大手ハム、ソーセージメーカーからも高品質加工品。「特定JASとは」

2013/05/25 16:54 に 松本リサ が投稿
農水省はハム・ソーセージについて、日本農林規格(JAS)の中で、さらに特定JASという高品質の規格を設けている。特定JASは、「熟成」、「地鶏」、「有機農産物」など、特別な作り方をした食品について一定の規格を設け、それに適合した商品に特定JASの表示を認めて、消費者が購入する際の目安にしてもらうことを目的に制定された。従来の表示だと、あいまいで、ネーミングだけで美味しさをイメージさせる実態の無い商品が出回ってしまっていたが、それを是正し、規格化したもので、消費者の混乱を避けるために有効な制度になる。

従来のJASは成分や原材料などの品質保証基準だが、特定JASは製造方法の基準になる。最初に規格が決められたのが、ハム、ソーセージなどの食肉加工食品の「熟成」という表示についてである。原料肉を塩漬けする熟成期間がソーセージの場合3日以上、ベーコンは5日以上、ハムは7日以上で認定する。熟成を一日で済ませる既存商品に比べ、肉のうまみをより引き出せることになる。

認定の第一号になったのは丸大ハムの「燻製(くんせい)屋」シリーズで、5月から発売。これは「二段仕込み」という製法で、一度低温で熟成させたあと、温度を上げてもう一度熟成させるもの。発売後の売り行きは非常に順調だということである。日本ハムも「味の妙」シリーズとして6月から発売をした。今まで販売をしてきた「本格派熟成」と「吟王(ぎんおう)」シリーズを、特定JAS認定に変更した。相模ハムも8月に「凛麗(りんれい)」シリーズを発売開始。伊藤ハムも、9月から今までの「芳醇(ほうじゅん)」シリーズを特定JAS商品にして販売する。

これらの製品は、新しい基準に合わせてハイグレードにしたということだけではなく、価格をそれほど上げていない点も特徴である。バブルの時代は高いほど売れたという乱暴な時代だったが、低価格競争を経たあとは、いいものを、値ごろの価格で、というごく当たり前の顧客ニーズに各メーカーとも対応している。

特定JAS商品として、次のステップでは「地鶏」が検討されているが、地鶏の定義があいまいなためになかなか進んでいないのが現状のようである。

一方プリマハムでは、昔から高品質豚肉として定評のある黒豚を使ったウインナーを販売してきており、よく売れている。これは「黒豚 あらびきウインナー」で、昨年4月に発売したもの。その黒豚を原料として高級感を出す手法は、マーケティングとしては正解だ。今年からはハム、ベーコンを加えた「黒豚シリーズ」として展開していく。

ところで「黒豚」の表示については、何パーセントが黒豚の血か、という問題がある。100%黒豚などは価格的にも、生産量的にも製品として成り立たないが、数パーセント入っていても黒豚と表現していいのか?何パーセントから黒豚といえるのか?といった疑問がいつもある。しかし、「黒豚」に対する顧客イメージはよく、多くの小売店でも使っているのが現状である。

別の例だが、ワインでは、5%以上入っていれば、そのブドウの産地を使ってもいいことになっているという。例えば、低価格の輸入ワインに5%のその地方のブドウを入れたら「(地方名)産ワイン」となってしまうそうだ。輸入ワインは、特恵国であるブルガリアから入れれば輸入関税が大幅になくなり、タンカーのような大きなバルク状態で入れれば相当低価格になる。それに5%の地場産を入れればいいという。こんなものも大きな問題である。

日本ハムでは、着色料、保存料を使わないあらびき仕上げの生ウインナー「アンティエ」を昨年3月から販売している。訴えとしては、美味しい無添加ということで、無添加は健康志向でいいけれど美味しくない、という顧客の不満に対応したという。



このように、大手加工肉メーカーでは、高品質やこだわりを持った製品を昨年あたりから強化し始めてきており、イメージ的には「手作り」の分野に進出してきている。特定JAS商品は「高品質」ということで、「手作り」ということではない、しかし、顧客のイメージにおいては、「高品質」も「手作り」も、同じイメージを感じるだろう。ともに「プレミアム」になる。

プレミアムというのは、「付加価値」ということであり、いくつかのタイプがある。まず、原料が高級あるいは高品質なものである。黒豚、和牛、地鶏、といった基本的な素材のハイグレードや、鶏肉の「75日飼育」「百日鶏」などの飼育におけるハイグレード、宮崎和牛、リンゴで育った長野牛など、産地を表示したもの、等がある。次には、農産物の無農薬、加工食品の無添加、ブロイラーの休薬期間の増大、牛のノンホルモン、豚のSPF、等の安全性を出したもの。また、有名なシェフや職人などの調理技術が入ったもの等もある。

ところで、今まで手作りハムソーセージの分野は、小規模の豚肉加工品メーカーの独自のもので、小規模だからこそ出来る、という消費者のイメージがあった。こういった中で、大手のハム、ソーセージの最近のこだわり製品と、手作り品との違いは、原料の違い、安全性の打ち出し、更に調理技術の3つのものが一所に入っている点が、手作りの負けないところだ。更にプレミアムの一つとしての「少量生産」も加えることが出来る。



「少量生産」「限定生産」というプレミアムは「品切れ」というものが出て来る。普通品切れは量販店でもフードサービスでもタブーで、絶対にあってはならないものである。企業によっては品切れをさせると、販売機会ロスを作ったということでペナルティを要求するところまである。しかし、手作り加工品についてはこの品切れも特徴の一つとして、あるいは販売促進として利用することまで出来る。

いくつかの手作り加工品を販売しているところで実行していることだが、一日に販売する量をある程度決めておいて、それが夕方早めにでも品切れになった場合、普通は隣りに販売してある他の商品を空いたスペースに移動して、売り場を常に一杯にしておく。この方法は量販店として当然のことで、1センチの売り場のスキも作らないで、販売効率を上げる一般的な方法である。しかし、一部の手作り加工品などについてだけは、この方式を当てはめないことがある。

それは、例えば手作りハムのスライスを販売していて、それが夕方にでも品切れになった場合、その商品だけに限って空いたスペースに「本日の手作りハムは品切れです」というスタンドを置く。ここのスペースだけは商品が切れたまま空白にしておくのである。欲しい場合には翌日に買うしかない。もし在庫があった場合でも、閉店前1時間前以前にわざわざ品切れにしてしまう、品切れを演出するのである。

こうすると、早く行かないと無くなってしまうということになり、商品の鮮度が上がるようになる。これを続けていくと、商品が本当にいい場合には、次第に販売量が増えてくる。最初一日1本のハムを切っていたのが、1本半になり、2本になっていく。しかし、そうなってきても、絶対に無理に陳列しないで、自然に増える量に合わせていく。そして、無理無く、適当な時間に必ず品切れになるように見極めて出すようにするのである。万一天候の関係などで閉店まで残ってしまうような場合は、閉店直前に引っ込めてしまう。

こういった販売方法によって、手作り商品を拡販していくのである。この方法は一般の商品では出来ない、手作り製品だけが出来るものである。顧客心理を利用した方法になり、見方によっては正直でないので批判があるかもしれないが、これによって、拡販と同時に、いつも鮮度のいい手作り製品を販売することが出来るようになるのだから、結果的には正解である。この方式は、量販店、小売店の感覚ではなかなか思い付かないし、聞いてもどうしても実行できないことが多い。そのような場合は、メーカーの方から逆に提案したほうがいい。

更にこの方法を進めると、メーカー側が販売店の在庫を常に知り、余分な発注を防止する方法も出来る。毎日1キロを販売している店が、突然3キロになったりした場合は、何かの間違いではないか、発注のしすぎではないか、という問いをメーカーから販売店にするのである。この結果、無理にもっと売ろうとしていたり、間違えているのが発見されたりして、商品の鮮度が古くなるのを事前に防ぐことも出来る。いわば鮮度重視の在庫コントロールをメーカー側が注意することになる。こんなことができるのは、手作り製品販売の大きな特徴になる。

鶏卵肉情報センター「養豚情報」96/10月号より
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