骨付きロインステーキ ポーターハウスステーキ

2013/05/25 16:10 に 松本リサ が投稿
骨付きのロインをバンドソーでカットをしていくと、3種類のステーキが取れる。テンダーロインが入っていないリブ側が「クラブステーキ」、その次がテンダーロインが入っている「Tボーンステーキ」である。Tボーンステーキは、骨付きの、ストリップロインとテンダーロインが入った、骨がT型になったステーキをいうのだが、その中でもテンダーロインの部分が1/3以上入っている所をポーターハウスステーキという。ポーターハウスは最も高級なステーキになる。

いままで日本でこのロインの骨付きステーキは特別なものと扱われてきた、それは、1枚の重量が大きくなるので、高価になってしまうからということと、カッティングが日本の中では全く特殊なものになるので、規格外料金を要求されたり、技術的に無理となってしまったりで、なかなかうまく行かなかったからである。海外からポーションカットをした物も入ってきているのだが、一般的にはなっていない。

しかし、牛肉の関税が年々下がってきており、次第に低価格で手に入るようになってきていることと、海外パッカーも日本への売り込みに力を入れてきていて、特殊なカッティングにも積極的に取り組んでくれるパッカーも増えてきているので、そろそろ一般レストランや、チェーンレストランでも考え始めてもいい時期ではないだろうか。


先日シドニーで入ったスイスレストランの名物はビーフステーキで、リブ、テンダーロイン、ストリップロインと並んで、Tボーンステーキも主力として入っていた。価格は、12オンス(340グラム)が21ドル(1900円)、16オンス(450グラム)が24ドル(2160円)だった。Tボーンステーキと言っても、来てみたらテンダーロインの大きいほうのポーターハウスステーキで、重量も規定よりも3割りぐらいは重いものが来た。

グラスフェッドで、サシはあまり入っていないが、それほど硬くはない。味的にはさっぱりとしているのでたくさん食べられる。口に入れて噛むと、和牛のようにグチャっとした感覚はなく、ある程度歯ごたえがあり、ジューシーさが出て来て、牛肉のフレーバーが口の中に広がってくる、実に味のあるステーキである。ワインは、芳純な赤よりも、ボジョレーのような低価格の赤を、少し冷やしてガブガブ飲むほうが、この大規模、低価格、素朴味のステーキには合う。

グラスフェッドビーフは硬くて日本人には合わないと言われているが、そうではない。統計などはないが、感覚的に、最近の若い人は、赤身の多い牛肉を好む傾向がある。もちろん、テレビのグルメ番組の定番の、軟らかさを追い求める人も多いが、反対に、肉らしさ、肉の食感、脂肪の少ないヘルシーさとさっぱりさを求める人も徐々に増えている。


コスト的には海外パッカーで作り、輸入するのが安い。まず、ロインの骨付きステーキは、クラブ、Tボーン、ポーターハウスの3種類を扱うか、それとも、1種類のみにするかである。3種類とも扱うとメニューが煩雑になり、原価を上げ、ロスを増やすことになりそうだから、1種類だけにするのが安全かも知れない。その場合、どれにするかである。

Tボーンだけにすると、テンダーロインの大きいポーターハウスも一緒に混じってきて、多少問題があるかも知れないが、表示上のトラブルはないだろう。骨付きロインの2/3はTボーンが取れるので、それほど高くはならない。更に高級を目指して全てがポーターハウスにするのならば、価格は最も高くなってしまう。骨付きロインの1/3しか買ってくれないのだから。反対に、全てをクラブステーキにするならば、大分安くなる。

全てをクラブステーキにする場合、パッカーでは、テンダーロインだけを最初に外してしまえばいい。残りの部分はすべてクラブステーキに出来る。外したテンダーロインは別ルートに流してもらえばいい。これがいちばん安く上がる。

パッケージは、まず、最もキッチンが楽な方法はポーションカットした物を入れることである、これが原価が最も高くなるが。一枚づつ真空パックをする場合、骨の断面でフィルムにピンホールが出来ることが多いので、骨の断面部分に厚いフィルムを当ててから真空パックにしなければならない、コストもかかる。

低価格のためには、ブロックのまま入れる。例えばクラブステーキにするならば、テンダーロインを外した骨付きロインのまま入れるのである。国内に入ってから、センターでカットをして、店舗に送るなり、店舗で小型のバンドソーを持ち、オーダーが来てからカットをする。もし店舗でバンドソーを入れられるならば、テンダーロインがついたままの骨付きロインを丸ごと入れ、3種類の骨付きステーキをすべて出すことも出来る。


肉のグレードであるが、米国のグレンフェッドにするか、オーストラリアのグラスフェッドにするかのどちらかになる。オーストラリアでのグレンフェッドは、ほとんどが日本向けだけに生産されているから、そこから骨付きロインを取ることは難しい、しかし、米国ならば、すべての牛がグレンフェッドだから、少しの骨付きロインを別にしてもらうことは、量的には十分可能である。問題はこれをやってくれるパッカーを探すことである。しかし、米国からは以前から骨付きロインステーキは入ってきているので、そういったパッカーに依頼すれば可能である。

オーストラリアからのグラスフェッドならば、オーストラリア国内で骨付きロインは普通に流通されているから、それを分けてもらえばいい。問題は肉の軟らかさで、熟成をある程度したほうがいいことである。

牛肉は熟成すると肉の旨味が出て、軟らかさが出て来るが、これをどの程度やるのか、熟成をした後、どの程度の期間販売が出来るか、などの問題がある。ブロックのままチルドで輸入すると、通関後手に入るまでに3週間程度かかる、これは骨付きの牛肉にとってちょうどいい熟成度である。これをセンターなり店でカットをして調理をするならば、うまくいく。売れない場合、どこまで持つか、であるが、骨付きのままだから、脱骨したストリップロインの真空パックよりもかなり長くは持つので、ある程度の回転をするならば問題は出ないだろう。

オーストラリアでポーションカットをして入れる場合は、カットセンターでブロックのまま2〜3週間熟成をしてもらってからカット、真空パックをしてもらったほうがいい。屠畜直後のグラスフェッドビーフをすぐにステーキにして凍結してしまったら、かなり肉が硬い。


ポーションカットをする場合の重量であるが、米国やオーストラリアでは、12オンス、16オンスというのが標準的になっているが、日本でどうしたらいいだろうか。骨付きステーキは骨の部分が20%程度あるので、その分可食部分は少なくなるが、それでも16オンス(450グラム)は一人分として多すぎる。

しかし、考え方として、一人に1枚として考えるのか、二人に1枚として考えるかである。鍋物のメニューのように、1枚は大体二人分です、と薦めるならば、16ポンドでいいし、3人分としてもいいだろう。あくまでも一人一枚にするならば、12オンス程度になるだろう。それでもかなりのボリュームである。

450グラムのポーターハウスステーキをキャンペーンした北海道のある大型レストランでは、誕生日のケーキなどに使う花火を使って派手にテーブルまで運び、テーブルの横で骨から肉を外してあげるサービスパフォーマンスを行って好評だったが、なんらかのプレゼンテーションサービスを考えても面白いかも知れない。


柴田書店「月刊食堂」97/10月号より
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