D : ダイレクト

2013/05/24 1:45 に 松本リサ が投稿
直接顧客とのコミュニケーションを持つ、これが「ダイレクト」の意味だ。現在オーストラリアのゴールドコーストにいて、昨日ここのハムソーセージメーカーを視察していたのだが、日本のマーケットに売り込むために商社に頼むと、何だかわからないがいろいろな人が出て来て、そのくせ製品のユーザーに直接会うことをさせてくれないので、使用してくれる人が何を求めているのかわからなくて困る。という事で、昔は商社だったが、今はダイレクトにユーザーと話して、ユーザーが何を求めているのか、どういった製品が欲しいのか、不満はないのかなどを直接話せないとダメだ、としみじみいっていた。3日前にあったメルボルンのやはり食肉製品企業の輸出担当部長も全く同じことを言っていた。こういったことは多く、逆に直接顧客と話をしているサプライヤーは、ちょっとした誤解もこじれることなく、順調に供給しているところが多い。

日本は流通機構が複雑で、卸売会社や販売会社を通ってユーザーに製品が流れるシステムが多い。このシステムは小さな小売店やフードサービスショップなどにきめ細かく製品を供給する点では良いのだが、やはり顧客とのコミュニケーションが直接とれないために、「お客さんをがっちりつかむ」ということにはなかなかならない。製品に対する思い入れは、卸売や販売会社の営業員やセールスドライバーでは顧客に伝えることは出来ないし、ユーザーを説得納得させることも難しい。

このような歴史やシステムなのだが、これが急速に変化しつつある。メーカーやサプライヤーがダイレクトに顧客とコミュニケーションをとり始めてきており、物流まで直接行なうところが出て来ているのである。例えば東京の23区と一部多摩地域の店舗の集中している地域をきめ細かく販売している食肉製品の加工販売会社があり、ここでは工場でユーザーの求める製品を作り、それをこの会社の営業が小型の保冷車で直接フードサービスショップに供給している。製品の扱いや開発については独特のコンセプトがあって、仕入れたものはそのまま顧客に販売しない、というものである。

例えば豚の精肉ならば、ロインで入れたものは、いくつもの種類の切り身のポーションカットにしたものを販売する。重量で、80.100.120.150.200グラムと言ったもの、これに脂肪をある程度付けたもの、逆に脂肪を外した「ヘルシーカット」といった切り身にして持っていく。スペック(規格)は顧客の求めに応じて対応する。さらに味付けまでして後はレストラン店舗の厨房で加熱するだけ、といったところまで対応する。

これらの製品は営業者が店舗で得た情報から提案したりする。結着をした低価格ステーキ、バラ肉を巻いたもので店舗でスライスをすると簡単にカルビ用の切り身になるもの、食感のいいハンバーグ、高級ステーキハウス用の和牛のポーションカット、等、全て付加価値を付けたものである。仕入れた原材料をそのまま顧客のところに持っていこうとしても価格競争になるので最初からやらず、何らかの手を加えた製品にして持っていくのである。手の加え方、アイデアは、顧客との直接コミュニケーションから出て来るわけだから、売れる要素は最初からあるのである。

この企業ではもう一つユニークなことを行なっている、顧客を毎月集めた商品開発研究会だ。ここで開発中やアイデアが出た商品をメニューにまで調理をして試食をしてもらったり、専門家を呼んでフードサービス業界の情報を講演してもらったりする。試食メニューは売れそうなものだけではなく、奇抜なアイデアのものなどでも構わず提案する。売れそうでないものでもそこから何らかの反応が出てくればそれが新しい製品のアイデアに結びつくからである。ここに集まるのは販売先のシェフやトップで、チェーン店にしても数十店舗程度の中堅から小型のところが多い。このような勉強会に出て来るわけだから研究心は旺盛で、こういった会に集まってきてくれるところを顧客の持っていること自体が商売としていいことになっているのである。こういった販売体制は、中小企業だから出来ることでもある。販売先も大手のチェーンはいっさい関係せず、中小フードサービスを行う。場所も店舗の集中している東京中心部に「ピンポイント」セールスをしているのである。

ある鹿児島の黒豚生産者は、東京のハイグレードスーパーにダイレクトに精肉を供給している。このスーパーは一般的なスーパーとは違って、体にいい食品を扱うというコンセプトがあり、カップラーメンはいっさい置いていないという店舗になっている、6店舗ほど東京の多摩地区に出店しているが、このコンセプトにあった豚肉は2種類あり、一つは特別な飼料を使ったSPFポークである。この飼料には木酢液やハーブカスなど、肉をハイグレードにするもので、品質的に数値で良さが出ているものである。そしてもう一つが鹿児島黒豚である。鹿児島黒豚は100%でなければならないとなったがもちろんこれに合格したものだ。

6店舗分だとたいした量にはならないが、このスーパーでは良品質、本物を置く主義なので、長い間つきあって来たこのサプライヤーに入れてもらっている。このような少量だと物流が問題になることが多い。ここでは以前は混載便で送ってきたのだが、これだと何度か温度管理上の問題点が出て、調べてみたら鹿児島から東京に来るまでの途中の積み替え地点で問題があるとわかった。それならば一般の貨物便に頼らずに、直接配送してもらおうと、宅配便に変えた。多少は割高になるが、品質が安定するのでこのほうが良い。

フードサービスや小売業では、サプライヤーとダイレクトに付き合うと面倒くさいというところなのか、多くを問屋まかせにし、その問屋の営業にいろいろなことを依頼してしまうところがある。こういったところにダイレクトの話をもって行っても無駄になるから最初からつきあわないほうが良い。それよりも、積極的に良いものを扱いたいところを根気よく探して、長く強いダイレクト関係を築いたほうが良い、特にハイグレードポークを扱っているならばそうだ。


鶏卵肉情報センター「養豚情報」2000/5より
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