ハイグレードミートのマーチャンダイジング 販売促進戦略 「データベースマーケティング」

2013/05/25 6:42 に 松本リサ が投稿

担当者というのはその国の人であるから、もちろん外国人である。一日3店舗回った後、しばらくして回った店の売上を聞いたところ、どの店もそれまでの大体2倍の売上を上げていることが分かった。

なぜこうなったのかというと、店に仕事上で、海外の人が来ることなど、まず無いことである。そこに、直接、担当者のところに、外国人が、それもえらい人が来て、直接話をするわけであるから(もちろん通訳が付くのだが)、店で売っているラムを何とかしなければ、となるのは当然のことである。たった5分で済むスピード販促法、である。

と言っても、忙しい中、全ての店を回るわけに行かない。そこで、次に提案したのは、手紙を出す方法だった。海外の現地から、政府の関係の便箋を使い、各店の担当者個人宛てに、手紙を出すのである。外国の政府から手紙をもらうことなど余り無く、何が来たかと見てみたら、「我が国のラムの販売に御尽力され、感謝します」という手紙が来たら、だれでもやる気になる。

更に、コンテストでもやって、入賞したら、その国にご招待、とでもやったらいいのではないか、という提案であった。この販売促進策は、今持っている顧客を大事にする、と言う重要なマーケティング手法の一つである。

商品の販売を進めるためには、大きく分ければ2つのことを行う。一つは新しい顧客の開拓であり、一つは今の顧客、お得意様に働きかける、というものである。


最新のマーケティング方法であり、なおかつ今の不景気に重要なパワーとなるマーケティング方法を「データベースマーケティング」という。データベースマーケティングには5つの基本的なものがある。これをハイグレードミートの販売にあてはめて解説してみる。


第1は「顧客データベース」である。

今、食肉を販売している先、顧客をデータベース化し、どこの、だれが、どのように肉を仕入れ、どのように販売をしているのかを、メーカーなり総発売元がしっかりとつかむことである。

どこの卸問屋は、どこのスーパーマーケット、食肉店に卸していて、それらの店は、どのように販売しているのか、いくらか、商品作りは、売り場の規模と売上高は、特長のある販売方法が何かあるのか、それらをデータベース化するのである。

データベース化と言っても、別に難しいわけではない、コンピュータを使ってもいいし、原始的に、ノートにメモを書くだけでいい、重要なのは、今の直接、間接の顧客の動向、実態を知ることである。

そして、更に、顧客の実態から、販売方法の改善とか、アイデアを、その顧客に直接提案をするのである。顧客のAスーパーマーケットが行っている販促が大変に効果的である、とい情報をつかんだら、さっそく調べ、今度はその方法を導入したら良さそうな他のスーパーマーケットを自分の顧客から探しだし、提案するのである。商品作り、商品管理など、全ての面でこの作業を行うのである。

これは、提案する顧客にとってはアイデアと受け取られるかも知れないが、実は、実際に行なって成功した方法である。差し障りがなければ、実名まで教えればいい。視察もしてもらったらいい。

単なるアイデアだと「そんなことがうまく行くわけがない」と言われるかも知らないが、事例ならば、信用してくれる。信用して、実行してくれれば、成功率は高くなる。

反対に、失敗例も多く知っていなければならない。ある顧客が、他で失敗をした販売方法を行おうとしている、という情報が入ったら、さっそく行って、失敗した例を話すのである。

実行しようとしている顧客は、自分が考えた方法を、ただ単にけなされるのでは面白くはないが、失敗例を教えてくれる、というのは実にありがたいことになる。しかし、それを聞いても、「計画は進み始めた」ということで、やってしまうことも多い。このときにも、もし失敗したら、「あのとき教えてくれていたのに」という気持が残り、次の提案の時には、ちゃんということを聞いてくれるようになる。

企業の中にいると、外の情報が入らないものである。それを広く調べ、教える、情報交換業務である。これを全顧客に対して、立体的に行なうのである。


2番目は「複数流通販売経路」である

生産者→パッカー→スーパーマーケット→消費者、という普通のパターン以外に、生協、消費者クラブ、ふるさと宅配便、外食企業への直販、会員制など、あらゆる販売ルートを開拓することである。既存の販売ルートをお互いに守っていた昔と違い、ディスカウントストア、直販ルートなど、流通業態が続々と変化して来ている今、古いままの流通ルートだけに固着していては競争に負けてしまう。積極的に独自の販売ルートを作るのである。


3番目は、「直接受注販売」である。

2番目の中の直販とダブる部分がある。食肉での販売では特に卸問屋の問題がある。卸問屋は、積極的に販売の開発、改善をしているところもあるが、全く旧態依然のままの仕事をしていて、顧客データベースを作ろうと思っても、どこに売っているのか明かさないし、整理もしていないところもある。ただ単に物を運んでいるだけで、これからの時代に生き残れるはずがないのだが、現実に惰性で仕事をしているところがある。

あるとき、中部地方にある大手スーパーマーケットのハイグレードチキンが、そこの消費者に評判が悪い、という情報が入ったので、調べてみたら、何と2つもの卸問屋を通って物流されていた。

ハイグレードチキンの条件は、自然、安全、美味しさなどであるが、それを活かすためには、鮮度が良くなければならない。しかし、この例の場合には、四国の生産者から、最初の卸問屋に行き、次の日に2番目の卸問屋に行き、そのまた次の日にやっとスーパーマーケットにたどり着いていた。3日もかかって売り場にたどり着くのである。と言うことは、消費者は4日目のチキンを買い、へたをすれば5日目に食べることになる。これではせっかくのハイグレードチキンの味も落ちてしまう。

こんな状態になっていたのは、生産者が販売ルートの実態を知らなかった、あるいは気にしていなかったのと、卸問屋も鮮度のことを考えていなかったからだろう。最もいい加減なのは、スーパーマーケット側である。店に入った原料の日付を見たら、どんな状態か、さっそく調査を開始しなければならないどうしようもない状態だということが分かるはずなのに、気が付かなかったのか、何もしなかったのである。

人脈で商売は成り立っているから、ルートを最短にしろとは言わない、しかし、伝票はいくら時間がかかってもいいから、商品だけは最短のルートで行くシステムにしないと、このハイグレードチキンは売れない。

別の例だが、ある食肉加工センターを見たとき、原料として仕入れているチキンの日付が4日も前のものだったので、どうしてこんなものが今日入ったのか、いつもそうなのかを聞き、これではだめなことを説明したら、「そんなことは知らなかった」ということで、さっそくメーカーに話をした。

この後、しばらくして改善された。ということは、メーカー側が出来たことなのである。気にしていなかったセンター側もセンター側だが、出来るのにやっていなかったメーカー側も問題である。営業が、知らなかったのか、知っていながら黙っていたのか、ただ惰性で仕事をしていたのか知らないが、ほんのちょっとしたことで、いい商品を売ることが出来るのである。

直接受注販売というのは、単に物流だけのことではなく、全ての物流と情報が、メーカーと最終販売の現場で、直接、最短ルートで行き来することになる、であるから、いい商品が売れるようになる、といういい販売方法なのである。


4番目は、「顧客反応主導型コミュニケーション」である。

ハイグレードミートを買って、消費者はどう思ったのか、高いと思ってかったのか、高いと思って買ったが、食べてみたら美味しいので、これからも買おうと思ったのか、反対に、それほどでもないので、もう買わないと思ったのか、そうならば、なぜそうなったのか、また、買う前に、価格を見てどう思ったのか、パッケージを見てどう思ったのか、もう少し安かったら、試してみようと思ったが、ちょっと予算が不足したから、結局そのハイグレードミートに出会うことが出来なかったのか、こんな販売の現場での顧客の反応を調査し、聞き、それを、価格、パッケージ、ネーミング、関連物、販売促進、イベントなどに反応させる方法である。

このために最も原始的で効果的な調査方法は、売り場に立つことである。販売しながら聞くのもいいし、お客としてウロウロしながら、お客様同士が話しているのを、悪く言えば盗み聞きすることもいい。お客様の反応を知り、お客様とコミュニケーションをし、それを販売に活かすことである。

もちろんこの場合のお客様は、最終消費者だけではなく、スーパーマーケットのバイヤー、店の販売担当者も、全て含む。販売担当者が、面倒なことや、作業がしにくいことがあれば、それを改善するというのもこれである。カットの規格の改善などがこれに入る。


5番目は、「オリジナリティのある価値の提案性」である。

ハイグレードミートで言うと、メニューの提案、簡便で高級なメニューに出来る調理方法のアイデア提供、そのための手段として、料理教室を開催するとか、イベントを開く、等である。

メニューや調理の提案というのは、普通は料理カードを作ったりするのだが、最近は字を読ませる販促物は受け入れられない、それならば、「遊び」的要素のあるイベントなどを行なったほうがいい効果がある。

加工品を作ることもこれに入る。ソーセージ、ハム、ロースト、スモーク、照焼きといった、簡便かつ高級なメニューを、調理せずに食べられる加工品を開発し、精肉と一緒に販売をするのである。

鶏卵肉情報センター「養豚情報」98/8月号より
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