ゲームミート、グルメミート

2013/05/24 2:09 に 松本リサ が投稿
牛豚鶏羊以外の食肉を総称してこう呼んでいる。ゲームミートという言い方は、狩猟をゲームとして呼ぶところから来ている。歴史的にあるゲームミートはヨーロッパのジビエで、冬の狩猟季節に入り、狩猟家が捕って来た肉がレストランに行き、そこで料理される。いつ、何がレストランに入るかわからない、狩猟の状態によるからである。雉の場合、鴨の場合、今日は何もとれなかった場合、いろいろあり、店に仕入れられた収穫物によって、熟成方法や料理が出て来るわけなので、店の腕の見せ所である。季節があるので、日本の「旬」のようなイメージになる。

例えば鴨が店に入った場合、その日に直ぐに料理されることはない、熟成していないので美味しくないわけで、一般的には1週間ほどの熟成期間が必要になる。毛を付けたまま冷蔵庫で熟成をさせ、状態を見たうえで、今日が食べごろとなれば店のメニューに「今日のジビエ」として乗ることになる。あるいは、その日入った食材を店の得意客などに教え、それが食べごろになるのは何日後だと伝え、その頃に予約を入れる、という営業にもなるわけである。

東京にもそのような店が全く目立たないようにある。ある美味しいものが大好きな人を、ある大手出版社の有名雑誌編集長が「美味しいものを食べに行こう」と呼んで、行ったところは、見た目にはつぶれそうな民家で、中に入っても長屋みたいに狭い部屋で、何でこんなところにつれてきたんだ、と思っていたら、何日か前に、どこかの山の、何とか言う有名な漁師が捕った鴨が入ったので編集長に連絡が行き、それでは、ということでこのグルメ人間が呼ばれたわけである。鴨をただ単にローストやステーキにするのではなく、その日は一口大に丁寧に切り身にして、主人が1枚1枚鉄板で鴨の脂を使って客の前で焼き、絶好の焼き具合になったところを、一口づつゆっくりと味わって食べる、という料理になっていた。口に入れると「天国のような」美味しさで、鴨というのはこんなに美味しいものなのか、なんて感動したら、今度はえもいわれぬ赤ワインまで出て来て、それを飲みながらゆっくりと着々と出て来る鴨を食べていたら人生観が変わってしまった、という反応になる。

まあ、こんなところが本当のゲームミートの楽しみということになるのだが、産業としてはこれでは商売にならないので、商業ベースにしてゲームミート、グルメミートを食べるようにしてきたのが今までの歴史ということいなる。


ランダムにゲームミートの解説をしていくと、オーストラリアのカンガルーの肉はゲテモノのように見る人もいるが、オーストラリアのスーパーマーケットやデパートの食肉売り場ではアイテムや量は少ないが普通に売られている肉で、赤身系でさっぱりとした味だ。赤身肉では鹿肉も珍重されるようになってきて、鹿肉のステーキはドイツ料理で知られている。鹿肉は国内産のものも本当のゲームミートとしてほんの少量流通されていたりするが、中には衛生上問題のあるものもようだ。ニュージーランドでは鹿の牧場があり、畜産業としてしっかりと成り立っている、ニュージーランドやオーストラリアの高級レストランに行くと「ギアー」という名前で鹿肉が煮込み料理などで出ている。イノシシ肉も国産のがあるが、カナダ産の輸入物も流通している。馬肉がゲームミートになるかどうかわからないが、馬刺しのマーケットは結構大きく、国産と、カナダや米国からの輸入原材料を日本国内で刺し身用の柵に加工しているパッカーもある。馬肉は北海道では道産馬の年をとったのの腸を「馬腸」として炭坑の料理としていた歴史が有り、一部北海道のスーパーマーケットで販売されている。北九州に行くと馬のたてがみの脂を置いてある珍味店があり、食べてみると真っ白な脂肪で、チーズをスライスしたような感じで、ニンニク醤油などで食べる。ウサギ肉は米国ルイジアナの名物料理で、ニューオリンズの有名レストランでは普通にメニューにある。やはり米国のこのあたりで肉ではないが魚のナマズはヘルシー料理としてエグゼクティブお好みの料理にもなっている、ルイジアナ、ジョージア、ヴァージニアといったところで養殖されていて、ワシントンDC、ニューヨークといった東部の大都市の料理で、スーパーマーケットでも販売されている。日本でもナマズ料理が名物の料理店がある。

家禽類では野生の鴨は日本の歴史の中で関西、琵琶湖周辺などが盛んになるが、鴨のたたき鍋として有名である。身だけでなく骨まで包丁で3時間ほどたたいて肉団子状にし、これを鍋にすると濃い鴨の味の鍋になり、日本の冬だなあ〜となる。フランスからの鴨肉(カナール)もゲームミートとしてある。鴨肉を使ったタタキ、ロースト、スモークなど、鴨肉の加工品専門のメーカーもあり、レストランで直ぐに使え、家庭でも気軽に食べられるものが結構流通している。鴨の関係でフォアグラはグルメ最高レベルのひとつとして有名だが、フォアグラは鴨からのとガチョウからのの2種類ある。同じカテゴリーなるかもしれないが、ホロホロ鳥も扱っている料理店は多く、フランス、イタリア、イギリス産が多い。鳩はエジプト人のご馳走で、「エジプトには鳩はいない、なぜなら見付けたら直ぐに捕まえて食べてしまうから」なんて言われるが、鳩料理の鳩は日本の公園にいる鳩ではなく、料理用の鳩なので、これはこれで流通している、美味しいのは仔鳩で熟成させたもの。米国ではターキーがヘルシーミートの代表で流通しているが、日本では七面鳥と表現を変えるとゲームミートとなってしまう、米国からの輸入が主だが、フランスからのもある。ウズラは、日本では卵をとるための飼育が主で、肉用としてはヨーロッパや米国のものが多い。米国のスーパーマーケットに行くと丸のウズラが普通に売られており、小さいので丸ごとオーブンで焼かれ、一人1羽のメニューになる、風味があって美味しい。ダチョウ肉は成長が早いのと健康赤身ミートということで、日本でも飼育しているグループが出て来ている。中国などの海外で飼育したものを日本に輸入するものもある。

変わったところでは、ワニ肉も最近話題になっている。ワニが丸ごと肉で流通しているのではなく、ログにしたのと、それをスライスしてフィルムに数枚貼り付けてから冷凍をして直ぐに調理できるようになっているのが一般的な形だ。オーストラリアやアフリカの観光客向けのレストランに行くとあるが、日本ではやはりこれらの国のレストランで食べることが出来る。食用ガエルも結構流通されており、フランスでは「グルヌイユ」と呼ばれている。今までの肉の中にもフランスは良く出て来ているが、フランスというのはいろいろな肉を食べるところで、さすがグルメの国だ。

気をつけたほうがいいものもある、ヒグマや月の輪熊の肉といったのを時々見かけることがあるが、寄生虫などの問題を十分にクリアしたうえで扱うほうが良いだろう。北海道に行くとトドの肉なんてのもあるが、あまりにも特殊な肉は十分扱いに注意したほうがいいかもしれない。


ミートジャーナル 2001年9月号より
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