初物新物マーケット

2013/05/23 18:22 に 松本リサ が投稿
毎年11月の第三木曜日はボージョレーヌーボーの解禁でにぎわう。

午前零時に成田空港の近くの公園で栓を抜くなど、何だかわからないイベントも聞いたことがある。

ボージョレーヌーボーというのは、その年取れたブドウで作った新酒なのだが、そのブドウはどれほどのワインになるか、早く飲んで、確かめたいというのもあるし、もともとは新しいブドウで作ったワインを早く飲めるように加工して、独自の新酒ブランドとして販売しよう、というところから始まった。

ということは、普通のワインの作り方とは違うのである。だから、よく勘違いしている人がいるが、ボージョレーヌーボーを何年もとっておいたら美味しくなるかというとそうではなく、逆に早く飲むワインとして特別に製造しているので、早く飲まないと味は落ちていってしまうことになる。

初物好き用に製造したワインが、一つのブランドとして売れるようになり、巨大なマーケットになってきたわけだ。

ボージョレーヌーボーの輸入量ナンバーワンの国は日本だそうだ。初物好きの国民だということになる。

 

二三日前、日本酒の新酒製造の取材をテレビで見た。新米が出て、それを使って杜氏が新酒を仕込んでいるところだ。新米で作った新酒、初物好き向けのマーケットだ。

ビールは搾りたてがおいしいから、ビール工場で出来立てのビールを出すレストランを開いて昔成功したのが札幌のビール園だ。そのビールで、最初に絞ったということで製品化し、ネーミングも含めてヒットしたのが「一番絞り」

 

先日(11月の二週目)、松江に行ったとき、今年の松葉蟹の発競りはいつかと聞いたら、三日前だったという。初競りだと、ご祝儀相場が出たりして、高値になることが多いが、三日目なら相場も落ち着いたろうと、早速いつもの料理屋に行ったら、ありつくことが出来た。

何も初物だから特別美味しいかというとそんなことはないわけで、要するに初物を食べたい、というだけのことだ。しかし、初競りがあったということだけで、松葉蟹のマーケットは一気に出て来ることになる。

先月末には長野に行った。野尻湖畔に住んでいるおばあちゃんに「新蕎麦が出たら手打ちするからおいで」ということで、新蕎麦を食べに行った。新蕎麦というの新しいほど香りが良い。取れ立て、ひき立て、打ち立て、茹で立ての蕎麦は実においしかった。これは単に初物好きだけではなく、一番美味しい時に食べようという科学的な理由も加わる。

 

フランスでは冬になると美味しい物好きはソワソワしてくる。ジビエの時季になってくるからだ。

ジビエというのは野生の動物や鳥類を冬の間だけ捕っても良い時季のご馳走だ。

鴨、雉、ウズラ、うさぎ、鹿、イノシシなど、漁師が森や山で捕ってきた肉が町のレストランに運ばれ、料理される。冬の間だけの楽しみだ。普段は禁猟。

ジビエは肉によって扱い方が違う。例えば鴨は狩猟してから羽根が付いたまま冷蔵庫で一週間から十日間ほど置かれる、熟成されるのだ。レストランのシェフが熟成の具合を臭いをかいでみて、これは二日後に料理すると最高だ、と判断をする。そうすると美味しい物好きの顧客の仮予約をもらっているので、鴨を食べたいという顧客に「明後日、あるいはその翌日あたりが最高ですよ」と連絡をするわけだ。

イノシシにしろ、鹿にしろ、それぞれの熟成期間がある程度必要なので、肉が市場に入って来たときから大体の食べられる時季がわかる。

パリの郊外、オルリー空港の近くに、巨大な食品と花きの卸売市場、ランジスがある。肉、魚、青果、加工品、そして花を、パリだけでなく周辺都市、あるいは隣の国からも買いに来る。

レストランのシェフは冬になるとジビエ類が入って来る建物に集まる。この施設はポートリー(鳥類)のマーケット施設なのだが、ジビエも一緒に扱っている。

著者が12月のクリスマス前に行ったら、鹿、鴨、雉、イノシシなどが並び、レストランのシェフ達が物色していた。初物と同時に、時季限定のマーケットになる。

 

日本で、コンニャク芋が出来上がるのはたしか十月頃だと思った。多摩にあるコンニャク工場に行ったとき、ちょうど新しいコンニャクの収穫をしたばかりなので、それを使って造ったコンニャクはおいしいからともらってきた。

帰って食べたら確かに美味しい。特に刺し身コンニャクにすると素直に美味しさ、香り、食感の違いが良くわかる。

コンニャク工場の社長に「この初物で作ったコンニャクは特別に売るなり季節限定の製品などにしているのか?」と聞いたら、そんなことは考えてもいなかったという。

では、取れ立てのコンニャク芋はどうするのかと聞いたら「生の状態で使えるものは使って、あとは全て冷凍にして、一年分の原材料として保管する」といっていた。

そこで一言アイデアを言った「それなら、取れ立てコンニャクの製品だけ特別に造って、限定品として売ったらどうか。この季節にしか食べられないものだということで」

そうすると、この時季に爆発的に新物コンニャクが売れて、販売促進に多いに貢献するのではないか。毎年のイベントとして効果があるのではないか。土用の丑の日みたいなものだ。といったが、果たしてその後どうしているのか。こんな良い企画が出来るのに、もったいない。

さて、あなたの製品で、初物、新物のマーケットはないでしょうか?
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