ゲームミートを新しい食材に

2013/05/25 16:37 に 松本リサ が投稿
牛、豚、鶏、羊以外の肉をゲームミートと呼んでいる。狩猟から来る動物や鳥類の肉である。ゲームミートは、市場からすればほんのわずかな量であるが、レストランにとっては、特徴のあるメニューを出す意味で重要なものにもなる。ヨーロッパ料理エスニック料理を扱っているレストランでは、高級感を出す意味でも重要である。

鹿肉

日本で鹿肉は昔から食べられていて、「もみじ鳥」は鹿のことで俳句の秋の季語である、「もみじ鍋」は鹿肉の鍋で冬の季語。
栃木県の霧降高原は、関東でも有数の鹿の猟場で、ハンター達のメッカである。レバーと心臓はニンニク醤油で刺身、ロース部分も刺身、その他の肉は骨付きのまま塩とコショウでバーベキューというのが一般的な食べ方だそうだ。
北海道エゾシカ研究連絡協議会では、96年11月に、鹿肉処理実地研修会を開いた。これは、市場に出回るシカ肉の品質のバラつきをなくそうというのが狙い。ステーキ用、刺身用、焼き肉用、タタキ用、缶詰用など、しっかりしたカッティングをすれば、牛肉、豚肉などと同じように、ビジネスになるというところからの研修である。
ドイツや北欧料理に鹿肉は欠かせないものである。北欧料理は、ライ麦の入ったパン、ジャム、紅茶などで人気が出てきているが、在日の北欧人のためにと20年ほど前に開店した「スカンジ・フード」(東京都港区)では、北欧の食材や雑貨を専門に扱っている。よく売れるのは、ポピュラーなスモークサーモンだが、鹿肉のハム(100グラム、650円)も人気商品だそうだ。
鹿肉はニュージーランドでかなり生産されている。鹿の牧場があり、牛や羊のようにきちんと管理されて生産されている。鹿の角は漢方薬として珍重されていて、薄くスライスされたのが売られており、韓国からの観光客が喜んで買っていく。このエキスも生産されていて、小さな瓶に入った鹿角エキスが香港などに輸出されている。肉は食用となって、ニュージーランド国内で消費されており、ヨーロッパ、そして日本にも輸出されている。鹿肉の形は、ロースで、一本1.5〜2キロ程度、冷凍。鹿肉の刺身用の冷凍ブロックもあり、ロース部分で出来ていて、1本が200〜300グラム程度になっている。きれいにトリミングされているので、半解凍してスライスするだけでいい。ゲームミートをいろいろと揃えている(株)シンポフーズの「グルメハウス東京」電話03-3503-9696で、鹿肉の刺身用ブロック原料は100グラム当たり350円で販売している。

ダチョウ(オーストリッチ)

ここのところダチョウの肉が話題になってきている。肉だけでなく、ハンドバッグなどもオーストリッチブームで、香港辺りのショッピングでは最初からオーストリッチのバッグを目当てにしている観光客も多い。ダチョウ肉は、急に出てきた、ということではなく、数年前から世界的に脚光を浴びてきており、飼育熱も高まってきている。その理由は、肉そのものが現在の消費者のニーズに合っているし、生産性もいいからある。
ダチョウ肉の特徴は、一言でいえば、高たんぱく、低カロリー。日本食品分析センターのダチョウ肉と、「改訂日本食品標準成分表」の和牛との比較だと、たんぱく質は、和牛19.5%に対して、ダチョウは21.1%。脂肪では、和牛が15.7%に対して、ダチョウは何と0.4%。カロリーは、和牛232Kcalに対して、ダチョウ93Kcalになっている。味は、「見た目も歯ざわりも牛肉のよう」「マグロみたいなうまさ」と好評である。
生産面では、生産に必要な飼料が、1キロ成長させるのに、牛肉の10%、鶏肉の半分程度と、効率がいい。中国のデータだと、ダチョウ肉1キロに対して飼料は1.5キロだという。また、糞尿の量も少ない。しかし難しい面もあり、生後3か月までの飼育は極端に難しいとされ、慎重な温度管理が必要ということ。この期間は病気にも弱く、衛生管理や増体管理にもかなりの注意が必要。卵から成鳥に育つのはうまくいっても20%程度という人もいる。ただ、中国からの情報によると、「厳寒、乾燥地でも繁殖がたやすく、肥育が早い」「卵が凍らない限り零下30度でも繁殖できる」ということで、これについては日本での生産の難しさの情報と大分異なっている。生産スピードは、ふ化から1年半で、体重150キロになり、牛肉に近い臭みのない均質な肉が50〜70キロ取れる。

ダチョウ飼育は、欧米をはじめ中国、東南アジア、オーストラリアなどに広がっており、国内では、北海道東藻琴村、島根県川本町、沖縄県今帰仁村(なきじんそん)での取り組みが知られている。沖縄・浦添市と今帰仁村にある国内第1号のダチョウ牧場(オストリッチ産業、電話0980-56-5608)は開業約6年で300羽を飼育するようになり、沖縄、大阪にダチョウ肉専門レストランをオープンした。メニューには、テリーヌをはじめとしたダチョウ料理や巨大なタマゴを使ったダチョウ・オムレツも注文が多いという。浦添市のレストラン「ふっとらんステーキ」では、130グラムのステーキセットが1,300円。沖縄ハーバービューホテルでもダチョウステーキを出している。
網走市の隣、網走管内東藻琴村では「オホーツクリッチクラブ」(小崎正幸代表)が結成され、96年6月、ドイツから若鳥6羽を輸入して、ダチョウ畜産の実験を始めている。JR西日本福知山支社管内の和田山駅ではダチョウ肉を、初めて使った弁当「とってもヘルシーDAチョーン」(1,200円)が96年春に売りだされている。

中国ではダチョウ飼育がブームになっているようだ。93年に広東省で始まったダチョウ飼育は、ハルビン、瀋陽、カザフスタン国境に近いイリ地区などに中国の各地方に広まり、現在は3000の飼育場で約2万羽だという。96年始めには、中国政府の支援で中国駝鳥(だちょう)養殖開発協会(本部・北京)も出来た。
イギリスでは、狂牛病騒ぎで、一部の学校給食でダチョウ肉のバーガーが人気を集めているといった報道もある。ロンドンの高級デパート「ハロッズ」で、ダチョウの肉が売られているが、1キロ5,700円とかなり高価で、ここで販売されているビーフのテンダーロインステーキの価格以上になっている。
オーストリアの食肉卸業、ガーベ社(ペッテルスドルフ)は、ガラガラ蛇やワニ、ダチョウなどの珍しい肉をレストランに販売、調理法やPR方法などのノウハウも併せて提供して好成績を上げているという。
また、ダチョウに似た「エミュー」という鳥の肉もあり、オーストラリアの西海岸のパースに近い牧場で約5,000羽のエミューを飼い、西欧に輸出しており、日本にも売り込もうとオーストラリア政府が93年からPR活動を始めている。神奈川県葉山町の葉山ホテル・音羽ノ森のレストランでは、串焼きにオレンジ風味のソースをかけたものをメニューとして出している。卸値はキロ当たり2,400〜3,000円程度という。

東京でダチョウ料理を食べさせてくれる店は
◆アフリカ料理「ローズ・ド・サハラ本店」TEL3379・6427
 ステーキ、タタキ、シチュー
◆同「ローズ・ド・サハラ西新宿店」TEL5323・4210
◆ライブレストラン「ピガピガ」TEL3715・3431
 ステーキ(要予約)
◆レストラン「ジャマイカン・クラブ」TEL3473・8998
 ステーキ、バーベキュー、ナゲット
◆イタリア風レストラン「ラ・フェスタ」 TEL3723・7770
 カルパッチョ

その他

ウズラ

フランス料理に使いたい食材。一羽丸ごとロースとしても小さいから、量も手ごろ。チキンとは違ってしっかりした味があり、小さい地鶏の丸ごとローストといった味になる。「グルメハウス東京」では、フランス産ウズラ、1羽130グラム位が4羽入ったパッケージが1,200円。

雉子

黒磯の「巻狩料理」は将軍源頼朝が、那須野ケ原で狩りをしたことに由来する料理とされ、猪豚、合鴨、鹿、地鶏、キジなどのうち2種類以上の肉と、野菜を使う。なべ料理、うどん、そば、ラーメン、どんぶり物などで、みそ味が基本という。欧州タイプレストランやカナダレストランで使える。「グルメハウス東京」では、カナダ産「キジグリラー」が1羽(約1キロ)2,000円。

ワニ

前出オーストリアのガーベ社もワニ肉を販売しているが、日本では「グルメハウス東京」が、結着加工をして調理しやすくしたレストラン向け、ステーキ用のワニ肉を販売している。30グラムのものが2枚真空パックで冷凍されており、400円。パッケージを外してすぐに調理できる。味はチキンに似た淡泊なもの。エスニックレストランならロスが無く手軽に使える。

カンガルー

オーストラリアでは道路を車で走っているとカンガルーが飛び込んできて轢いてしまう事故が昔から多く、オーストラリアの自動車の前には「カンガルーガード」というガードを付けている。この轢いてしまったカンガルーを以前は食べていたのだが、最近は、カンガルーが増え過ぎて牧場の草を食べてしまうため、数年前から食用となっている。これが欧州で狂牛病と、低コレステロール肉のため最近引合いが多い。日本では、10年ほど前に「ジャンプミート」という名前で売りだしたところがあったが、食用の大ネズミ(オーストラリアでも米国でも養殖している)と似ていったからかもしれないが、これと混同され、更に尾を引いて「ネズミの肉」と言われてしまって無くなったことがあった。今後どうなるか?

アザラシ

カナダのケベック州ではアザラシが増えて400万頭にもなってしまい、これが魚をたくさん食べるので、魚が減って漁師が困っている。これを解決するためには年間10万頭のアザラシを殺さなければならない。そのためにケベック州政府ではアザラシの肉を買ってくれるところを捜している。これに興味のある方は著者までどうぞ。

柴田書店「月刊食堂」97/2月号より
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