C=クッキング・テンプラチャー

2013/05/24 1:44 に 松本リサ が投稿
ローストをするのに、歩留りが良いのは、120℃ぐらいの温度で、これは昔からのコンベクションオーブンで調理する際の一般的な温度、約180℃と比べてかなり低温である。しかし、最初から120℃で焼き出すと、それほど歩留り良くはない。低温で焼き出すと、肉の表面がかたまっていないまま調理が進み、肉汁が出ていってしまうからである。肉汁は歩留まりを悪くするだけでなく、美味しさでもある。重量が減り、味も悪くなるというロクでもないことになる。どうしたら良いかというと、最初に強火で表面を焼けばよい。
ブロック肉の表面や、ステーキなどの切り身肉の表面を焼くと、肉の表面がかたまり、中の肉汁を閉じこめるのである。塩を焼く直前にかけるが、これは表面を固める役割をさらに助ける。表面を焼くには高温でなければならない。

オーブンだけでこれをするためには、焼き始めの温度を180℃かこれ以上にして、表面を焦がしたあと、オーブンの温度を120℃に落として、ゆっくりと焼いていけばよい。焼く時間は、ブロック肉の太さ、表面から肉の中心までの距離と、肉の初期温度によって決まってくる。初期温度とは、冷凍の肉を焼くか、チルドの肉を焼くかといった違いである。

冷凍の肉をローストする場合、解凍して焼くよりも、凍結状態のまま表面を焼き、その後120℃でローストしたほうが歩留りが良い。解凍しただけで歩留りが落ちるからである。

オーブンの温度を120℃に保ったまま、表面を焼いて固めたブロック肉を入れる場合、旧式ナチュラルにやるには炭火でパリッと焼く。炭火の温度は900℃でかなりの高温だが、太陽の輻射熱と一緒で、遠火の強火になるので、均一に焼くことが出来る。炭火など今では難しいので、普通はバーナーで焦がす。大量にやるには道路工事用のバーナーが良いが、少量ならば、小型ボンベに入ったバーナーを使えばよい。鰹のたたきのように、ワラで焦がすという風流な方法もある。もっとも、ワラが手に入れにくい時代ではあるが。一般的な厨房で誰でも出来るのは、フライパンで焦がしたり、グリルの直火で焦がしたりする。

いずれにしろ、この方法なら、牛肉の大きなブロックならば95%以上の歩留りに仕上げることが出来る。高温のコンベクションオーブンで下手に焼いたら70%程度になってしまうこともあるので、この差は大きい、重量も味も25%も違ってしまうのである。最近はスチームコンベクションオーブンが入っている厨房や工場も多いので、この場合、コンベクションとスチームのパワーバランスを、例えば半々にしたりして、スチーム調理をある程度入れることでも歩留りよく調理することが出来る。


煮る場合、ぐらぐらと煮続けてしまうと、肉や野菜が煮崩れてしまうので、最初に煮立ったあと火を弱めて、煮立たない状態で時間をかけると、澄んだスープになり、中身も煮崩れない。筋の多い低価格のブロック肉を調理する方法に「ブレージング」という方法がある。これは「蒸し煮」と訳せるだろうが、深めのフライパンか浅めの鍋で、ブロック肉の表面を焼き焦がし、その後スープを入れる。牛肉のブリスケット(胸肉)などの場合、トマトジュースを入れる方法もある。そして屑野菜や香辛料をたっぷりと入れたあと、95℃程度に煮立たせないように時間をかけるのがブレージングだ。こうすると、肉が崩れないまま箸で切れるぐらいまで軟らかくすることが出来る。仕上げに醤油をちょっと使うと受ける。ブレージングよりもスープが多い調理を「ポットロースト」と呼ぶが、この温度も95℃程度になる。

煮立たせてわざわざスープを濁らす、世界的にも珍しい調理が九州の豚骨スープだ。逆に80℃程度の湯で肉をゆっくりと低温加熱殺菌するのがハムやソーセージの古来からの作り方になる。この場合、中心温度を、63℃で30分維持させるのが国際規準である。これが最低加熱で、これジャストか、ちょっと高めか多い目で止めるのが美味しく作る技術である。高くなればなるほど歩留りは悪くなり、硬くなり、味も落ちるのは、焼くローストと同じである。


揚げる場合、油の温度が重要になる。天ぷらや豚カツなどを揚げるための油の温度は180℃といわれているが、この温度は油が燃えない安全な温度でこういわれてきているのだが、最近の油はさらに高温でも燃えないものがほとんどになってきているようで、200℃程度でもよい。油によって違うので、この温度は安全のためにメーカーに確認して欲しいのだが、例えば天ぷらなどの小さな食材を揚げるには、高温の油で揚げるとパリッと仕上げることが出来る。

豚カツでは、厚切りの豚カツは美味く調理すると美味しいのだが、下手をすると硬くなって最悪になる。だから分厚いのに軟らかくジューシーな豚カツは名人でないと出来ないと言われる。分厚い豚カツを揚げるには、二度揚げをする方法がある。最初に低温の油、例えば160℃といった油でゆっくりと肉の中に火が通るように、いわば油によるローストをし、いったん上げて少し休ませてから、仕上げに高温の油、例えば190℃で揚げて表面の衣をパリッとさせる、というやり方である。

この考え方を別の形でやると、素人でも厚切りの軟らかい豚カツが出来る。まず、ブロック肉のままローストポークにする。中心温度を75℃に調理をする。こうするとこのまま切り身にすれば軟らかくジューシーなローストポークで食べることが出来る。この出来上がったローストポークを切り身にし、衣を付けて表面だけを190〜200℃の高温の油で揚げればいい。厚さ5センチでも10センチでもオーケー。

ビールのおいしい温度は6℃、白ワインは10℃、赤ワインのフルボディの重い高級なのは20℃、赤ワインのライトな物は12℃、おいしい豆腐の味を味わうには15℃の高目がよい、しかしおいしくない豆腐は5℃によく冷やして味が出てこないうちに飲み込んでしまったほうがよい(もっとも食べないのが一番だが)。どうせなら美味しい温度で味わいましょう。

調理温度は経済性と美味しさの両方を決める。プロは、中心温度計と、表面温度計の二種類の温度計を持っていなければならない。
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