G=グレージング

2013/05/24 1:49 に 松本リサ が投稿
牧場にいる牛が草を食べているのを見ていると、のそのそ歩きながら、あちこちの草を少しづつ食べている。この様子をグレイジングという。これを食事の仕方にそのまま使いだしているのだが、一つ一つのおかずの量は少ないが、多くの種類のおかずを食べることをいう。昔は「一汁一菜」といって、ご飯と、おかずを1つに、汁を1つ、といった食事だったのだが、次第にぜいたくになってきて、おかずの量が増えてきた。さらにぜいたくになってもっとたくさんのおかずを食べたいのだけれど、今度は太ってしまうという文明病になってきてしまったので、一つ一つの量を少なくする、という事になった。太ってしまうのならばおかずを少なく、それこそ一汁一菜に戻せばいいのに、そうは行かなくなってきてしまったわけである、これがグレージングである。

このことがどう行った形でフードビジネスに現れてきているかというと、スーパーマーケットでいえば、少量のパック、豊富な総菜のアイテムといったものであり、デパートでいえば「デパチカ」といわれる、デパート地下の食料品売り場の充実である。デパチカでは単に売り場とアイテムの充実ということにとどまらず、有名レストランの料理をそのまま販売する、老舗レストランの出店を総菜の形で売る形態も導入されてきた。外食店舗ではメニューの充実ということになるが、洋食が中心だったファミリーレストランでラーメンなどの和食を出したり、無国籍料理と呼ばれるどこの国の料理か不明のものと行った形で出現をしている。スパゲッティの和風メニューと行った古くからあるもののタイプになるが、タイ料理の味を入れたり、中華風の刺し身になったり、ピザが入った調理パンになったりといった形になる。そして量は少なくなり、いくつもの種類が食べられるようになっている形がグレージングというものになっているわけである。


このような状態なのだが、もう少し突っ込んで、スーパーマーケットのアイテムがどのようになってきてるのかを見てみると、総菜だけではなく、生鮮のパックの方も少量のパックになってきている。例えば精肉のすき焼き用パックならば、以前は「今日はすき焼き」となったら、徹底的にすき焼きを食べようということで、大量の肉を買うので、パックも大型のパッケージにして、価格は大量に買うからお買い得、となっていた。しかし、これがグレージングになると、すき焼きはおかずの1つで、それに刺し身も食べたいし、中華点心もちょっとつまみたい、といったメニューになり、当然一つ一つの量は少なくなるのである。したがってすき焼きのパックは大型から中型、小型パックになり、ネーミングを考えるならば「おかずすき焼き」「つまみすき焼き」というようなものになってきたのである。

同じように「今日はてんぷら」という事になると、てんぶらの具を徹底的に買いそろえ、家庭によってはお父さんがてんぷら揚げの役目を分担して、豪華で大量のてんぷらになった。これがグレージングになると、てんぷらはおかずの1つになり、他の料理をいろいろと別に揃えてたくさんのおかずを楽しむわけである。こうなるとてんぷらを家庭で揚げるのが面倒になったり、少ししか揚げないのならば油がもったいない、となり、それなら総菜で揚げたてんぷらを買ってくればいい、という事になる。前述のすき焼きならば、「牛肉のすき焼き風に込み」などといったのを総菜売り場かデパチカで買ってくる、といったことになる。


家族の人数が少なくなったり、お父さんが仕事でほとんど夕食時間には帰ってこない、といった状態になっていることも原因になる。美味しい野菜煮は、たくさん作らないと美味しくない、ご飯もたくさん炊かないと美味しくない、しかしそんなにたくさん一度に作るなど、グレージング感覚に反する、という事になる。ではそれならば、総菜店で買ってきたほうが美味しい、それにご飯もパックして売っているのが結構美味しく、アレならば家でたった1合炊くよりもよっぽどいい、となるのである。そのうちこれが当たり前になり、ご飯の炊き方もわからない主婦が急増したのはこう言った理由からか、とわかるのである。

漫画「ショージ君」の東海林氏は、週に半分ほど家に帰らないで仕事場に泊まるそうだが、食事はスーパーの総菜売り場に行って、それこそグレージング的にたくさんのおかずを買い込み、仕事場で新聞紙の上にわくわくと並べて食べるとき「とても幸福」なのだそうだ。こういった人も増えてきているようで、これもグレージングマーケットの拡大に拍車をかけているようである。


さて、では、鶏肉の販売を考えるとき、グレージングにどう対応するかになる。まずは少量多品種パックになるだろう。200グラム入りパックが普通だったのが次第に小さくなってきているし、モモ、胸肉は、1枚入りパックを売っているだけではだめで、カットをして、そのまま衣を付けれる大きさにしたものをパックするようになってきたわけである。さらにこれが半加工品に進んできた。衣を付けて揚げるだけにしたもの、焼鳥用に串に刺し、さらにタレまで添付したもの。唐揚用に衣を付けたものにしても、和風味、カレー味、ピリ辛味、中華味と、いくつもの味を楽しめるようにする。といった形になってくる。こういった流れになってくると、売り場でのアイテム数がどんどん増えてきてどうしようもない、といった売り場作業者の声が聞こえてきそうだが、しかし顧客の方は多くのアイテムの中から選びたいし、同じ店に行ってもその都度違う味を買うことが出来るならば、その方がいい。これに対して店側は、毎日考えられる全てのアイテムを置くことも出来ないし作ることも出来ない、そこで日替わりで、あるいは曜日替わりでアイテムを交換し、アイテムの多様化と現実の作業の量をバランス良く満足できるようにすることになる。

これを鶏肉の供給者側から考えると、メニューや売れるアイテムの情報提供、シーズニングやタレの供給、串などの道具の供給、鶏肉を使った加工品、半加工品の開発と供給、そして、これらを顧客に伝えるための販促物の提供、とったものになってくるのである。
Comments