ブランド、美味しさ、検査、コスト

2013/05/24 0:43 に 松本リサ が投稿
食材の出所を明らかにすることで、信用につなげることが出来る。農家名や、産地名の明示と、その表示が信用できるかどうかが分かるシステムによって、固定客も確保できることになる。固定客に対して親切に対処し、慎重に管理するマーケティングが重要になってきており、これを「データベースマーケティング」と呼ぶ。このための重要なことの1つにブランドがある。食肉では銘柄の牛豚鶏がここ十年ほどで急速に増えているが、ブランド名の付け方にはどこも苦心をしている。

シンプルで、そのブランドを見ると、安心する、信用できるのがブランドの良点だ。一方で、雪印の例で分かる通り、いったん信用を無くすと、そのブランドを見るだけで汚点を発想するようになる。ブランドイメージは、そのブランドの付いたすべての商品の信用を表現するもので、いたってシンプルだ。

このシンプルという点がブランドの怖いところであり、シンプルであればあるほどそのイメージは強力なものになる。ブランドが複雑でマーケティングに苦労した例がいくつか語られている。1つは松下グループで、ナショナルブランドにパナソニックがあり、本体の松下ブランドと絡まって、ブランドイメージが散乱し、特に国際戦略がうまくいかずに苦労をしたという。ブランド数を拡大しすぎてイメージを強調できなかったわけである。ゴーンさんが劇的な再建を果たした日産も、海外で定着をしたダットサンブランドを途中で変更したために、うまくいかなくなったという、ダットサンというブランドがニッサンと同じだということを知っている米国を中心とした海外マーケットの消費者、ユーザーなどほとんどいなかったのである。

これとは反対に、ホンダ、ソニーといったブランドは、世界統一で、地球上どこに行っても通じる、大体SONY,HONDAが日本だなんて知らない消費者はいくらでもいる、SONYは米国のものだと思っている米国人なんていくらでもいるのだ。ブランドばかりではない、国名や都市名も同じような面があり、あるときシカゴでタクシーに乗ったら運転手が「どこから来たんだ?」と聞くので「東京」と答えたら、「TOKYOとJAPANは、どれぐらい離れているのか?」と聞いてきた、都市も国も分からないのだ、しかし誰でも知っている。日本のあるプランナーが米国で急速に拡大しているあるフランチャイズシステムを日本に持ち込もうと米国の社長のところに行き、日本に店を展開しないかと言ったらその社長は「JAPANはどこにあるんだ?」というので世界地図の中の日本を見せたら「そんな小さな国なのか」とがっかりした、そこでプランナーは「この小さなところに1億人以上の人間が住んでいる」といったら途端に目が輝いた、広大な土地に人々が住んでいる米国よりも人口密度がケタ違いに濃いので商売の効率が良いと判断したわけである。


ブランド名を考える際のポイントはいくつかある、まず、内容が明確に分かるかだ。肉なのか野菜なのか、産地名なのか人の名前なのか、食べ物なのかそうでないのか、今もあるのかどうか分からないが「リンゴで育った信州牛」というのがあったが、これなどは明確に分かるものだ。店舗でのブランドとしてパッケージに付ける名前があり、良くある例だが「USチルドビーフ」となっているのだが、実は消費者はこの名前は何なのか分からない人が多いのである。売る側としては米国のチルドビーフだからと付けたのであるが、消費者はUSが米国と直ぐにつながらない人が多い、アルファベットだと直ぐに拒否反応をする人も多いのである。次にチルドはもっと分からない。売り側としては冷蔵庫のチルド室というのが普及しているから分かるだろうと考えるのかもしれないが、冷蔵庫と売り場に並べている肉は直ぐにつながらないのである。ビーフは牛肉と理解するだろうが、全部つなげてUSチルドビーフとなると、何だか分からなくなってしまう、一応牛肉のようだとは分かっても、正確に理解せず、何となく分からないものは買わないという反射行動につながってしまうのである。そんなに分からない人はほとんどいないよと思う人が多いと思うが、実はそうではないのだ。

次に1つに絞り込むことである、統一してメッセージを強力に伝えるのである。良くあるのは、産地名を入れたブランドを作り、しばらく進めてきたのだが、その産地で生産するグレードがいろいろ出て来て、より高品質の製品がある程度出荷されるようになるとその生産者が今までのブランドに加えてその高品質ブランドとして二次ブランド名を作り出すことがある、他のものと同じブランドとして扱われるのは迷惑だとばかりに。さらに今度はヘルシー性を入れた製品が開発され、又新たなそのヘルシーイメージを名前に組み込んだ副ブランド名が出て来る、といった良くある例だ。

次に誰でも読めることである。札幌の生協は以前は「市民生協」だったのだが、都市名が入っていないので正式な名前でやるとどこの生協だか分からないということがあったのかどうか知らないが、愛称、通称として「コープさっぽろ」が現在使われている。この場合漢字の「札幌」は読めない人が出て来ているために平仮名にしたのか分からないのだが、平仮名の方が親しみがあり、子供や札幌以外の人が読めるという点で良いだろう。同じように「いわて生活協同組合」等がある。一方で地域でしか使わないブランドならば、逆に地域名を入れないで、品質や安全性をいきなりブランド名として使う手法もある。

九州鹿児島の生産物のブランド名を付けるとき慎重になったのは「薩摩」を鹿児島の生産者の皆さんは使いたいというのだが、ところが東京の若い人で「さつま」と読める人が年々減ってきているのと、読めてもそれが九州鹿児島だと分かる人も減ってきているのである。鳥取と島根はどちらが地図の左右になっているのかが分からない人はかなりのものだ。その地域の人には申し訳ないのだが、これは事実なのである。「讃岐うどん」では読めなくて「さぬきうどん」なら分かる、このブランドは定着しているが、四国だと分かっている人は年々減ってきているのである。そんなバカなと思う人は多いかも知れないが、試しに東京に来て特に若い人に何人か聞いてみたら良い、がく然とするだろうが、事実なのである。

次は、好感が持てるかである。「牛肉一番」などというブランドを付けたら「生意気な」となるし、第一他の牛肉すべての反感を買うことになる。ところが、まだ使っているのかどうか分からないが、ブランドの下に「二番目に美味しい」と書いてある中華レストランがあって、何故二番目なのかが何も書いていない。そこでそのレストランに行って一番はなんだと聞いたら「ご自宅の味です」といわれた。好感が持てるメッセージなのである、粋なのである。

ブランドでもメッセージでもコピーでもファッションでもあらゆるもののデザインを「カッコイイ」といわれるといやな気はしないが何となく薄っぺらなことを言われたように思うだろう、何故かと言うと「カッコイイ」には単なる見た目だけのことしかないからである、したがって中身がアホでも「カッコイイ」は使われる。ではもっと良いものは何かとなる。「カッコイイ」に「知性」を加えるとどうなるか、これを「スマート」と呼ぶのである、良い言葉でしょう。ブランドには「知性」があると良い、スマートなブランド名を考えてみませんか。

鶏卵肉情報 2002年2月号より
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