国籍を変えてみたら

2013/05/24 0:56 に 松本リサ が投稿
ローマにはまともな中華料理はないというのが定評だ。

本当か嘘かとりあえず市内の中華料理店に入って様子を見ることにした。メニューを見たら一般的な内容のほかに「焼き餃子」が入っている。大体これは日本独自のメニューで、中華レストランにあること自体がおかしいのだが、見た途端に餃子ライスを思い出し、目頭が少し潤んで思わず頼んだ。

これがテーブルに置かれたとき、見た目は確かに焼き餃子なのだが、どうも様子がおかしい、不安感が一瞬横切る。震える箸の先を押さえつつちょっと齧ったら中の肉汁がチュッと飛び出した。これは餃子ではなく小籠包 (ショウロンポウ)だ、飛び出る汁はおいしい! しかし? でも不味くはない! しかし? どう表現を? ここで黙ったままだと日本人の名折れ、何か手がかりになるものはないのか、おぼれるものワラをもつかむで、皮に集中してみることにした。

皮は「不味くはない」のだが・・・しばらく口の中で噛んだり舐めたりしていたら突然解決した、ここはローマなのである、この皮はラビオリなのである。これは「肉汁たぁ〜っぷり入り小籠包タイプ餃子型ラビオのパングリル焼き」なのである。

餃子をイタリア風にするか、ラビオリを中華風にするか。

 

ピザの餃子風というか餃子のピザタイプはカルゾーネだ。小型のピザを二つに折ってオーブンで焼くと、パンのように膨らんだピザが出来る、これがカルゾーネで、ピザのファーストフードタイプとも言えるものだ。日本では大分前に伊藤ハムがこの製品化をした。

30年ほど前、初めてメキシコに行ったときのこと、ロサンゼルスからサン・ディエゴに下り、ボーダーを通過した途端、今までのカルフォルニアのさわやかな風が一気に砂塵にまみれてティファナに入った。夜に入ってしまい、市内に入るまでに道は真っ暗になり。やっと着いた市内は裸電球ちらほらの埃だらけ別世界で、そこで最初に食べたのがタコスだった。

その頃メキシコ料理なんて日本で知っている人はほとんど居なくて、本気で「蛸酢」が出て来るのではないかと思ったら、和紙を油で揚げた衣の様なものに辛く味付けをした具が入っていた。「和紙製衣による超辛辛ソース味付け巨大餃子メキシコ風」である。タコスは今では日本でも食べられるようになった。

衣で巻くというのは、ベトナムでは春巻き、中国では北京ダックや餃子、点心があり、米国では数年前にラップブームというのが始まった。これは小麦などで作ったシート(皮、フィルム)で食材を巻く料理で、ベトナム式春巻きに似ている。中国の餃子は水餃子でスープにするのだが、西安料理になると違ってくる。

西安は中国の西側に位置しており、中東への通り道である。そのために、料理の味、風味も純粋の中国とはちょっと違う。スパイス、ソースもアラブの香りがする。いわば、中華とアラブをミックスしたものなのである。ここの餃子は衣に具を乗せてからくるっと丸めただけで、閉じていない。調理は焼く。日本の焼き餃子によく似ているのだが、そのジューシーさと風味は食べた途端シルクロードに瞬間移動、といったところである。「西安刀削麺」[六本木や代官山店(03-5728-2941)]で味わうことが出来る。

衣で作る料理ひとつでも、国籍が多様だ、発想のために見方を斜めにすれば、アイデアがいくらでも浮かんでくる。

 

上海の日系の清涼飲料水工場では中国内向けの製品を色々作っているのだが、そのうちのひとつに、ウーロン茶の微糖味があった。お茶の本場の中国で、伝統のウーロン茶を甘くするなどという発想がどこから出たのか知らないが、中国内でよく売れているというのだ。なぜ売れているのか理由を聞いても、どうしてかわからないのだそうだ。飲んだら美味かった。それなら日本で販売したらどうかと聞いたのだが、どうもそういう発想は出てこないようで、考えてもいないようである。なぜやってみないのか、私には理解出来なかった。

日本に来た外国人が緑茶に砂糖を入れて飲もうとしていたのを見て「とんでもない、ダメ」と注意する日本人は多いのだが、考えてみたら止める理由はない。紅茶にミルクを入れ出した歴史も詳しくは知らないが、何かのきっかけで誰かが始め、定着してしまったという。コーヒーに砂糖とミルク、メキシコのコロナビールにライムの1/8カットを押し込んで飲む、ブラッディマリーにタバスコ、勝手な発想でやったことが新しいメニューとして定着していることも多い。国籍無視、国籍混合、国籍変更、無国籍料理、国籍混乱料理となる。

私の好きな京都の和食小料理店「河繁」(先斗町店075-241-3672)では、洋風料理もあり、これが魅力的な美味しさなのだ。タンシチュー、カレーライス、それに圧巻は超巨大豚カツ4500円、一枚で4人分はたっぷりある。豚カツは日本の料理だが、この店ではソースがデミグラスソース、洋風ソースを使うのである。これが素晴らしい。京都の準和風小料理屋で豚カツをデミグラスソースで食べる、この混沌的魔力を4人以上で行って味わってみたら、新しい発想がでるかもしれません。
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