地鶏を採用する動き

2013/05/25 16:27 に 松本リサ が投稿
フードサービスで、高品質の地鶏を採用する動きがじわじわと広がってきている。
「プロント」はレタス、トマト、ジャガイモ、大根を有機栽培の野菜に切り替えているが、鶏肉も岩手県産の植物だけをエサにして育てた地鶏「菜彩鶏」を採用した。メニューは「照り焼き地鶏のチーズ焼き」など。

ダスキンはミスタードーナツ店の「ミスター飲茶」に「地鶏まん」を加えている。国産地鶏を使用して、かば焼き製法で焼き上げた地鶏を特製のみそで味付けしたもの。

「ラーメン館」を展開する日高商事は、昼はラーメン、夜は焼き鳥が主体の二毛作店の展開を始めるが、鶏肉は地鶏を使う。ラーメンは山梨県産の地鶏でダシをとる。昼は地鶏を使った親子丼を出す。地鶏の良さを引きだすために、冷蔵で配送をする。

ココスジャパンの地鶏メニューは「野菜と地鶏のクリームスープ」。

サンデーサンは「伊達地鶏の親子丼御膳」。福島県伊達郡で85日間飼育した地鶏に卵2個を落としている。


ここ数年の間フードサービスでは価格競争で、とにかく低価格にするために、輸入を中心とした超低価格原料を使ってきたが、これからは単に安いだけでは顧客は呼び込めない。食材を充実させて顧客を取り込むために、有機食材、オーガニックなどの安全性、高級感を打ち出して来ている。地鶏もその一環である。


メーカー製品にもこの動きは出てきている。

カネボウフーズは売れているノンフライカップ入り即席麺「ホームラン軒」シリーズをリニューアルしているが、「しょうゆラーメン」「みそラーメン」「しおラーメン」とも、地鶏をベースにしている。

日本製粉はパスタソース「オーマイ厳選素材」シリーズに「和風・地鶏クリームソース」を加えた。地鶏を採用したのは、食感とうまみに優れているところから。


鶏肉の流通量は、1995年、約158,2万トンで、内訳は、一般の鶏肉(ブロイラー)は76,6万トン、地鶏を含む銘柄鶏肉が20,8万トン、輸入鶏肉が53,6万トン、そして廃鶏が7,2万トンほどである。国産鶏肉の生産は、鹿児島、宮崎、岩手の上位3県で半分程度を占める。このうち地鶏は1,6トン程度と推定され、前年より10%以上の伸びを見せたという。一報生産者の方だが、全国の養鶏戸数は3,600戸程度になっており、ブロイラー生産者は、この十年で半減している。生産は大規模貸しており、価格競争も激しくなっている。地鶏が脚光を浴びてきているのも、価格と品質そして競争という生産側の背景もある。しかし、基本的には消費者のニーズがある。


「地鶏」は高品質な鶏肉という認識があるが、ブロイラーを基本とした鶏肉でも、飼料を工夫したり、在来地鶏や海外の鶏とかけあわせて味をよくした鶏肉もかなり出て来ていて、「銘柄鶏」と呼んでいる。銘柄鶏は一般のブロイラーよりも消費者のイメージがよく、価格も高く売れるところから、全国で百数十のブランドが出て来ている。しかし、名前だけのようなものも混じっていると指摘もされており、品質、種類、価格やグレードがわかりにくくなってきていた。そのために、先日、日本食鳥協会は国内産の「地鶏」と「銘柄鶏」の定義を決めた。

定義は、[地鶏は、食肉専用種ではないシャモ、名古屋コーチンなど「在来型鶏の純系、または片方の親が在来型鶏で、通常の若鶏より飼育期間を長くしたもの」と定義。銘柄鶏は「両親が肉専用種で、飼料や飼育期間などを通常と変えたもの」と定めた。ともに国内産に限った定義で、両方を合わせて「国産銘柄鶏」とした。いずれも「地鶏」や「銘柄鶏」の名称とともに生産の方法や生産者名を表示する。]

この定義で、今まで混乱していたものが大分整理されるだろう。また、農水省は地鶏を特定JAS(日本農林規格)として認証するために飼育期間、方法、血統などについての規格案作りをスタートさせている。認定は来年以降になりそうである。


そんな中で、最近赤鶏に人気が出て来ている。赤鶏というのは、ブロイラーなどは羽根が白いのだが、赤鶏は赤い羽根である。名古屋コーチン、比内鶏もこの赤鶏になる。日本食鳥協会が整理した鶏肉のブランドでも、「赤」「レッド」とブランド名に入っているのは二十種類以上になる。

消費者の好みとして、卵も一般の白いものよりも、「赤玉」といって、赤い卵の方が人気がある。健康、丈夫、といったイメージがあるからだろうが、鶏肉でも、見た目の色が、美味しさのイメージを左右するようだ。

赤鶏の元は、ヨーロッパからのものが多く、欧米諸国に残っていた50年代の鶏種の褐色コーニッシュにニューハンプシャー種などをかけあわせたものなどがある。

佐賀県のヨコオフーズでは、フランスの高級赤鶏「ブレス鶏」を使って「三瀬鶏」を生産している。レッドコーニッシュの雄と、ニューハンプシャーの雌をかけあわせたレッドブロ(ファルミエ鶏)が三瀬鶏になっている。さらに三瀬鶏は「無薬飼料鶏」という画期的なものになっている。

全農チキンフーズと十文字チキンカンパニー(岩手県)が販売している「みちのく赤鶏」は、フランス産のシェーバーレッドブローという赤鶏を両親に持つ。飼育方法は、開放鶏舎での平飼いをし、飼育日数は70日と、一般のブロイラーの50日程度よりも長くしている。赤鶏系は、一般のブロイラーよりも、成長が遅い傾向があり、飼育日数も長くなる。同時に飼育日数が長いということは、味の点でもいい。

日本ハムの「純(ピュア)赤どり」は、フランスの赤鶏を親に持ち、飼育方法に工夫を加えた。96年1月に試験販売を始めていたが、認知度が高まり、今年はこれまでの倍を生産できる体制にしている。


鶏肉の飼育日数のメカニズムだが、日数が長くなるほど、イノシン酸が多くなり、水分が減っていく。イノシン酸は肉のうまみの成分である。つまり、長いほど美味しさが増し、「水っぽさ」が減っていくのである。同時に、脂肪が増えている。地鶏の鍋物をすると、鍋の表面に黄色い脂が浮いてきて、それがこってりとした美味しさのもとになるのだが、それが増えていくのである。また、歯触りもよくなっていく。

地鶏関係の飼育日数は、名古屋種(名古屋コーチン)、薩摩鶏、比内鶏などは、80〜150日。軍鶏(シャモ)と兼用種やブロイラー用の品種との交雑種では110〜150日程度である。

四国の鶏肉メーカー貞光食糧では、「75日鶏」というブランドの鶏肉を生産して、コープこうべで販売している。飼育日数で美味しさを表現しているブランド名である。


この他、各地、各メーカーが、地鶏、銘柄鶏の拡販、開発を進めている。

山形県畜産試験場が開発した肉用鶏の「山形出羽路(でわじ)どり」の本格的な普及を図ろうと、山形県と生産者が普及対策試食会を開いている。出羽路どりは肉用鶏の「オーストラロープ」などを交配して開発した。放し飼いで100-120日程度飼育。

JA三重経済連と伊勢特産鶏普及協議会は新しい鶏肉を開発中。父に「伊勢赤どり」と同県の地鶏「八木戸」を交配して改良した鶏、母は肉用鶏に改良された名古屋コーチンを使った。新種鶏は飼料要求率が良好、増体率が高いため「90日齢余りで出荷できる」という。

静岡生まれの地鶏「駿河若シャモ」は地鶏には珍しい黒毛。120日をかけて飼育している。一時は衰退していたが、地鶏ブームで復活し、生産は再び伸びているという。

高知県佐川町の地鶏「土佐ジロー」は高知県畜産試験場が「1個50円で売れる卵」を目標に、米国産ロードアイランドレッドに土佐地鶏を掛け合わせた。卵はビタミンA、Eが豊富で、普通の卵より一回り小振りなのが特徴で、肉用にも使える。

住商飼料畜産が開発した「地養鳥」は、土中の養分を多量に摂取する広葉樹の精製樹液(木酢)、海藻、ヨモギ(天然ミネラル補給)、沸化石(脱臭効果、健胃整腸効果)を混合した飼料を地養素と命名、これで飼育した。生産者各社・飼料メーカーなどと「全国地養鳥協会」を組織して拡売を行ってきた。どうしても余りがちな胸肉の加工品の開発も進めている。すでに、スーパーマーケットとのタイアップで、地養ボール、同蒸し鶏などの数種類ができあがりつつある。

名古屋コーチンに対抗するような地鶏を研究していた愛知県畜産課は「三河地どり」を開発、供給開始すると発表した。明治末期から大正時代にかけて作られた「三河種」にアメリカ産の白色プリマスロック種を交配した。飼育期間は105日。出荷体重は、名古屋コーチンとブロイラーの中間に当たる程度。

熊本県農業研究センター畜産研究所は「ロードアイランドレッド種」(熊本ロード)の雄と「白色プリマスロック種第13系統」の雌を交配してつくった期待大型地鶏母鶏を公開した。熊本、大分、宮崎の三県の研究機関が共同で造成に取り組む、経済性に優れた褐色種。産卵率や増体、飼料効率などが優れているという。

香川では地鶏「讃岐コーチン」を全国に通用するブランドに育てようという動きが盛り上がっている。

海外だが、焼き鳥店「宝の蔵」では、ベトナムで名古屋コーチンで生産して、串刺しまでして日本に持ってきている。このために価格が安い。最近は月に100トンを生産しているということである。

タイのブロイラー産業はコスト高で日本向け輸出が停滞しているが、在来種を交配した地鶏産業が大規模に展開され始めている。高く売れるところから、生産する農家が増えているという。この国のタナオスリ・カイ・タイ社は、週4万羽の準地鶏を生産している。これは、雄が闘鶏用地鶏、雌が改良種で、この組み合わせでひな生産が安定したということである。


このような状況の地鶏、銘柄鶏だが、メニューの1品に考えてみてはいかがだろうか。

柴田書店「月刊食堂」97/6月号より
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