F:フレッシュ

2013/05/24 1:48 に 松本リサ が投稿
鶏肉のおいしいのは、と鳥してから12-24時間だというデータがある、経験的、官能的にもこれに賛同する人は多い。24時間以降は、バクテリアの汚染度や温度管理などによって、管理がよければ少しずつ鮮度が劣化していくが、この過程で熟成にもなり、おいしさはだいぶ確保される。しかし管理が悪ければ腐敗への道を走っていくことになる。一方、内蔵も同じかというとそうではない、内蔵は早いほうが良いに決まっている。アラスカのイヌイットは白熊などの動物をとらえた後、最初に食べるのはまだ暖かいままの腸などの内蔵だそうだ。栄養的には最もビタミンがある状態なのと同時に、野菜の無い地域なので、ミネラルを取るためには生肉が良いということである。取り立ての動物の内臓はご馳走だということを聞いている。どちらについても言えるのは鮮度、フレッシュだということになる。フレッシュはおいしい、フレッシュが求められている。
最近の焼き鳥店の隠れたヒット商品として「珍しい部位」がある。ボンチリ(尻尾)、セセリ(クビ肉)、ひざ軟骨、あばら軟骨、ちょうちん(卵管と黄身)、動脈、白レバー(フォアグラの様)、弁慶(アキレス腱)といったもの。トレンド雑誌「DIME」7/6号に紹介されていたこれらの部位が食べられる店は、東京、高円寺の「石火矢」03-3310-9966、麻布十番「鶏繁」03-5445-1589、吉祥寺「せんなり瓢箪」0422-21-2452。これらの部位はフレッシュさが勝負だ。


フレッシュで大切なことは、物流のスピード、温度管理、衛生管理の3点になる。物流のスピードだが、あるチェーンストアのセンターに入ったとき、鶏肉のパッケージの日付を見たら、生産日から4日後のものが入荷していた。ずいぶん古いものが入っているので聞いてみたら、特別驚きもしないで、いつもこんなものだという。驚いて鶏肉は鮮度が重要だと言ったら、知らなかったようだ。ストア側が知らなかったのは仕方がないのだが、腹が立ったのはメーカー側はこんなことは常識なので、このことを知りながら今まで納品を続けてきていたことだ。良心的なメーカー、サプライヤーならば出来るだけフレッシュなものを納品し、良く売れるように考えるはずだ。知っていてやらなかったのは、指摘をして直ぐに翌日か、週明でも2日目のものがちゃんと入荷するようになったことでわかった。わかっていながらフレッシュな製品を入れていなかったのだ、なぜこんなことをしていたのか不明だが、このストアではしばらくしてからサプライヤーを変えることになった。

日本の流通は特殊で複雑だ。「流通」というのは製品の流れの「物流」と、カネの流れの「商流」を一緒にした言い方だが、卸売業によって出来上がって来た日本の流通は、モノが日本の隅々にまで流れている仕組みということで、商業界に大きな貢献をしてきた、しかし、フレッシュが重要になっている今日、複雑な流通機構はマイナスになりかねない。歴史やしがらみで出来上がってきたルートを無視することは無いが、「物流」の方だけはダイレクトにして行く必要がある。

あるチェーンストアの鶏肉の評判が余りよくないので調べたら、生産者から店舗のある地域までの距離は200キロもないのに、卸売会社や物流センターを3個所も通っていることがわかった。それぞれで1日か半日時間をとるし、積み変えで温度管理が乱れて鮮度も落ちる。この例では物量はたっぷりあるので、直接配送しても問題はない。それでもこのようになっているのは過去の商流に物流が縛られて、製品鮮度がその犠牲になっていたのである。こういった場合はどうしたら良いかだが、商売のカネの流れはそれまでの歴史が有るから、これを壊したくないのならば、そのままにしておいたら良い、いくらカネの流れに時間がかかっても鮮度には関係ないから。しかし、物流はダイレクトにやらなければならない。フレッシュでないことは製品の品質が悪い、そして売れなくなるからである。実際この例では売れなくなってきていたわけだ。

長い不況の中でこのような贅肉だらけの状態はかなり無くなってはきているのだが、銀行のようにいまだに昔の体質を引きずっている状況も残っている。サプライヤー側もユーザー側もこういった事態が無いかどうか調べてみたら良い。


温度管理と衛生管理をしっかりやっているかどうかで、鮮度劣化のスピードが決まってくる。と鳥からパックして製品保管庫に入るまでのスピード、クリーンで効果的効率的な洗浄、作業場や冷蔵庫の温度管理、作業者の個人衛生、要するにHACCPの基本となる一般的衛生管理を如何に行なうかが勝負である。食肉の凍る温度はマイナス1.7-1.8℃程度なので、処理した鶏肉はこの温度に保管するようにする。あるサプライヤーでは製品保管庫をマイナス2℃に設定している。この温度に入れると早く肉がマイナス温度帯に入る。製品は1日以上この保管庫に置かれることはないから、製品が凍る心配はない。

大量の処理をするブロイラーの大型工場ではしっかりした管理体制になってきているところが多いが、高品質の鶏肉の中小生産者では、この重要な管理が甘いところもあるようだ。せっかく良い鶏肉を作っているのだから、管理も大切に行なわないともったいない。温度や衛生管理は施設設備に金がかかるから出来ない、と考えている中小メーカーも多いが、決してそんなことはない。施設設備は今のままでも、温度設定、サニテーション、スピード(在庫管理も)など、手作業の管理でも出来るものである。そしてフレッシュで高品質な鶏肉を出荷すればファンは増えてくる。

鶏卵肉情報センター「養豚情報」2000/5
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