食のマーケティング

生ハム

2013/05/25 17:10 に 松本リサ が投稿

最近になって、生ハムが売れてきている。

元々生ハムは、日本のマーケットでは、一部のレストランメニューぐらいしか受け入れられなかった食材である。しかし、数年前に、いくつかの加工肉メーカーから、小売店用の商品が出て来たおかげで、少しずつ外食に浸透はして来ていた。しかし、価格がキロ1万円もするものだったので、高級品としてしか扱われなかった。しかしながら、昨年あたりから低価格タイプが生産されるようになってきたために、急速に一般マーケットに浸透してきている。

元々高級な生ハムでは、骨付きモモ肉に、何度も塩をこすり付け、半年から1年もの間熟成をさせて作る。そのために、コストがかなりかかることになる。人手もかかるし、熟成期間のメンテナンス、バクテリアを入れないための設備費用が大変なのである。しかし、低価格の生ハムの場合は、一般的なハムを作るように、肉に塩水を注入(インジェクション)して、一気に味を付ける。更に、熟成期間も、1週間から2週間ぐらい、長いものでも1月という短期間で仕上げる。味付けも、熟成期間も、コストダウンをしているのである。

生ハムを使ったメニューで「古典」は、メロンの上にのせたオードブルだろう。メロンの切り身の上に、スライスをした生ハムを乗せただけのものだが、生ハムメニューの定番とされている。しかし、価格がヨーロッパ並みになってきたので、このような高価格タイプのメニューだけではなく、もっと一般的なメニューに使えるようになってきた。サンドイッチや、サラダなどである。こういったメニューならば、デリ、惣菜向けにも十分使える。

生ハムのスライスの厚さは、薄ければ薄いほどいいと考えられている。しかし、余りにも薄すぎると、肉その物の味が無くなってしまう。また、スライスの方法も難しいし、スライスした後の扱い方も、薄すぎると難しい。生ハムを長年扱ってきている技術者に聞くと、最適な厚さは0.7ミリだということである。この厚さならば、生ハムの美味しさがあるし、扱いやすいし、少し温度管理をしっかりとすれば、それほど難しくなくスライスが出来る。スライスをする場合には、ブロック肉を半冷凍をした状態で行うと上手くいく。

生ハムにする豚肉の部位は、骨付きのモモが一般的である。しかし、デリ、惣菜に使うには、骨付きモモでは扱いにくいし、量的にも1本丸ごとはなかなか使えない。そこで、最近の低価格生ハムは、ロース、肩ロース、それにバラも使って作っている。このような部位を使うことによって、使い安い量を業務用として流通させることが出来る。バラを使ったものは、サラダ、サンドイッチに気軽に使える。豚肉だけではない。牛肉のロースや肩ロースを使ったもの。合鴨を使ったものなどもある。

原料のタイプとしては、ブロックと、スライスパックがある。もちろんブロックの方が絶対的に安く手に入るので、スライスを店で出来るならばそのほうがいい。しかし、一般的には、設備と、人手の問題で、スライスパックを買うことになるだろう。スライスパックならば、小売り用のスライスパックと同じように、きれいにスライスしたものが並んで真空パックされているので、扱いやすい。ロスも出さないで使える。

サンドイッチはヘルシー嗜好と簡便志向で売れてきている。そんな中で特徴を持たせるためには、パンにこだわるか、メニューにこだわるかになる。生ハムでは、メニューと食材にこだわることになる。更に、高品質なパンを使うことで、大きな特徴を出すことが出来る。短期間に作った生ハムでも、サンドイッチに使うならば十分にその味を活かせる。

サンドイッチに入れる加工肉類としては、ローストビーフが最近流行っている。高級品だったローストビーフが、原料の牛肉が安くなったのと、調理方法がよくなってきたために、低価格になったからである。牛肉原料としては、パストラミや、関税の安いコーンドビーフも使いだされている。これに生ハムが加われば、サンドイッチメニューに更に広がりが出て来る。使用するパンも、フランスパン、ソフトフランスパン、ナチュラル嗜好の胚芽パンなど、実に多彩な組み合わせが出来るようになってきた。

サラダメニューに使うには、スライスした生ハムを、更に一口大に切ってから使う。メーカーの方で、もしこの生ハムの「切り落とし」などが出ているならば、安く出してもらいたいものである。サラダ用に十分に使える。最近イタリアンメニューが伸びているが、イタリアンサラダには、生ハムはぴったりである。

イタリアンメニューと言えば、ピザである。生ハムをピザに気軽に使えるようになってきた。薄手の記事に、山のように野菜と生ハムを乗せたピザを出しているところもあり、人気である。更にスパゲティにも使える。

高品質の食品を売る、東京のあるスーパーマーケットで、先日からこの低価格の生ハムを売り出したところ、大変な売れ行きだった。試食販売をしながらのスタートだったが、予告はしなかったにもかかわらず、記録的な人気だった。試食販売の場所は、売り場の最後の方で行っていたのだが、売り場の最初に玉って置かれていた商品もどんどん無くなっていっていたので、もし試食販売をしなくてもかなりの売れ行きだったはずである。また、静岡県のある中堅スーパーマーケットでは、最近売れている食肉加工品を調べてみたところ、伸び率で生ハムがトップだった。このような現象は、この地方スーパーマーケットにとって、始めてのことだった。東京の高感度スーパーマーケットで売れるのはある程度理解出来るとしても、何も販促もしていない地方スーパーマーケットでも売れ出したというのは、確実に生ハムの時代が来たことを示す。

総合食品「フードライフ」95/11月号より

肉を柔らかくする方法

2013/05/25 17:08 に 松本リサ が投稿

肉のおいしさの大きな要素に柔らかさがある。味とは関係ないのだが、食感は「おいしさ」に重要な役割を閉める。「この肉、おいしくて、柔らか〜い」と顧客に言わせるためには、いくつかの方法がある。



熟成



特に牛肉の場合は、これがもっともナチュラルな方法である。牛肉は、屠殺した後は「死後硬直」といって、筋肉が堅く引っ張り合っている状態で、ちょうど鎖がしっかりとつながっている状態である。これが、時間がたつと、鎖状にしっかりとつながっていたものが、肉自体が持っている酵素によって、鎖が次第に切れてきて、肉が柔らかくなっていく。同時に、肉の風味が出てきて、おいしくもなるのである。

どの程度の時間で柔らかくなるのかというと、0〜1℃程度の冷蔵庫に、枝肉、あるいはブロックで、脂肪などを外さない状態で、屠殺後約1週間位で熟成効果が出て来る。2週間で、大体柔らかくなり、これを過ぎると肉の色が次第に黒くなっていく。小売店で肉の色を見せながら販売する場合は、これ以上置くと見た目が悪くなって具合が悪い。しかし、熟成の方は、この後がもっともいい状態に出来ていく。3週間位が食べごろになる。米国の高級レストランなどでは4週間の熟成をするところもある。

熟成というのは、肉を長く置くわけであるから、バクテリアが多いと、熟成するどころか、腐敗に向かってしまう。また、外食レストランで長い間熟成させるためには、それだけの大きさの冷蔵庫が必要になる。3週間の熟成をするのならば、3週間分のストックをしなければならないのである。これはかなりのコストになる。そのために、米国などではこの熟成を専門に請け負う業者がいる。「ポーションカットセンター」と呼ばれているもので、大手のパッカーからサーロインなどの部位別の肉を仕入れ、これをレストラン側のニーズによって熟成してくれるのである。さらに希望すれば、決まった大きさ、重量にカットをして、店に納入してくれる。ポーションカットセンターは、この手間賃を稼ぐわけである。レストラン側では、面倒な熟成やカットをやってくれるのであるから、コストさえ合えば利用が可能だ。実際米国ではこのシステムが完全に定着している。日本においてはまだ一部の業者がまだ模索状態で初めているぐらいだが、これから牛肉の扱い方がわかってくるに従って、普及していくだろう。



果物



熟成は肉自体が持つ酵素によって起こるが、果物には、肉を柔らかくする効果を持ったものがある。これは、果物の持つ酵素による「軟化」である。特にパイナップルとパパイアがいい。ハワイの料理で、豚肉とパイナップルを一緒に調理する方法があるが、あれも肉の軟化の効果があるからである。また、太平洋戦争の時に、東南アジアに行った日本軍が、現地の人々が水牛の肉をパパイアを潰した液に漬けて食べているのを見付けた、食べてみたらあの堅い水牛の肉が柔らかくなっていた。これも同じ効果である。こういったところから果物の軟化効果が知られるようになってきた。

パイナップルには「ブロメライン」、パパイアには「パパイン」という酵素があり、これが肉を軟化させる。小規模に利用するのは簡単で、パイナップルやパパイアを擂り潰して汁を作り、これに肉を浸せばいい。短時間で柔らかくなる。ただし、一昼夜とか、2〜3日も置いたら、酵素が効き過ぎて、肉がどろどろに溶けてしまう。肉の種類や部位、厚さによって、どの程度果汁に漬けるかを見付け出さなければならない。缶詰のものは、酵素が失活しているので、効果はない。

パパイン、ブロメラインなどの天然酵素を粉末にした食品用の軟化材も出ている。製品によって濃度が違い、使い方も異なるが、肉に振り掛けたり、水やアルコールに溶かして使う。ソースを作るのに使うと味が丸くなる。御飯を炊くときに使うと味や風味が良くなる効果がある。軟化まで使わないで、小量使うことによって、肉や魚などの臭みを消す効果もある。シーズニングに混ぜた製品もある。


機械式軟化法



細いサーベルのようなナイフを何十本、何百本も付いたものを、肉に差し込んで、肉の筋を切る方法である。個人店舗で使うには、手のひらに乗る小型のものが市販されている。余り安いものだと、ナイフがすぐに切れなくなってしまう。そうなると、肉の筋を切るのではなく、肉の繊維をつぶしてしまうことになり、肉をまずくするだけになってしまう。レストランのキッチンで使うには「ジャカード」ブランドのものがいい。「ジャカード・テンダーマチック・ミニ」が市販されている。

食肉のパッカーやセンターで使うには、大型のものが必要になる。テーブルトップのものや、モーターをつかった自動式のものまである。

機械式の良さは、早いことと、どのくらい柔らかくするのかが簡単にコントロールできることである。



低温調理



ローストで行なわれる。普通のコンベクションオーブンでローストビーフを調理する場合、180℃で調理される。しかし、低温調理では120℃で調理され、肉中温度が上がってきてから、55℃程度で数時間保温をする。この保温のことを「ホールディング」と言っているが、この温度と時間が肉を熟成させて柔らかくする。具体的な調理手順は、コンベクションオーブンでは、肉の大きさによって1〜3時間程度で調理を終了する。しかし、低温調理では、例えば夜9時に調理を初め、最初に120℃で1〜3時間調理し、肉中温度が40〜45℃になった後、55℃にオーブンの温度を落とし、そのまま翌朝までホールディングをしておく。12時から翌朝9時までだと9時間のホールディングになるが、この1時間が冷蔵庫の自然熟成の2日間に相当することになるのである。9時間のホールディングならば、9X2で、18日間の自然熟成の効果になるのである。調理時間はかかるのだが、深夜に無人で調理できるので、コストはかからない。さらに、歩留りもいい。低温調理の代表的なオーブンには「ハローヒートオーブン」がある。

コンベクションオーブンだと、2割位は調理ロスで無くなってしまうが、低温調理だと1割程度で済む。ここ数年の間にコンベクションとスチーマーが一緒になった「コンベクションスチーマー」が急速に普及しているが、これだとスチーム(蒸気)を使いながら調理できるので、しっとりと、ジューシーに出来る。



マリネ



肉をマリネ液に漬けて軟化させる方法である。マリネ液はオイル、オニオンなどを使って独自の味に作ってもいいし、メーカーからも製品がいろいろと出ている。数十分から数時間、あるは一晩漬け込んでおいてから調理する。機械式のテンダーライザーをしてからマリネをしたらもっと効果的だし、酵素と合わせればさらに効果が出る。

柴田書店「月刊食堂」95/12月号より

有機農産物

2013/05/25 17:07 に 松本リサ が投稿

自然な食品、安全な食品に対するニーズが急速に高まってきている。同時に、素材の味のいいものが要求されている。これに対応する食材として、有機農産物が売れている。

外食大手のスカイラークグループでは、有機食材の扱いを急速に増やしてきている。最初のスタートは、グループ企業で、有機栽培の冷凍ホウレンソウで、メニューとして出したのではなく、レジの横で持ち帰り用として販売を初めた。これがよく売れるために、メニュー化に踏み切ったようである。

当初、外食では、「有機」をメニューに乗せるには、どの企業においても抵抗があった。なぜならば、一部の野菜などに有機を使い、それをメニューにうたった場合、「それではその有機以外のものは、安全ではないのか?」という反応が怖かったからである。しかし、メニュー化したら、そんな心配はなかった。ホウレンソウ、トマト、レタスを使った有機野菜のサラダはヒットメニューになったが、それが他のメニューへの不安につながることはなかった。

また、初めた理由が、ただ「安全性」ということで初めたのではなく、「おいしいもの」を追及した結果、有機野菜になったという、メニューのもっとも基本的な「素材のおいしさ」から始まったのが本質だったのである。だから自然に、素朴に売れてきただけ、と言うのが本当のところだろう。

その後スカイラークグループでは、順次有機農産物の扱いを増やしてきている。この動きは、業界全体になってきている。最初は一部の独立レストランが「有機」を、こだわり、売り物として出してきたのだが、今では、業界全体の大きな流れになってきている。

原料調達も、国内の農家と契約したり、有機農産物の新しいルートを開発したりと、新しい流通が活発になってきている。これは、今までの固定化した流通を打ち壊す動きにもなっている。長い不況の中で、低価格の食材を開発してきたことは、新しい時代の食品の流れを作ってきており、いい結果になってきているが、有機農産物もこれに貢献している。

国内の動きばかりではない、海外からの調達も活発になってきている。カナダ、米国、オーストラリア、ニュージーランドなど、クリーンな環境で作られた農産物が海外から直接ユーザーに持っていけるルートが着々と出来つつある。有機生鮮野菜は、航空便で日本に入り、そこからさらに国内航空線で地方都市にも送られていく。

海外から入ってきた生鮮野菜を地方都市まで持っていくには、成田空港では便が非常に限られていたのだが、関西国際空港がオープンしてからは、飛躍的に良くなった。航空時刻表を見てみればわかるが、関西空港からは、全国の地方都市への便が実に充実している。まず関西空港に入れ、そこで通関をしてから、すぐに全国の都市に運ぶのである。中には地方都市に本社があり、そこですべてをコントロールしているところもある。コンピュータの利用がこういったことを可能にしたのである。

もちろん飛行機ではなく、低価格の船でも持ってこれる。冷蔵のコンテナーを使えば、鮮度のいい状態で南半球からでも持ってこれる。冷凍野菜も活発である。ニュージーランドにある冷凍野菜の大手メーカーのワッティでは、2年ほど前にニュージーランドの新聞に記事を出した、「有機野菜求む!!」という内容である。米国、ヨーロッパ、日本などの需要が活発になってきたので、不足してきたのである。

有機野菜を作るには、土地から自然でなければならない。最低5年とか、7年の間、全く化学物質を使っていないことが重要な条件になる。さらに、その土地が、他の土地に汚染されない状況でなければならない。山の中腹にある土地だと、その上の土地で化学物質を使った場合、下に流れてきてしまうので、有機栽培は出来なくなる。有機を行なうには、広大な土地が必要なのである。

生産者の意識ももちろん重要である。この点は、有機栽培を行なっている人は、元々しっかりとした考え方、コンセプトを持っている。有機農業を元に、社会に貢献しているという誇りを持っている人がほとんどである。

有機栽培がきちんと行なわれているかを証明するシステムも出来上がっている。米国でも、オーストラリアでも、有機農業の生産物を証明するための規格が出来ている。全世界的にまとめるところはドイツにある。分析機関もこれをバックアップするようになっている。これは真面目に生産しているものにとって重要である。

有機のニーズが高くなってくると、どこまでが有機栽培だという基準があいまいになっていき、それがさらに悪い方向に進んでしまえば、有機農業その物が信用できなくなってしまう。実際日本でも、ある自然食品の宅配組織が、豚肉で不正なことをしていたことがわかり、新聞記事で取り上げられて問題になったこともある。有機農業は、急速に需要が伸びてきても、それに追い付いていけないことが多い。簡単に増産できないのである。だからチェックシステムが重要なのである。

こういったところから、デリ、そうざいにも、有機の農産物を使える環境が整いつつある。メニューとしては、有機野菜のサラダ、有機野菜を使った煮物、有機野菜を使った野菜カレー、有機野菜を使った中華炒め物メニュー。生鮮材料と冷凍物を組み合わせれば、あらゆるメニューに利用できる。


総合食品「フードライフ」95/11月号より

有機飼育牛肉(オーガニックビーフ)

2013/05/25 17:07 に 松本リサ が投稿

外食への有機野菜の導入が急速に進んでいる。この流れがこれから牛肉にもやってくるだろう。

有機野菜の導入は、最初はスカイラークグループのジョナサンから始まった。有機野菜が顧客のニーズにあることは流通業を見れば明かであったが、外食においては、一部のメニューだけに「有機」をうたうのは、他のメニューの素材が「安全ではない」ということになるので、メニューへの導入は否定的だった。この心配は、全ての外食企業に共通のことであった。ジョナサンでも最初は顧客の反応を探るということだったと推測するのだが、テイクアウト用に冷凍のホウレンソウをき、顧客の反応がいいので、次に、レタス、トマトなどを使った「有機野菜のサラダ」のメニューに入れた。メニューの一部に「有機」の名前を入れることに対して、それまで心配をしていた心配は結局無く、その後ガストやスカイラークガーデンズにも「有機野菜」の導入が進んでいる。

有機飼育牛肉は米国で進んでいる。有機飼育は、広大な土地が必要である。土地であるが、それまで最低5年とか7年以上といった長い間、農薬や添加物などの化学系のものを一切使っていないことが条件になる。広い土地が必要だというのは、小さい土地だと、その敷地内がたとえクリーンだったとしても、周りで化学物を使っていたのでは、その影響を受けてしまうからである。山岳地帯の場合、山の上になければならない。山の下で有機飼育をやろうとしても、山の上で化学物を使っていたら、下に流れて来てしまうからである。

米国での有機飼育牛肉は他の牛肉と一緒で穀物肥育である。導入する仔牛は、有機飼育している牛肉からの自然繁殖か、仔牛を買う場合にも当然有機の仔牛である。更に、飼料、肥料も有機でなければならない。穀物肥育の場合、牧草に麦、トウモロコシなどの穀物を混ぜたものになる。仔牛から数カ月は牧草主体の飼料を与えるが、大きくなるにしたがって穀物の率を多くした飼料に段階的に変えていき、最終の出荷直前には、穀物の比率は80%以上にもなる。これだけでかなり高い飼料になるのだが、使う穀物が全て有機栽培ということは、更にコストがかかることになる。

米国での有名な有機飼育牛肉は「コールマン」である。コールマンのナチュラルビーフは、全米の自然食品を扱うスーパーや外食企業に使われている。日本にも数年前から輸入をされていて、小規模の量ながら、安定的な顧客を持っている。ナチュラルな食材を使うコンセプトの夕食宅配の「ヨシケイ」などにも流れていて人気の根強さがよくわかる。ステーキにもときどき使われるようだが、価格の関係で小間切れを使うメニューに主として使われているようである。

有機飼育牛肉の特徴は、安全性と美味しさである。しかし「価格の関係で、穀物肥育がなかなか使えない、しかし、有機飼育は使いたい、低価格のものは出来ないのか?」というユーザーの声があり、一部開発が始まっているのがニュージーランドのものである。ニュージーランドの牛肉は特別のものを除いて、全て牧草だけで生産をしている。元々牛は草を食べる動物で、それに穀物を食べさせて肉質を軟らかくしたり、高付加価値にしたりしたのは人間である。牛は草だけで育つのが自然なのである。更に、生産コストからいったら、羊を別にしたら、牛が最も安い。豚や鶏は、人間が作った餌をやらなければならないし、「小屋」という建物、設備を作らなければならない。しかし、牛は土地と牧草があればいい。実際、ニュージーランド、オーストラリアでは、牛肉よりも豚肉の方が高いし、豚肉よりも鶏肉の方がもっと高い。鶏肉は高級な肉なのである。

ここで有機飼育牛を生産している農家が10年以上前からかなりあった。元々ニュージーランドというのは「無添加」が当たり前の国で、野菜も乳製品も全てナチュラルに生産をしている。無農薬の野菜は昔から米国や日本、ヨーロッパに輸出している。牛の牧場も無農薬が基本で、グラスフェッドビーフが当たり前の国である。それなのになぜその上に「有機飼育」を作るのかは「美味しいから」である。無農薬と有機飼育は違う。無農薬はただ単に農薬を使わないということなのだが、「有機」はその上に「土地を良く、美味しくし、その土で育った牧草を牛に食べさせる」のである。

土地を良くするためには、魚のエキス、ハーブ(香草)のエキス、海藻のエキスなどを液体にしたものをまく。これで土地が良くなり、よって牧草が良くなり、それを食べた牛の肉が美味しくなるのである。ニュージーランドのオーガニック農場は、除草にも特徴がある。雑草というのは、牧場の草地を荒らすもので、これを取るために大変な労力がいるので、農薬を使うのである。しかし、一度農薬を使うと、雑草も強くなり、翌年には倍の農薬を使わなければならなくなる。さらに良く年にはもっと、となり、そして土地がひどく痛むことになる。

ニュージーランドのオーガニックファームでは、雑草が種を拡散させる2〜3月頃、2〜3ミリぐらいの白い兜虫のようなのが雑草の種を食べる。雑草の種を食べてくれるのだから、雑草が増えるのを防いでくれることになる。オーガニックファームをやっているとこの虫が次第に増えてきて、除草が段々楽になるのである。もし農薬を使うと、この「農家お助けマン」の虫はいなくなる。「虫は、薬が嫌い」だからである。また、取った雑草を焼いた灰を農場にまくと、それも除草の助けになるそうである。

こうやって作った牛肉は、脂肪が白い。そして美味しい。価格も安い。しかし、欠点は、自然に飼育しているから当たり前なのだが、肉質が少し不安定な点である。普通のグラスフェッドビーフよりも十分に安定しているのだが、「工業製品」のように均一な肉が欲しいというのは無理である。現在この牛肉はハンバーグに加工されて日本に入ってきている。

日本国内でも有機飼育牛肉の生産はあちこちで始まっている。堆肥を使って有機野菜を作るなど、農産物全体での有機生産を始めている所も多い。米国サイドでも、農家が主体となって有機牛肉の動きが数件出て来ており、日本へも出したい意向もあると聞く。そのような農家と提携をするなりして、大規模ではないが、有機牛肉を始める外食企業が出て来る時代が来ている。

商業界「飲食店経営」96/1月号より

SPFポーク

2013/05/25 17:06 に 松本リサ が投稿

10年ほど前に、SPFポークが、これから伸びていくと予測している人はごくわずかだった。しかし、そのころ著者がSPFポーク協会のセミナーに出たとき、確か200名以上の生産者が集まっていた。そのころ生産者側では、これが次の世代の豚肉ではないかと考えられていたのである。その後、安全性を志向する流通業から少しづつ販売が行われていき、現在では豚肉全体の10%以上になったとも言われている。

SPFポークとは、Specific Pathogen Freeの略で、「特定病原菌不在豚」と訳す。特定とは、▽委縮性鼻炎 ポルデテラ菌▽豚流行性肺炎 マイコプラズマ▽豚赤痢 赤痢菌▽トキソプラズマ症 トキソプラズマ原虫▽オーエスキー病 ウィルス、である。よく、無菌豚などど勘違いされていることがあるが違う、また、肉も、調理されるまでのカッティングなどの段階で、マナイタや空気中のバクテリアが肉に付くわけであるから、全くクリーンな豚とは違う。しかし、肉自体は、特定の病原菌がいないわけであるから、牛肉のたたきのように表面に火を入れれば、中は生でも食べられる。豚肉は、ソテーでもカツでも、肉中温度が65℃ぐらいで上げればジューシーに食べられるのだが、「生焼け」クレームや事故がこわいので、どうしてもオーバークックになりがちである。しかし、SPFポークはこの心配がないので、怖がらないで理想的な調理が出来る。その結果「美味しい豚カツ、ソテー」が出来るのである。

SPFポークの生産は、元となる豚の帝王切開から始まる。母豚の子宮の中は、病原菌が居ない状態なので、このクリーンな状態のままクリーンルームで手術をして仔豚を取り出す。次に、この仔豚を大きくして、第2世代の仔豚をまたクリーンな状態で取り出す。そして、この仔豚からコマーシャルベースの豚肉を生産するのである。

SPFポークの生産上の利点は、薬を使わないでいい点である。「安全な豚肉」と言われるのは、生まれたときと、飼育する段階でも、添加物無しでいいからである。豚そのものが健康なので、早く大きくなる。この点でコストが下がる。しかし、その半面、クリーンな環境を維持させるために、広大な土地が要るし、農場内にバクテリアを持ち込まないために、衛生管理などでかなりの設備投資が要ることになる。

このようなSPFポークは、安全な農産物を扱う宅配業などから消費者への供給が始まり、その後一般のスーパーマーケットなどもこの2年ぐらいの間に急速に扱いだしてきている。そして、外食への導入もスタートを切っているのである。

外食への導入例としては、豚カツの「いなば和幸」がいい成功例だろう。95年の2月頃から、米国、スミスフィールド社のSPFポークの導入を始めている。仕入れ価格は、それまでの1割程度高くなったということだが、歩留りは、それまでは10%がドリップとして無くなっていたものが、このSPFポークだと1%ということである。更に、顧客に対しての訴えとして「自然豚」ということをアピールした。そして、売上は昨年対比で2桁台の伸びになったそうだ。また、最も重要なことは、味がいいという点であった。これらの相乗効果で、成功したのである。

導入にあたって、当初は航空便で取ったそうである。しかし、試験導入の時に、たまたま船便と比較する事態になって試食をしたところ、チルドの船便の方が非常に軟らかいということがわかった。チルドの船便は、屠殺してから冷蔵状態で25日かかって運ばれる。今まで一般的に豚肉は屠殺後3〜4日の熟成がいいとされていたので、25日というのは論外と思われるのだが、豚カツでは、真空パックをやぶるとすぐに料理する。このために、熟成最終段階の最も軟らかい状態で調理が出来ることになったのである。

スーパーでの販売で、チルドの船便を扱っているところがあるが、実態はこの熟成最終段階が問題になっている。それは、販売の際、パッケージをやぶいてスライスや切り身にしてトレイパックをしてから売り場のオープンケースで販売する。その後顧客が買い、自宅まで持って帰ってから調理をすることになる。こうなると、パッケージをやぶいたときにはいい状態なのだが、その後急速に鮮度が劣化をすることになる。最初の時点で鮮度が良ければ、販売から顧客の調理までの時間はある程度あっても問題はないのであるが、最終熟成までされているので、一気に鮮度が劣化してしまうのである。

このことは、外食へ導入するときにも十分に注意しなければならない。チルド船便を、もしカットセンターなどで切り身にし、更に衣を付けたり再凍結したりという加工工程を通る場合には、急速に鮮度が落ちることを考えなければならない。実際にテストをした例は知らないが、恐らく上手く行かないのではないだろうか。

米国産に比べて価格は高くなるが、国産のSPFポークは、「国産」という高付加価値がつく点で、十分に有利に顧客にアピールすることが出来る。国産では、住商飼料畜産系、伊藤忠飼料系、そして最近では農協系がそれぞれ取り組んでいる。95年始めには、生産システムや設備などを協会で調査し、農場の指定を始めている。SPFポークで重要なのは、農場のクリーンさである。農場を認定することによって、更に高付加価値、ユーザーの安心度を高めている。

米国産と国内産の違いは、価格、鮮度と、部位の選択性である。米国産は、ロース(ロイン)とヒレ(ヘレ)テンダーロインだけをいくらでも買うことが出来る。しかし、国産の場合は、ロースとヒレだけを取ろうとすると、どうしても価格が高くなるし、無理に大量にやろうとすると品質が不安定になってくる。

SPFポークを外食に導入するということは、「安全性」「美味しさ」を訴求することが出来るが、仕入れ価格や、安定性、鮮度、国産か米国産か、など、検討することは多い。しかし、SPFポークの外食への導入は、まちがいなく進んでいくだろう。価格競争だけではなく、素材の競争、差別化が進んでいくのである。

商業界「飲食店経営」96/1月号より

牛肉のロース系以外の部位を上手に使おう

2013/05/25 17:05 に 松本リサ が投稿

ストリップロイン(日本式には、サーロイン)、テンダーロイン(ヒレ、ヘレ)をステーキハウスやファミリーレストランのステーキメニューに使うことがほとんどだが、メニューや使い方を工夫することによって、これ以外の部位でも使いやすい、十分にメニュー化出来る部位が色々とある。



リブ



良く知られている部位だと思っているのだが、話をするとあまり理解されていないことが多い。

この部位は、ストリップロインの前の方で、チャックとの間にあるステーキ用の部位である。ステーキにしたときに断面が大きいので、大型のステーキになる、そのために、1枚あたりの重量が大きすぎてしまうので、使いにくいと思われているところがある。しかし、ブロック肉の表面に被さっている「カブリ」という部分を取り除いたものがあり、これを使えば手頃な大きさになる。「リブのキャップオフ」とか「スペンサーステーキ」「デルモニコステーキ」と米国では呼ばれている。オーストラリア、ニュージーランドでは「キューブロール」という。

キューブロールには、2種類あると考えたらいい。日本向けに穀物肥育されたグレンフェッドビーフと、牧草飼育したグラスフェッドビーフのものである。グレンフェッドビーフのものは一般的であるが、グラスフェッドビーフのキューブロールは検討の余地がある。理由は、低価格で、軟らかいからである。

グラスフェッドビーフの価格はグレンフェッドビーフよりも大幅に安い。それにもかかわらず敬遠されるのは、「臭いがある」「堅い」と行った理由からであるが、本来のグラスフェッドビーフはそんなに臭いものではないし、むしろ自然の旨味があって、赤身が多いので、若い人向けのメニューに使える。昔の「臭くて、堅くて、色が悪い」ものとは今は違ってきている。軟らかさの点では、ストリップロインよりも軟らかい。であるから、オーストラリア、ニュージーランドではステーキに最も使われる部位である。日本でも沖縄ではこのキューブロールがほとんどである。



ショートリブ



バラ肉だが、バラの後ろの方は牛丼などに使う脂肪が多い低価格の方で「ショートプレート」という。バラ肉の前の方は赤身が多く、焼き肉では「上カルビ」になる「ショートリブ」である。ショートリブは焼き肉では最も一般的だが、その他の業態では使われていない。しかし、原料の形が板のようになっているので、カッティングがだれでもしやすく、使いやすい。

赤身と脂肪が適度にあるので、和食の小さな編み焼きや煮込みに使ってもいいし、中華の角煮には最高である。一般の洋食レストランでは1センチぐらいに長く、厚く切って小さなステーキやソテーに使える。ファミリーレストランなどでは「カルビ丼」などどうであろうか。



骨付きショートリブ



ショートリブの骨の付いたものである。ショートリブというのは肋骨(リブボーン)の所に付いている部位で、骨を外した肉の部分だが、この骨を、骨の方向に対して直角に、厚さ1センチほどに切ったものである。カットをするのにはバンドソーという帯鋸切りを使い、素早くきれいにカットをしてある。

米国からのものが一般に出回っていて、骨の3本分がつながっている。焼き肉では「骨付きカルビ」として使われている。韓国での骨に付いた肉を切り開いたカッティングとは違うのだが、手軽に使える骨付きカルビになる。本来肉の美味しさというのは、骨や筋から出て来るものだが、これにはそれがついている。このまま焼いて、食べる時に外せばいい。

骨が付いている分だけボリュームが出るし、ワイルドな食べ方が出来るメニューに出来る。ステーキメニューで骨を3本付けた長いまま使えば「骨付きステーキ」になる。バーベキューメニューには最適である。3つに外してカレー、和風、中華の煮込みに使えば、味はよくなるし、高級感まで出る。



チャックテンダー



肩の肩甲骨の部分に付いている、赤身の多い部位である。とうがらしのような形をしているので、日本名は「とうがらし」である。ここは、刺身やタタキに使える。大きさも小さいので、使いやすい。

ほとんど赤身なので、適当な長さの「サク」にしてから、表面を焼き、「牛肉のタタキ」に出来る。和食や独立店舗で店の特徴を出したい場合は、タレに漬け込んでからタタキにするといい。淡泊な赤身だけの味に、独自のタレの味が染み込んで、独自の味に出来る。ステーキ状の切り身にしてから軽くあぶるぐらいの「レア」で焼けば、ヘルシーな「牛肉赤身肉のソテー」になる。



ランプ



ストリップロインの後ろの方で尻の方の部位である。この部位は、形がストリップロインのように丸太状になっていないので、切り身にカットをしにくい。しかし、肉としては軟らかいので、パート中心のチェーン店ではなく、ある程度店でカッティング作業が出来るところならば使える。低価格で、軟らかい部位だからである。ステーキやソテー向けである。



ボールチップ



米国の低価格のステーキハウスで良く使われている部位である。ランプの反対側の前の部分にある肉。この部位もランプと同じように切り身にしにくいのだが、軟らかい。ランプもそうだが、ステーキの切り身に出来ない端の部分は2〜2.5センチぐらいの角切りにして「さいころステーキ」や、バーベキューの串刺しにしたらいい、あるいはシチューにしてもいい、そうすればロスは出ない。



ブリスケット



オーストラリア、ニュージーランドの名前は「ポイントエンドブリスケット」である。この部位は牛肉のハムとも言える「コーンドビーフ」や、スパイシーな味の「パストラミ」に加工される。とても味がある部位なのだが、そのままだと堅いので、加工するのである。加工すれば軟らかくすることが出来るし、味を付けることも出来る。

これを外食で使うにはローストビーフにするといい。ローストの方法は、普通にローストするとやはり堅いので、低温ローストをする。一般的にはコンベクションオーブンを使って180℃ぐらいで焼くのだが、もっと低温で、120℃程度で時間をかけてゆっくりと焼く。焼き上がった後も60℃ぐらいで数時間保温しておくと熟成して軟らかくなる。最近急速に普及してきているスチームコンベクションオーブンで低温調理をしてもいい。



ストリップロイン、テンダーロイン以外の部位を紹介したのだが、これらの部位を活用することは、リブ以外は低価格で買えるのだが、同時に、1頭の牛肉からとれる全ての部位を、できるだけ多く活用するノウハウになる。このノウハウは何になるかと言うと、牛肉を買うときの低価格のための交渉に使えることと、独自の牛を開発できるという点である。

低価格のための交渉というのは、オーストラリア産に限ってだが、ストリップロインとテンダーロインを単体で好きなだけ買うのではなく、その他として、今回紹介した部位も一緒に買う、という交渉をすれば安く出来るからである。というのは、米国ならば、商社の仕入れ段階で、ストリップロインとテンダーロインだけを買うことはいくらでも出来るのだが、オーストラリアの牛は、日本向けに特別に穀物肥育をしているので、商社はそこで出来る全ての部位を買う契約になってしまうからである。

そして、ロイン系以外の部位はうまく売れないので、低価格にしたり、現地に安く残してきたりし、その分の売上をロイン系に乗せるようになっているからである。であるから、もし「1頭の全ての部位をセットで全て」買う、という買い方ならば、価格が大きく違って来ることになる。

このことが、独自の牛肉を開発できることにつながって行く。たとえば、薬、農薬などを一切使わない有機栽培の野菜がこのところ急速に伸びているが、この牛肉版の「有機飼育牛肉」が出て来ている。有機飼育牛肉を作っている農家は日本でも海外でも出て来ているのだが、これらの農家と契約をするときに、ロイン系しか買わない、といったら、出来ない。1頭全てを買うようにしないと出来ないのである。

そこで、使える部位は出来るだけメニューにして、どうしても残ってしまう部位は、細切れ状で炒めものや煮込みに使えるメニューする。細切れのメニューには、天ぷらのように揚げるフリッタや、米国のファミリーレストランで良く売れている、牛肉入り野菜炒めのような、ビーフファヒータがある。更に残る部位は、ハンバーグやミートボールなどの挽肉メニューに使う様に工夫したらいい。

こういった牛肉全体を使うノウハウは、将来の牛肉の有利な買い方のためにも重要なことなのである。

柴田書店「月刊食堂」96/1月号より

ボリュームある煮込みメニュー、ブレージング、ポットロースト、骨付きハムの煮込み

2013/05/25 17:04 に 松本リサ が投稿

食肉の煮込みメニューは、低価格で、ボリュームを出すことができる。冬だけでなく、肉の味を芯から出すメニューということで、シチューなどを看板メニューにしているレストランも多い。シチューは、時間もかかるので、「じっくりと時間をかけて」とか、「何日間煮込んだ」といった訴えで顧客を引き込んでいる。肉の煮込みメニューは、日本ではほとんどシチューであるが、他にも、日本のレストランに取り入れられるものがある。

ブレージング

「蒸し煮」と訳す。3〜5センチぐらいに切った大きな肉の切り身を、厚手の鍋で、蒸し煮にする。肉としては、牛肉のショルダー部分、チャックロール、クロッド、ブリスケット、もっとボリュームを出して、肩甲骨の部分を、骨付きのままバンドソーでカットをした「セブンボーンステーキ」あるいは、ネックの部分を骨付きのまま使う「ネックボーン」など、筋や骨が入り組んでいる部分がいい。こういった部位は、ブレージングにすると、筋と骨から味がたっぷりと出るし、価格的にも安い。豚肉でもやはり、肩から前とか、ピクニック(腕肉)を使う。
鍋、又は厚手のフライパンでもいいが、熱してから肉を入れてステーキのように焦げ目を両面付けた後、スープ、又はトマトジュースを、肉がたっぷりと被るぐらい入れ、オニオン、人参などの野菜と、ハーブ系の香草を入れて、沸騰させないように2〜3時間ぐらい、蓋をして、蒸し煮にする。我々日本人向きには、醤油を少し入れるといい。沸騰させないで煮るのを「シマー」というが、野菜や肉を煮くずれしないようにするいい方法である。
シチューと同じようなものと考えるかもしれないが、シチューは、肉と野菜を煮込む、のに対して、ブレージングは、肉を、スープや野菜でカバーをして、蒸す、という、大きな切り身肉の「煮込み式ステーキ」ということになる。日本の魚料理で「落し蓋」をする料理があるが、似たようなものである。
盛り付けは、大きく、深めのプレートに、軟らかく蒸された肉を、崩れないように置き、その上に、蒸した後のスープをたっぷりとかける。
米国で、このブレージングは、最近では家族数が少なくなって、いつものメニューにあまり出なくなってきているようであるが、手軽な家庭料理としても昔から行われてきた。家庭でやる場合は、スキレットと言って、深めのホットプレートを使う。日本で焼き肉をやるホットプレートで、深さが5センチぐらいあるもので、これに肉を入れて焦げ目を付け、スープやトマトジュースと、野菜を入れて、午後からゆっくりと蒸しておき、その間主婦は、他の仕事をして、夕食時になってみれば出来ている、という筋書きになる。肉を切り分けて食べ、残ったスープにパンを付けて食べる。

ポットロースト

これは、ブロック肉を、たっぷりのスープでロースト、ゆっくり調理をするもの。普通のローストは焼くのであるが、これは煮る、蒸す、ことになる。ブレージングの、大型ブロック肉タイプ、と言ってもいいかも知れない。使う部位はブレージングと同じだが、切り身ではなく、ブロックでやる。
ブロック肉の表面に焦げ目を付けてから、寸胴鍋に入れ、肉がひたひたになるぐらいのスープで、沸騰させないように煮る。ブレージングよりもかなり時間がかかる、一晩は必要になる。無人で調理出来る低温調理オーブンが使えればそれが一番いい。
盛り付けは、切り身にして、スープをかけるのもいいが、肉が軟らかくなっているので、5センチとか、10センチ角位にカットをして、皿の上に乗せ、その上にスープをかけ、ハーブなどの香草をちょっと上に乗せる、などという方法だと、ボリュームが出る。
仔牛の骨付きのスネ肉を使った「オーソブッコ」というメニューがある。骨付きのままのスネ肉をトマト系の味で煮込んだもので、高級料理だが、これもポットローストの一種になるだろう。仔牛のスネは日本では手に入りにくいので、普通の牛のスネ肉を使ってもいい。骨付きでは流通していないので、肉のパッカーや、枝肉から肉を扱っているところに注文する。1本丸ごと煮込んでパーティー用のメニューにしたらすばらしい。
一般のメニューにするには、バンドソーで骨ごと数センチの長さにカットした「クロスカットシャンク」というのがある。シャンク(スネ)の部分だけでなく、モモの部分までも含まれる。スネの部分は、肉が少ないが、モモの部分になると、大きな切り身状になり、真ん中に丸い骨が入っていることになる。これを煮込んだらいい。この場合は、骨の髄がスープに出て、とても美味しいものになる。東京、青山の「アントニオ」というイタリアンレストランでこれを注文したら、骨の髄の部分に、耳掻きのようなスプーンが刺し込んであった。美味い髄をこのスプーンですくって食べてくれ、ということである。

骨付きハムの煮込み

「ハム」というのは、元々豚肉のモモの部分の名前である。その部分を加工したものを「ハム」と呼ぶようになり、日本ではそれが一般的な名前になった。しかし、米国などでは、豚の部分を普通に「ハム」と読んでいる。名前の由来はともかく、この骨付きのまま作ったハムが、最近日本でもよく売られている。食肉専門店などで、骨から肉をそぎ落しながらデモンストレーション販売をしているのをよく見るようになった。このとき残った骨を煮込む料理が、欧米ではよく行われる。
骨付きハムの骨には、筋や軟骨など、味を出すものが沢山付いている、これを野菜と一緒に3時間位煮込むのである。骨は、鋸などで2つに切り、骨の中の髄が出るようにしてから煮込む。出来たら、筋や軟骨をナイフで外して、ワイルドに食べる。
骨とスジを別々にしてもいい。骨の部分は齧って食べる、そしてスープは漉してから冷蔵庫に入れて冷やす、そうするとプリンのような煮こごり状になる。ゼラチンでこうなるのである。これを家庭ではスプーンですくって食べるのだが、レストランだったら、ゼリーケーキのように皿に乗せて、アペタイトとして提供してもいい。スープを漉した後、ケーキ型に入れて冷やせばいい。冷えた後、上に脂肪が白く浮いて固まっているので、それを外すと、きれいに透き通ったスープのゼリーが出来ている。

こういった大型で、調理に時間がかかるメニューは、一般的ではないが、今のようにレストランの売り物が必要な時代には、使えるメニューには入ると思う。
独立レストランならば、オーナーなりシェフが自分で調理すればいいのだが、ある程度のチェーンになると、そうはいかない。チェーンに入れるためには、自社センターなり、メーカーへのオーダーになる。ブレージングなどのメニューは、味の安定性はともかく、大きさ、形、厚さなどを均一にするのが難しい。しかし、それを克服すれば、小規模ながら、付加価値が大きくついたメニューにすることが出来る。食材が安い割には、目立つメニューだからだ。
大きさなどの規格は、これらのメニューの場合、ある程度は許されなければ出来ない。取り入れるためには、レストラン側がある程度の線で、規格には妥協する必要がある。そんなことよりも、ワイルドなメニューを集客に使う、という考え方が重要である。

柴田書店「月刊食堂」96/2月号より

ひき肉、ミンチの上手な扱い方

2013/05/25 17:00 に 松本リサ が投稿

ハンバーグやミートボール、高級メニューではミートローフや、丸鶏のローストのスタッフィング(詰め物)など、ひき肉は用途が広い。しかし、安いもの、という認識で、この重要なものがおろそかにされている面がある。
ひき肉はとてもデリケートで、温度や挽き方、管理で、品質がすぐに変化してしまうものである。このひき肉の品質によって、料理の品質が大きく左右される。ひき肉をどのように作り、扱ったらいいのだろうか。

いい機械を使う。手作りでは、ナイフで切る方法も

ひき肉を作るのには「チョッパー」という機械を使う、英語では普通「グラインダー」という。この機械は、端材の肉を圧縮して、ナイフで切りながら細い穴を通してひき肉を作る。そもそもひき肉というのは、残った端材の肉をまな板の上で包丁で小さく切っていたもので、「チョップ」というのはぶつ切りのことである。昔のプロレスの力道山の「空手チョップ」の「チョップ」である。
これで重要なのは、よく切れるナイフで、肉をつぶさないで、きれいに切ることである。肉の繊維をつぶしてしまうと、肉のドリップが出て、味が悪くなるし、傷みも早い。したがって、手作りで、おいしいひき肉を作るのならば、チョッパーを使わないで、包丁で切って作るのがいい。鴨のタタキを作るときに、骨と一緒にまな板の上でていねいに包丁でたたいて作るが、あれと同じである。
しかし、大量につくるにはそんなことはやっていられないので、チョッパーを使うことになる。チョッパーの性能でひき肉の品質が変わってくるのは、このためである。チョッパーにパワーが無いと肉がつぶれてしまう。チョッパーに付いている刃が切れなくても、いいひき肉が出来ない。

原料
ひき肉は安いものだからといって、傷みかけた原料肉を使う傾向があるが、とんでもない間違いである。鮮度のいい原料肉を使わないと、いいものが出来ない。肉というのは形が小さくなればなるほど傷みが早い。ひき肉は最も小さい形の肉なので、いちばん傷みやすい。そんなものを作るのに傷みかけた原料を使ったらたまったものではない。
材料としては端材を使うのだが、肉の処理の時に出て来る端材は、すぐに冷蔵庫に入れて、痛まないようにしておかなくてはならない。また、ひき肉専用の原料も使うことが必要である。専用原料は、牛肉ではカウミートという、年をとった牛の肉とか、高品質なものは、グラスフェッド(牧草飼育)の肩やモモ肉のブロック肉のホールマッスルトリミングといったものを使う。こういった鮮度のいい専用原料に、端材を混ぜて作ればいいものが出来る。

米国はハンバーガーの本場だが、米国で生産されるハンバーガーパティの原料は2つある。一つはオーストラリアやニュージーランドからの低価格の赤身牛肉で、赤身率が90%以上ある。もう一つは米国内のミートパッカーから出て来る牛脂肪である。この2種類をミックスして作る。であるから、パティを作るのは、牛肉の脂肪が出て来るミートパッカーで作ることになる。
ハンバーガーパティはあまり赤身が高いと、パサパサでおいしくない、最もおいしいとされる赤身率は、78〜81%といわれている。20%程度の脂肪率がいいということである。低価格の赤身と、ミートパッカーからの脂肪をうまく組み合わせて、味のいいパティを作っているのである。
この方法は、レストランレベルでも行うべきである。牛肉の脂肪が最もおいしいのは和牛のものである。豚肉ならば黒豚、といったところだろう。普通の赤身肉に和牛の脂肪を混ぜてハンバーグを作ると、和牛の味がする。脂肪が肉の味の中心になるのである。だから、全部に高い和牛を使わなくても、脂肪だけ和牛のものを使えばかなりいいものが出来る。大分以前、クジラの肉がいくらでも食べられるころ、クジラの赤身肉の切り身を、和牛の脂肪でステーキにして、新米の肉屋に食べさせたら、だれもわからなかった、全員が牛肉のどの部位なのか考えていたのである。


赤身率(脂肪率)とミックス計算

赤身率だが、正確な赤身率を出すには、ファットアナライザーという測定機が必要だ。小型の店で使えるもの(2003/7月注:小型の測定器は、米国のメーカーが無くなってしまい、手に入れられなくなってしまいました。現在あるのは「アニルレイ」というエックス線を使ったセンター用のもので、極東貿易から2000万円ぐらいで販売されています)から、ミートセンターで使うエックス線やコンピュータを使うものまである。これを使って原料肉の赤身率をはかり、それに脂肪を何%入れて作ればいいかを計算するのである。赤身率が高いと、原価が高くなるうえに、パサパサでおいしくなくなってしまう。脂肪が多すぎると、味がくどくなり、調理後の歩留まりが悪くなる。正確な脂肪率にするのは、売れるハンバーグを作るうえに重要なことなのである。

赤身と脂肪のミックス計算をする方法だが、たとえば、赤身90%の肉に、赤身20%の脂肪をミックスして、赤身80%にするためには、どうしたいいか?となった場合、正式には二時方程式が必要になる。しかし、そんな数学はとっくの昔に忘れてしまっている人が多いだろう。そこで、米国の食肉ビジネスをしている人が使っている便利な方法がある。
まず、四角形を書き、中に対角線をいれる。左の上と下にそれぞれの赤身率の数字を入れる。そして、作りたい赤身率の数字を入れる。次に、対角線の方向に、数字の差を出す。
この例の場合は、左上に、「90」左下に「20」真ん中に「80」と入れ、対角線の差を出すと、右上が 80 - 20 =60、右下が、90 - 80 = 10、ということで、赤身90%対20%の原料を、60:10、つまり「6:1」にして混ぜればいい。

温度管理

ひき肉を挽くときは、温度管理が重要である。温度が高いと、鮮度が落ちてしまうし、ドリップが出て、傷みが早くなる。冷凍原料の温度が低すぎると、チョッパーが止まってしまったり、肉の繊維が氷が割れるように壊れて粉のようになってしまう。
牛肉の冷凍原料を引くときの温度は、マイナス2度から3度ぐらいがいい。豚肉の冷凍は、0からマイナス1度がいい。なぜこうなるか、いろいろと調べたり、学者に聞いたりしたがわからない、しかし、経験上からこの温度がいいことはわかっている。この温度は大変なノウハウのカタマリである。
生鮮肉の温度は、0度がいい。しかし、肉の凍り出す温度はマイナス1.8度なので、出来るならば0 〜 -1.8度の間がいい。

ひき肉に限らないが、肉の鮮度を保つ方法として、冷塩水処理という方法が古くから行なわれている。氷を入れた冷たい水の中に肉を浸けて、急速に肉を冷やすのである。塩水は肉の塩分とほぼ同じの0.9%程度にする。塩分濃度が同じことで、肉の塩分が外に出ないし、塩水の塩分に肉が影響されることもない。時間は、小さい端材などの肉なら数分、大きなブロック肉ならば20分程度入れておく。こうすると、肉の鮮度をよみがえらすのではないが、肉を引き締めることになって、いいひき肉にすることが出来る。
この方法はひき肉に限らず、痛みやすい肉、内蔵肉などを使う前に冷塩水処理をすることによって、臭みもなく、色もいい状態にすることが出来る。魚にも使える、魚の場合には塩分濃度を海水と同じ2〜3%にするといい。

挽く手順

赤身肉と脂肪を粗びきにしてからもう一度挽く「2度びき」をするといい。直径9ミリぐらいの大きなプレート(チョッパーの先端に付ける穴のあいたもの)などで大きくカットをしてから、普通は3ミリのプレートを通す。3ミリというのは、マグドナルドをはじめとして、世界のハンバーガーパティの標準になっているものである。この大きさだと、これよりも大きなスジが通らないので、安全なのである。もちろんこれよりも小さなプレートもあるのだが、小さくなると肉の食感が無くなってくる。
肉の食感を出したい場合には、粗びきをそのまま使えばいい。工業レベルで大量につくるには、スジのリスクが大きすぎるので出来ないが、レストランレベルでならば出来る。原料肉のスジを完全に取り去ってから粗びきにしたらいい。

柴田書店「月刊食堂」96/5月号より

輸入食材いろいろ

2013/05/25 16:59 に 松本リサ が投稿


デリ、総菜業界だけでなく、あらゆる食品関係の業界に、輸入食材の流れが押し寄せてきている。以前は輸入食材など、大手の食品メーカーや流通業の世界だったのだが、今では、外食業界のもっとも重要な仕入れ戦略になっている。数年前までは、食材の仕入れの中での輸入食材の比率は、大手でも数%以下だったものが、最近では、25%とか、50%を目指している、といった声が聞こえてきている。直輸入でなくて、間接的なものも含めると、ある大手外食企業では「90%」にもなるということである。

この流れは、中小の企業にも出て来ている。たとえば、ある中堅デリ業者では、食材の一つであるアスパラを、以前は業者から買っていた。その後、輸入の方が安いということで、ニュージーランドから直輸入を始めた。これになれてきたころ、輸入アスパラの調査をしていたら、フィリピンのアスパラを見つけたのである。フィリピンのアスパラは、業界では余り目立っていないようだが、低価格で、日本への成長率が最近急速に伸びているのである。もちろんフィリピン産アスパラに切り替えつつある。

アスパラは米国からがトップで、フィリピンは2番目だ、しかし、伸び率を見ると、米国が-18%なのに対してフィリピンは50%と、大幅に伸びている。オーストラリアからも44%もの伸びである。フィリピン産の通関後原価概算は412円で、圧倒的に安い。もちろん品質の点もあるが、これだけ数字的に伸びているのは、それなりの理由がある、有利だという意味にとらえられるだろう。アスパラはニュージーランドのイメージが強いのだが、量的には6番目で、価格も729円と高くなっている。伸び率の面からは中国産が201%で、伸び率のトップだ、95年に586トンと量的にはまだ少ないが、注意しておく必要あるだろう。

豚肉においても、輸入に切り換えるところが増えている。外食のとんかつ和幸では、昨年から米国産のSPFポークの利用をテストしてきたが、結果がいいことから、全面的に切り換えた。輸入食材というのは、顧客にとって、安全性など不安な面があるのだが、SPFポークの場合は、特定病原菌不在豚という安全性を逆にうたえることが出来る。SPFポークは国産と米国産の両方があるが、米国産は低価格で、ヒレ(ヘレ)とロースだけを自由に買うことができ、外食企業に向いている。国産のものは、高級感、安心感で、その反面価格は高い。最近ではスカイラーク系の企業が、SPFポークに移行することを発表している。

豚肉で問題なのは、セーフガードという制度で、国内の生産者保護のために、輸入が急増した場合、関税を上げる、という制度がある。これが発動されると、20数パーセント藻原価が上がってしまうことになるのだが、すでに今年の始めから3カ月間発動され、その後今年の7月からまた発動される見込みである。こうなるとせっかくの低価格で安全を訴えられる豚肉が高くなってしまうので、ユーザーにとっては困ることになる。そこで豚肉調製品の輸入が出てくることになる。

豚肉調製品とは、生の肉ではなく、味を付けたり、調理をしたりしたものである。豚肉調製品の中にも、セーフガードの対象になるものと、そうでないものがある。当然セーフガードの影響を受けないものの輸入が急増しつつある。その一つにソーセージがある。ソーセージの関税は10%と安く、食材としても用途が広いことから、外食ユーザー、メーカーの間でも検討をしているところが多い。

ソーセージの輸入では米国が圧倒的に多く、伸び率も46%と高い。しかし、デンマークやカナダなど、追い上げている国もある。ソーセージは豚肉を多く使うので、豚肉の生産国が有利なのである。カナダの豚肉は、日本にも入っているが、差額関税のために、高額の豚肉が輸入されている状態である。デンマークも同じだ。しかし、低価格の豚肉をソーセージに加工して輸入したら、差額関税も関係ないし、セーフガードも関係ない。カナダの豚肉はニュージーランドなどにもかなり輸出されている。低価格の加工肉原料なのである。それを日本へのソーセージに利用するわけだ。もちろんデンマークも同じである。



デリ、総菜の主力商品のハンバーグは、以前は牛肉と豚肉の合い挽きが主流だった、しかし、高級感からその後牛肉100%の製品が次第に出て来ている。業界では、牛肉だけがいい、あるいはやはり日本人は合い挽きがいい、と、色々と議論がされている。このハンバーグは、牛肉100%のものを低価格で作ろうと思ったら、牛肉のひき肉材料が安い国で作るのがいちばんいい。ハンバーグの国といったら米国、となるかもしれないが、原料は違う。米国でのハンバーグの原料は、オーストラリア、ニュージーランドから輸入している。この輸入減量は、赤身率が90%程度と高いものを輸入して、それに米国内で出た牛肉の脂肪をミックスして作る。ハンバーグの脂肪率、赤身率は、あまり赤身が多いと、パサパサしておいしくない。マグドナルドの赤身率の高い健康志向用ハンバーグも、ついに無くなってしまった。最もおいしいとされるのは、赤身率80%ぐらいのものだとされている。ということで、米国では、低価格で赤身率の高いオセアニア産の牛肉原料を入れ、自国で出た脂肪の端材を入れ、うまく作っているのである。以上のことから、牛肉100%のハンバーグを作るには、オセアニアがいい。しかし、合い挽きについては違ってくる。米国、カナダなど、牛肉と豚肉の両方の原料が豊富にあって安くなければならない。オセアニアでは、牛肉は安いのだが、豚肉は牛肉よりモカなり高い、それでカナダから輸入しているのである。鶏肉はさらに豚肉よりも高い高級品である。また、豚肉だけでハンバーグを作ろうと思ったら、台湾、中国といった国がいいだろう。最も、原料だけで考えるとこうなるが、実際にハンバーグを開発しようとしたら、技術的なものが重要になるので、日本向けの厳しい規格のハンバーグを作れるメーカーがあるかどうかが重要である、その上で、低価格原料肉が必要になる。


総合食品「フードライフ」96/5月号より

売れている豚肉は?高品質豚肉を外食業は考える時期

2013/05/25 16:58 に 松本リサ が投稿

何カ月もの間狂牛病の余波が続いているが、小売りレベルでは、牛肉の売り上げが多くの企業でダウンしている。外食企業も同様だが、企業によってはそれほど影響が出ていないところもある。海外、特にヨーロッパでは、ドイツのように牛肉消費が半減したといった極端なダメージを受けている国もある。

日本の小売業では、牛肉が売れない反面、肉の消費が豚肉に移っているところが目立っている。大手スーパーでは、イトーヨーカドーが、豚肉を10%、昨年よりも売っている。売れている豚肉は黒豚が中心だという。ダイエーは、肉部門で売れているのは黒豚のみで、これだけは好調だという。ジャスコでは、肉全体の売れ行きは横ばいだが、豚肉だけは5%伸びているそうだ。ニチイも豚肉は4%、西友は5%といったところだそうだ。

豚肉が売れ出したのは、狂牛病騒ぎが始まってからではない、大体1〜2年ほど前から売れ出してきている。といっても、すべての豚肉が売れ出してきたのではなく、黒豚とかSPFといった、高品質、高級、あるいは安全性といった特徴を持っている豚肉が中心である。

豚肉を中心に消費してきたのは、東日本で、地方によって違うが、東日本では、牛肉1に対して、豚肉が2とか3ぐらいの割合である。であるから、いい豚肉が売れると、売り上げと利益に大きく貢献する。関西では、豚肉の比率は少ないが、牛肉で舌が肥えているからか、最近いい豚肉が求められている。高品質豚肉を作っている群馬県の生産者グループが、昨年関西のスーパーへの納入に成功したと言っていた。関東の豚肉業者にとって、関西はこれから面白いマーケットになるかも知れない。

牛肉自由化以後、肉の消費は、特に東日本では、豚肉から低価格の牛肉にシフトしてきていたが、2〜3年ほど前から、輸入牛肉の価格競争を嫌ったのと、国産牛肉のニーズが出てきたために、多くの小売業が国産牛肉に力を入れだしてきた。これと同じ時期に、高品質、安全性志向に豚肉、鶏肉も対応して、ハイグレードなものを売るようになってきた。牛肉の低価格路線対応としての国産牛肉の販売に、豚肉も鶏肉も合わせてきたのである。

その結果、国産牛肉は、ディスカウントの輸入牛肉よりも高いが、安心感で売れてきて、豚肉、鶏肉も、同じように売れてきたのである。今では、高品質の豚肉、鶏肉を扱っていないところは少ない。また、扱っていないようなところでは、売り上げも利益もとれなくなっており、対応策は無くなっている。この流れに対応できない小売業は、消えていく運命だ。

このような、直接肉を消費する小売業の志向は、当然外食や惣菜にも影響している。今まで、小売業と外食のニーズは、外食企業が先にリードするタイプと、逆の場合とあった。ハンバーガーなどは完全に外食、ファーストフードからである。フライドチキンもそうだ、しかし、オーガニック(有機栽培)の野菜は、小売業や宅配業が昔から扱っていたものが、最近になって急速に外食業界に浸透してきている。

この豚肉の場合は、もともと小売業が高品質なものを扱っていて、それが最近になって外食企業に取り入れられてきたものになる。外食企業はここ数年の間に、バブル崩壊から、低価格路線を走ってきたために、消費者の安心や、高品質ニーズを考えている余裕はなかった。しかし、不景気が一段落したのを受けて、今度は急速に高品質路線が始まってきているのである。今では、オーガニック野菜を多くの外食企業が先を争って導入している。

以前は、「一部の野菜に、オーガニックを取り入れたら、それ以外の野菜や他の食材はどうだろう、と、顧客は不安がるのではないか?」という危惧から、導入がためらわれた。しかし、そんなことは無駄な心配で、顧客は、自然にオーガニックサラダをオーダーし、その他の食材への心配もしていないようだ。これがわかったので、競って安全食材の導入を始めたのである。景気回復も大きく影響しているが、それ以上に、最近の消費者の安全志向は強い、ということがいえる。

伸びている豚肉の代表は2つあり、黒豚と、SPFである。黒豚については、どの程度黒豚のバークシャーの血統が入っているかという問題がある。純粋の黒豚などというのは、本場の鹿児島を中心に、全国で数万頭程度しかいないといわれている。純粋種は非常に数が少ないのである。

先日、黒豚96%のサンプルがあるというので試食をしたが、たしかに味が良かった。それだけでなく、この肉を一旦冷凍し、再び解凍して食べたら、冷凍する前の品質、味と、ほとんど変わりがなかったのである。これには驚いた。しかし、価格を聞いてびっくりで、キロ4000円だった。和牛並みの価格である。

黒豚で純粋種に近いものは、価格の点でも、量の点からも、ほとんど買うことは出来ない。普通黒豚の血が入っている率が25%程度だったらまだいいほうで、それ以下のものが多いようである。しかし、名前の方は堂々と黒豚と言えるので、これでいいのだろうかと、心配になる。どこかで「純粋黒豚」などという名前を見たことがあるが、「純粋」というならば100%のことで、そんな黒豚が小売りするほど集まるわけはないし、低価格で売れるわけはない、あれはどうなっているのだろうか?

純粋に近い黒豚は、不安定という欠点もある。体重や、ロースの重量、ロース芯の大きさ、背脂肪の厚さなど、大きすぎたり、小さすぎるのが多く出て、規格が不ぞろいになるのである。そのために、規格を一定にして納入しなければならないので、卸業としては困り、規格に合格する黒豚の肉に、一般の豚肉を混ぜて納入する所もあるようである。しかし、そんなことをしても、使うユーザー側が見ればわかるので、卸としては、それがわからないところに、黒豚と普通の豚を混ぜていれるようになってしまう。そうなると、見る目が無いユーザーが損をすることになる。直接食べる消費者は、このようなことは知らなくても、何となくその店に行かなくなってしまうのである。

こういった歴史のある黒豚であるが、ごまかしをやる業者は自然につぶれたりして無くなってきている。同時に、黒豚のおいしさを保ち、規格もある程度安定し、価格もそんなに高くない黒豚系も一部で開発されている。先日、ある黒豚のサンプルを食べたところ、味はいいし、価格もそれほど高くないようだった。ただ、味の点では、単純に黒豚の味ではなく、何となく引っ掛かるものを感じた。悪い意味ではなく、肉がもう少し締まっているような感じを受けたのである。要するに、いい要素が何かほんの少し入っているようで、どこか違う、という感じなのである。そこで聞いたところ、「実は、猪の豚が少し入っている」ということで納得がいった。ある高級スーパーではこの肉の導入をすぐに決めた。

豚の大元はイノシシである。輸入肉の分類でも、イノシシの肉は豚肉の中に入っている。イノシシというのは、肩の方が大きくて、豚肉はそれを改良して出来るだけロースやモモの方が大きくなるようにしてある。肩の肉というのは、良く運動をするために、筋が多くなり、肉質も硬くなる。イノシシが走っている姿を思い浮かべたら、肩肉中心で肉が硬そうだと想像できるだろう。骨太にもなるので、歩留まりは悪い。一方豚肉は、後ろの方を大きくしてあるから、肉が柔らかく、歩留まりもがいい。しかし、イノシシの肉は、身が締まって、味がある、味が濃いのである。

今もあるかどうかわからないが、以前、伊豆で、イノシシの肉を食べさせてくれる料理屋があった。豚肉と比べて、歯ごたえがあり、じつに味がある。今の若い人には「硬い肉」となるかも知れない、地鶏の肉も「硬い肉」と評価する若い人も多い。しかし、あの味は忘れられないおいしさ、食感である。

神奈川のある豚肉生産者グループでは、なぜ黒豚がおいしいのかを研究した。「黒豚は血統である、しかし、その欠点は、規格が不揃いだ。ところで、おいしさの元が、血統以外に無いのか?あればそれを規格が安定している豚の品種に取り入れたら、おいしい豚肉ができるのではないか?」と研究したところ、餌のサツマ芋も要因なのではないか?となった。

そこで、今まで生産をしてきたナチュラルな豚に、サツマ芋を食べさせたらどうなるか、長年研究をしたところ、おいしい豚肉が出来た。この豚肉は、首都圏の生協や、一部スーパーで販売しているが、肉だけではなく、加工品も作って、味が良く、好評である。

特にソーセージは屠殺直後の肉で作る特殊な方法である。これは、「温屠体」と言って、屠殺後数時間以内の肉を使って作る。肉がこれだけ新しいと、肉自体に結着力があるので、リン酸塩や卵白などの結着材がいらない。そのために、全く無添加で、食感もあるソーセージが出来るのである。そしてこのソーセージは最近大問題になっているアトピー、アレルギーの患者にもかなり対応しており、アトピーの子供たちが食べられるソーセージとしても売れている。

日本全体が高品質豚肉を求めていることは、小売業の売れ行きを見ればよくわかる。この流れに乗って、外食業は、コストだけにとらわれず、いい豚肉を取り入れることを真剣に考える時期である。今は、オーガニック野菜の導入で大騒ぎになっているが、それと平行して、今度は肉の安心、高品質ニーズに対応し始めるべきだろう。

柴田書店「月刊食堂」96/7月号より

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