ボーダーシャッフル

2013/05/23 18:29 に 松本リサ が投稿
ボーダーは国境、シャッフルは混ぜ合わすことで、カクテルを造るときにシャカシャカ混ぜるのをシャッフル、あるいはヒットしているアップルの超小型音楽再生機「アイポッド・シャッフル」は、メモリーに入っている曲を順不同に再生する。シャッフルは流行語にもなっている。ボーダーシャッフルは、訳せば「国境ぐちゃぐちゃ状態」とでも言おうか。

シアトルの東の郊外、レッドモンドで「TODAI」という流行っている日本食レストランがあるというので行ってみた。普通の焼き鳥天ぷらウドンといったのを想像していたのだが、行ってみたら何と200席近くはあるだろうか、体育館半分といった広さの店で、並んでいるではないか。一人22ドルでバイキング形式の食べ放題。誕生日の人はタダ。飲み物はもちろん別だがワインも結構充実している。

レッドモンドという地域は、お金のある程度ある人が住む地区で(大金持ちまで行かないが)、日本人はあまり多くはない。客を見てみると、白人が半分、韓国、中国、タイなどのアジア系が半分といった所で、その中に中南米系らしき人がちらほら。子供連れもかなりいる。日本人らしいのは見当たらない。この巨大な日本食レストランに日本人はどうも我々だけのようだ。

そして後で聞いて分かったのだが、ここはメキシコ人が経営しているのだ。シアトルの郊外の町に、メキシコ人の経営する巨大な繁盛日本食レストランがあり、客は白人と日本人以外のアジア系、という実に不可思議な店なのである。

メニューも実に豊富、刺し身、寿司、巻物、天ぷら、煮物、焼き鳥、かまぼこ類、麺類など、アイテムも多く、それに牛肉と野菜の煮込みなど、和洋ミックス料理もかなり充実。あわせてデザート類、ケーキ、アイスクリームもしっかりとある。

広大なバイキングカウンター内では、キリッと白衣を着た東南アジア系、中南米系の従業員がきびきびと働いている。なかなか教育もしっかりしているようだ。何かプライドをもって仕事をしているといった職場雰囲気もかもし出されている。顧客サービスの女性スタッフは白人と中米系のスラッとした美形が多く、サービスの状況を見ると頭もよさそう。

味の方は、とても良い、とまでは行かないが、まあまあ食べられる上のクラスのレベルで、シアトルの郊外都市で久しぶりに日本食に出会った状況では嬉しい。

ワインを数杯おかわりして、仕上げに入った。奥の方にある麺類コーナーに行ったら、しゃぶしゃぶうどんと天ぷらうどんがある。意地汚く迷った末、天ぷらうどんにしたら、直径十センチのリングネックレスを付けた目元ぱっちりメキシコ美女がニッコリ笑って英語でサンキューとうどんを出してくれる。一体ここはどこなんだか分からなくなってくる。なんとも不思議な気分なのだ。ボーダーシャッフルだ。

 

私の好きなイタリア料理店「ちょっとローマ 03-3453-7408」が田町にあり、とても美味しいのに、価格はそれほどでもない。私がよく行くイタリアンの中では、価格と食材のバランスで、最高レベルの店だ。

この店の特徴は、食材が高品質の寿司レベルの魚を使っていることと、日本でどうしてこんなのあるのだろうと考えてしまうような素晴らしい肉があることである。

数年前から通っているが、あるとき「今日はホタルイカのパスタ」があるという。ホタルイカというのは相当鮮度が良くないと駄目だし、第一あの小さな目玉が口に残るところもいやで、嫌いなもののほとんど無い私にしては積極的に食べないものである。ところがこの店なので、だまされたと思って持って来てもらったら、こんな美味しいホタルイカってあるのだろうか、いや、今まで食べたのがまともじゃなかったのだ、しかし今食べているホタルイカは特別の中の特別だとしたら、ホタルイカはこの店でしか食べられないではないか、といった思考が錯綜した。おまけに私は目玉のことを言ってはいないのに、外して料理しているのである。

このホタルイカを最初に食べたのは大体五年ほど前だと思うが、先日行ったら「以前食べられたホタルイカのパスタがありますが、どうしますか?」という。数年前からの私の食べたのだけではなく、飲んだワインも実はこのシェフは覚えているのだ。多分覚えようとしているのではなく、自然に頭に入ってしまっているのだろう。すごいことだ。もちろん再びあのホタルイカに出会ったのである。

また、別のときにびっくりしたのは「メヒカリのフリッタ」だ。メヒカリというのは15センチぐらいのきゃしゃなイメージの魚で、目が光るのでこう呼ばれている。これも鮮度が命の魚だ。フリッタというのは、薄く衣を付けて天ぷらのように揚げる料理。これにイタリアンフレーバーのソースがかかっている。感動物のメヒカリイタリア風フリッタなのであった。あるいはある秋の日に出て来たのはマツタケのリゾット、春の日に出て来たのは初カツオのカルパッチョ、と、和風食材とイタリアンのシャッフル。

別の日に、肉料理でラムのスペアリブだという。日本にはラムはラックと言って骨付きのロース肉がほとんどで、この部位の腹側になる骨付きバラになるスペアリブは、オーストラリア、ニュージーランドではポピュラーなのだが、日本では見たことが無い。わくわくしていたところに持って来たのは、スペアリブと言っても、これはその中でも最も珍重貴重なミルクラムのスペアリブなのである。軟らかく、香高く、上品な美味しさだ。

生後一年未満の羊をラムというのだが、ミルクラムというのは、ベビーラムともいい、三ヶ月程度のまだミルクを飲んでいるラムをミルクラムという。どうしてそんな小さなのを屠畜するのかについては知らないが、魅力的食材なのだ。オセアニアの食材を、イタリア料理で、日本で食べる。

またまた別の日にまたラムだというのだが、聞いてみるとラムの心臓と肝臓だという。これもまた鮮度が命のもので、ヨーロッパやオセアニアではやはりポピュラーなのだが、日本では見たこと無い。もちろん美味しさ抜群。

京都先斗町の「河繁」のことは以前書いたが、京都で、京料理と一緒に、タンシチュー、カレーライス、巨大豚カツも、ボーダーシャッフルみたいなものだ。

あなたのビジネスを、ボーダーシャッフルセンスで発想したらどうなるでしょうか?
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