側はどのようなものを欲しがっているのか、といったことを知り、それに対して、積極的にプロジェクトを進めるパワーとセンスである。

スーパーマーケット側は、消費者と直接付き合っているから、ニーズを良く知っているかというと、そうとばかりはいえない。消費者に直接商品を販売しているから、どうしても店の販売者側の理論で考えてしまう面がある。

先日も、米国産のチルドビーフを販売するために、パッケージに貼るシールを見てみたら「USチルドビーフ」になっていたので、この名前がどれほど消費者に分かるか調べてみた。普通の消費者にこの名前が分かるかを聞いてみたのである。その結果、約8割が正確な意味が分からなかった。

この言葉は、食肉関係者が使う言葉、業界用語なので、取引上、商売上普通に使ってはいるのだが、それをそのまま消費者に対して使ってしまっては、分からない。黒豚のようにブランドになってしまうまでいけばいいのだが、まだまだそこまでは行っていない。

そこで、あるスーパーマーケットでは、食肉担当者が作った販促のためのコンセプト。商品の特徴、味、食べ方などを、そのままPOPにしないで、それを主婦である販促担当課長がよく調べて、主婦が分かる言葉に書き直しているところがある。

このように、スーパーマーケットに入ってしまうと、なかなか「消費者の目」にはならないのである。そんなとき、生産者は、自分が買う目になって店を見ることが出来れば、ある意味では、スーパーマーケットの担当者よりも、より消費者の心が分かるようにもなる。スーパーマーケット側から離れることが出来るからである。

そういった感覚でハイグレードポークの営業開発、提案をして行き、その上で、加工肉からスタートした営業までのセンスが出来るようになれば、新しいルートの開発になっていくだろう。


3.バラ付きが多くなったハイグレードポーク


黒豚、SPFなどを扱っているスーパーマーケットでは、「最近はバラ付きが多くなってきて困る」という声が高まっている。ハイグレードポークが売れてきているので、発注も多くなってきた。それにつれて、生産の方がどうも追い付かなくなっているようで、それがバラ付きになって現われているようである。

スーパーマーケット側では、どうしてもロースが不足してしまう。これが大きく影響をしてしまうのだが、お客様からすれば、そんなことは関係ない、いい豚が良くなければだまされたことになる。そんなことを続けていけば、そのハイグレードポークのブランドの信用がなくなってしまう。

最近の豚肉の消費量はそれほど減ってはいない。この背景には、ハイグレードポークがかなり貢献をしているのではないかと思うが、品質の不安定がいつまでも続いていけば、不安である。このことを、生産者の方で、「ウチの生産システムは、このように安定が出来る」ということになれば、スーパーマーケット側は有り難い。どこかそういったところはないであろうか。

住友商事は、米国の大手豚肉パッカーと協力をして、SPFで、肉質が日本人好みで柔らかい豚肉を開発し、日本マーケーットに売り込むという。これは、中国産豚の血統を入れたものだということである。このような海外からの攻勢も次々と出てくる。これに対して国産ポークの有利性は、「生産者が見えること」「安心感があること」などである。イメージがいいうちに、さらに国産ハイグレードポークの品質アップをはかっていくことが重要である。

鶏卵肉情報センター「養豚情報」98/7月号より
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